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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ノーマルルート
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暗雲は突然に?

「ゼリーさん?」

「………………」


 わたしが胸ぐらを掴み上げていたのは、ソーダさんじゃなくて、ゼリーさんだった。あわわ。


 だって、木の根元でギターを抱えてうつむきながら弾いてるから、同じ髪の色だしわかんなかったよ〜〜〜。


「ご、ごめんなさい! ソーダさんと間違えちゃった!」

「…………誰だ?」


 あっ、そうだよね、わかるわけないよね!


「えっとね、ジェロニモさんと同じ髪の毛の色をしたギター弾きの男のひとだよ!」

「そんな奴は見たことがない。この国に、俺と同じ髪の色をした人間は存在しないはずだ」


 おおっと〜?

 ジルヴェストって意外と小さい国だったよね、そういえば。島国なのは日本と変わらないけど、総人口は30万人に届かないって言ってた気がするもん。授業で。


 でも、それにしたってどうしてわかるんだろ。

 まぁ、確かにわたしもゼリーさん以外で緑の髪の毛をしたひとなんてソーダさん以外に見たことなかったけどさ。


 問題は、誤魔化すべきか、正直に言うべきか、だよね。

 わたしはひとまず、手を放してスカートを直した。


「えっとね、ソーダさんっていうのは、風の精霊なんだ〜」

「!」

「緑の髪をしてたから、間違えちゃったの。つい昨日、ここに連れてきちゃったの、わたしが」

「っ!?」


 ゼリーさんてば、無言なのにめっちゃびっくりした顔してる。

 目は真ん丸で、口も開いちゃってるし。そんな顔してると、まるで普通の男のひとみたいだね? 年を考えれば、大学生くらいなのか、そっか。


「……精霊を……連れて、来た?」

「あ、うん。じゃなかった。はい、そうなんです」

「……風の精霊様は、なんと?」

「えっ。あっ! ジェロニモさんのこと、元気にしてるかって心配してた」

「………………」


 ジェロニモさんは、ギュッと唇を引き締めて固まってしまった。その目許が今にも泣き出しそうに見えてドキッとする。


 ソーダさんと知り合いだったのかなぁ。結界の外にある村と関係があったりして?


 それにしても、内側と外側じゃ、会うこともできなかったんだろうなぁと思う。ソーダさんも、せっかく結界の内側に来られたんだから、直接会いに来ればいいのにね。


「あのひと……あの精霊? 風だから、どこかほっつき歩いてるのかもね。呼んでみようか」

「どうやって」

「名前を呼ぶんだよ。お〜い、ソーダさ〜ん!」


 両手をメガホンにして叫んでみたんだけど、ソーダさんは現れなかった。おっかし〜な〜?


「風さん! 風さん、来てよ! ジェロニモさんならここにいるよ〜?」

「アスナ、気になっていたんだが、風の精霊様の名はソダール様だぞ」

「あれっ、そうだっけ?」

「そのとおりだよ。やぁ、アスナ。また会ったね」

「ソーダさん!」


 じゃなかった、ソダールさんか。

 ああ、ジェロニモさんの呆れたような視線が痛いわ!


 ソーダさん、もとい風の精霊ソダールさんは、キザったらしく木の幹にもたれかかっていた。ギターをポロロン。やばい、このひと何も悪いことしてないのにハリセンで引っ叩きたくなる。


 ジェロニモさんはギターを置いて立ち上がった。それで、背もたれにしていた木の横に立っていたソーダさんに向き合った。


「…………」

「大きくなったね、ジェロニモ。人間の子どもって、ちょっと見ない間に大人になってしまうってこと、忘れていたよ」

「……ご無沙汰しております。あれから十二年、経ちました」


 えっ、十二年も!

 あ、いや、黙ってますハイ。


 ゼリーさんが風の精霊と会ってるってことは、十二年前に結界の外にいたってことなんだろうな。その後でエクレア先生やカーリーさんと会って、兄弟同然に育てられた……そういうこと、なんだよね?


「みんな元気だよ。お嫁に行ったりお婿に行ったりして減ったりもするけど、逆に新しく増えたりね。急にいなくなった君を、とても心配していた」

「…………そう、ですか」


 …………。えっ、それだけ?

 もっとこう、なんかないの、ゼリーさん?


「ね、ジェロニモさん! 家族に会いに行かない?」

「……何を、言っているんだ?」

「結界を越えていこう! 今なら、コンちゃんに頼んで結界の外に出られるかもしれない。それに、ソーダ……ソダールさんが協力してくれれば、村にも行けるよ。ね、ソダールさん?」

「そうだね」

「ほら!」


 わたしは、ゼリーさんの腕を引っ張った。

 呆気にとられた表情のゼリーさん。もしかして、家族には会いに行かないつもりだったの? こうしてソーダさんに再会できたんだから、家族にも会えるかもって思わないのかな? 方法があるなら、しがみついてでもそれに(すが)るべきなんじゃないの?


「コンちゃん、来て!」


 わたしが呼ぶと、コンちゃんはすぐに現れた。可愛いおリボン巻いて、花飾りつけて。……もう! どこかで女の子と遊んでたね〜?


「クォンペントゥス様……!」


 ゼリーさんはコンちゃんを見て驚いてる。でも、わたしが言ってないのに名前を知ってたってことは、コンちゃんが大地の精霊だっていうことも知ってるってこと。説明の手間がはぶけたね。


「会いに行こうよ、ジェロニモさん! どんな事情があるのか知らないけど、今なら行けるんだよ。わたしと一緒に行こう!」

「しかし……」

「コンちゃんが来てくれたってことは、協力してくれるってこと。ソーダさんもそれでいいって言ってるよ」

「ソダール様だ」


 細かいなぁ!


「私はソーダさんでもいいよ、べつに」

「ほら、本人もそう言ってる!」

「精霊様、申し訳ありません。……アスナ、お前まさか会う奴全員に変なあだ名をつけているんじゃないだろうな」

「そんなことないよ」


 実際はそのまさかですけどね。

 ゼリーさんは、深くため息をついた。


「俺もそのあだ名でいい」

「いいの? ジェロニモさんって舌噛みそうだからその方が楽だわ〜。よろしくね、ゼリーさん」

「…………はぁ」


 ため息がでかい!

 話もまとまって、結界の外へ出ようとしたその時、言葉にできない衝撃がわたしを襲った。急に風が吹いて空が曇っていく……結界が、今、割れちゃった!!


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