27/35
【サカイメの書架】2019年3月 お題「母」
「隊長は、私にとってお母さんのような人なのです」
奇妙な言葉だった。隊長は身長2メートルを超える大男で、戦場ではその大剣で敵を黙らせ、訓練場ではその鉄拳で部下の兵を黙らせてきた。
そんな慈悲の欠片も持ち合わせなかった男を、この副隊長は母親のようだと言う。
「ぐえっへっへ。部下思いの隊長様だな。あんたを人質にとったと嘘をついたら騙されて一人で来たぜ。意識戻らないらしいなあ?」
下卑た笑みを浮かべる男に彼女は怯まない。
「あの人は過保護なのです。いつまでも私を雛鳥扱いするのです」
すちゃ、と剣を構える。
「病院で寝ている隊長に送ろうと思います。今日は母の日なので」
副隊長は剣を構えた。
「真っ赤なカーネーションを」




