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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ノーマルルート
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こ、このひとがジャムのお父さん!?

 お城の雰囲気は目に見えて明るくなっていた。前にここに来たときは、ジャムがいなくなった直後で、魔力も切れかけで、大臣さんたちが暗い顔で会議してたもんね。元に戻ってよかったよ。


 ジャムの待つ部屋のドアの前で深呼吸。

 そう、初めてお城に来たときも、この部屋に通されたんだ。


 ゆっくりドアが開かれていく。


「アスナ、待ちかねたぞ!」


 笑顔で出迎えてくれたのはジャムだった。その隣には、アイツの姿はない。

 ジャムの後方に、キャンディのパパとエクレア先生のお父さんの姿がある。それから……


「紹介しよう、俺の父上だ」

「はじめまして、だな。異世界の少女、アスナよ」


 わたしのほうに一歩進み出てきたのは、まさに王様の風格を持つ美形のオジサマだった……!


 赤錆色の髪の毛をオールバックに撫で付けていて、口許のひげは丁寧に整えられている。落ち着いていて自信に満ちた表情と、悪戯っぽく輝く水色の瞳がすごく、素敵。背が高くてがっしりとした体格、差し出された手も分厚くて、思わずため息が出ちゃう。ああ、まるで映画の世界から抜け出してきたみたい!


「おい」


 ちょうかっこいい……!


「おいい!? オレのときとは全然反応が違うぞ! どういうことだ、アスナ!」

「あの、はじめまして。わたし、アスナ クサカって言います。シャリアディースの結界を破るために尽力されていらっしゃったんですよね? 外の村にはわたしも行く予定だったのですが、伺えなくって残念です。わたしもご一緒したかった……」

「そうだったのか。こうして出会えて嬉しいよ」

「わたしもです……!」

「アスナぁ!」


 もう、うるさいなぁ!

 ジャムはちょっと引っ込んでてよ! わたしは王様とおしゃべりしてるんだから! ああ~~、一番最初に会ったのがジャムじゃなくてこのひとだったら、迷わずキスしてもらったのにぃ!


「ひどいぞ!?」


 聞こえないも~ん!


「ははは。ジェムが手を焼いているとはこういうことか。息子は私に似ているからな、二十年後にはこんな風に育っているかもしれないぞ、アスナ」

「申し訳ないですけど、そこまで育ちきるのを待てないんです」

「そうかそうか。まあ、後は親しい者同士でゆっくりしてくれ。我々はもう行くとしよう」


 え~~~~! もう行っちゃうの~~!?


「お会いできて光栄でした、陛下」

「こちらこそ。君には言葉もないほど感謝している、アスナ」


 と、王様はわたしの前で跪いた。えっ、えっ、そんな、どうして!?

 混乱するわたしの手を取って、王様は短く口づけした……!


「また、会おう」

「……はい」


 青い瞳に射すくめられて、わたしはそう返すのがやっとだった。

 どうしよう……あのひとに「私の伴侶としてここに残って欲しい」って言われたら……! もしかして、わたし、断れないかもしれない。ごめんね、お父さん、お母さん。わたし、この国で幸せになります!


「こら~~~~!」

「うるさっ。なによジャム」

「お前……おま、この、……オレはアスナを母親だなんて認めないからなっ!」

「え? その歳になって母親頼りじゃないでしょ? 大丈夫、結婚してもジャムの母親面はしないから!」

「うう~~~~!」


 あはははは! ジャムってばもう気が早いよ。プロポーズもまだなのに~。


「はいはい、お遊びもこの辺になさいませ。お茶にしましょう、お兄様、アスナ」

「は~~い、キャンディ!」

「…………」

「そんな顔しないの、ジャム。ほら、行こう?」


 爽やかな風の吹き込むバルコニーにティーセットが用意されている。わたしはスネたジャムの手を引いて、席まで連れて行った。今日も上品で素敵なティーセットと山盛りのお茶請けが用意されている。


 ドーナツさんだけは「仕事だから」って座ってくれなかったんだけど、キャンディが淹れてくれたお茶はちゃんと受け取ってくれた。良かった!


「やっぱりキャンディの淹れてくれるお茶が一番美味しいよ!」

「誉めても何も出ませんわよ」

「ホントのこと言っただけだよ〜」


 お茶会はゆったりと始まった。

 わたししか知らない話は、キャンディのパパみたいな、大臣しているひとに聞いてもらう必要があるかなって思ってんだけど、それは後から話すからいいって言われた。

 

 何でも、お城にだけ、声を録音できる魔工機械を置いてるんだとか。今からの会話も録音するから二度も三度も話さなくてもいいんだってさ。この前、キャンディのパパと話したときもそれを使って録音してたらしい。そういうのは教えておいてよ、恥ずかしいから!


 実際に見せてもらった録音機はというと、卓上に置いてあったカエルの置物だった。……カエル!


「なるほど、これが……」

「それじゃ、誰から話す?」


 ジャムの催促に最初に応えたのはドーナツさんだった。ドーナツさんは、ゼリーさんたちと村に向かっていったところから話し始めた。


 あの日、わたしはエクレア先生のお屋敷で作業を手伝ってたんだよね。カーリー先生と三人でおしゃべりして。その夜にまんまとアイスくんに拐われたわけなんだけど……。


 ドーナツさんとゼリーさんは朝から馬を走らせて、まだ日が高いうちには風の膜まで着いたんだって。それを聞いて「結構近いのかな」って思ったけど、エクレア先生とキャンディが微妙な顔して首を振っていた。


「あんな速度で走らせられるのは、ジェロニモたちくらいのものですよ」


 そうなんだ。じゃあ、ついていかなくて正解だったかもね。

 風の膜まで行くと、それを作った本人であるソーダさんが現れて、ふたりを中に入れてくれたそうだ。


「何に驚いたって、死んだとばかり思ってた親父が、ボートの側で漁をする網を繕ってるんだもんな。剣しか持たない親父がだぜ?」


 ジャムもエクレア先生もウンウンと頷いている。ドーナツさんのお父さん、いったいどんなひとなんだろうな。


「その日は城に伝書機を飛ばして、村で一泊して、次の日にアスナがいなくなったことを知ったんだ……」


 皆の空気がどよ〜んと落ち込んだ気がする。

 ううっ、なんか、罪悪感!

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