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エピローグ:今日の104号室は


 次の日の朝。明楽が自分で用意したコーンフレークを食べる中、玲一は慌てて支度をしていた。

 机の前に座って朝食を取る明楽の視界に入らないように、ベッドの上で着替える。時間に余裕があれば、彼女が歯を磨きに行った隙に着替えるのだが、今日はそうではなかった。


コーンフレーク(それ)、俺の分は!?」

「自分で用意してー」

「融通きかねぇえ!」


 玲一は冷蔵庫を開けて牛乳を取り出す。


「なあ、なんで起こしてくれなかった!?」

「気持ちよく寝てたのはそっちでしょー!? わたしは何度も起こしましたっ。揺らしたし、顔もツンツンしたでしょ。レイイチに払われたけど」

「うっ……。で、でも元はお前のせいみたいな? あの店行ってたから寝るの遅くなったわけだし?」


 昨日は、東のお勧めの料理店で明楽の復活祝いをした。麗美が、明楽を失って抜け殻状態だった時の玲一を茶化すなどして盛り上がった。


「わたし途中で寝ちゃったし」

「うぐっ……。でも俺、お前背負って帰ったし! 疲れが溜まってたわけだし!」

「解散したのは割と早い時間だったでしょ?」

「うぐぐ……」


 それ以上反論しなかった。

 玲一の半霊体の体は、元に戻そうとはしなかった。この状態で安定しているため、下手に返戻符を使って霊体側に転ぶことを考慮してのことだ。


「でさあ、コーンフレークおいしいんだけどさあ、一回おいしいって言っただけでこう毎日出るとさあ」

「おいしいならよし! 嫌なら食うな! 食わなくていいんだから!」


 玲一は、スーパーで安くなっていたものを大量購入していた。


「ごちそうさま」


 彼女は立ち上がり、とてとてと洗面台へと向かっていく。


「ごちそうさまァ!」

「早っ!?」


 数秒後に玲一も洗面台へと。

 鏡の前に前後に並んで歯を磨く二人。もう明楽の体は、あの時ほど透けていない。鏡越しに見る明楽の姿はいつもより可愛く見えた。その名の通り、明るく、楽しそうな良い表情。


「あ、そういえば、歯も磨く必要ないんじゃないか?」

「食後は歯磨き。これ常識!」

「それ、幽霊にも適応されるのか……?」


 口を濯いで、髪を整え、洗面台を出る。

 リュックを持ち、棚の上に置いてあったネックレスをかける。ネックレスの先にはあの指輪がついていた。


「そろそろ行くか」

「うん!」


 彼らの日常は始まったばかりである。

これにて完結です!

ありがとうございました!

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