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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ノーマルルート
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精霊の巫女ってなんですか?

 ウサちゃん穴は、見た目と違って入ると水の中みたいだった。音と光が洪水みたいに下から上へと流れていく。わたしは思わずそれを目で追っていて、見上げたと思ったらどこかに足がついていた。


 すごい、一瞬で移動した!

 でも、そんな新鮮な驚きもすぐにイヤな気持ちで塗り替えられてしまう。


 空気が、汚い! 臭い!

 排気ガスがかたまってる感じ? ひどいこれ! 遠くがかすんで見えるよ。PM2.5の色が黒くなった感じ。


 わたしは取り出したハンカチを口に当てた。

 地面もひどい。乾ききってるし、なんだか、変な色。


「ここが、ギースレイヴンなの……?」

「ひどい土地だよね。でも、これでも、マシになったほうなんだ……じゃなかった、ですよ」


 振り向くと、アイスくんが立っていた。

 さっきよりもまっすぐ立ってるのは、キャンディから解放されたからかな?


「敬語使わなくていいよ〜。最初のしゃべりかたに戻っただけだしね」

「あ、ありがとうございます……」


 ありゃりゃ。真っ赤になって下を向いちゃった。緊張させちゃったかな?

 ゆっくり話を聞きたいとこだけど。キャンディも待たせてるし、どうしよう。


 ……聞くならまず、コンちゃんのことかな。

 せっかく出会えた精霊なんだもん。それに、もうひとつ気になることもある。コンちゃんにお願いを聞いてもらえるアイスくんは、精霊の巫女なんじゃないかってこと。……巫女って男でもなれるもんだっけ?


「ねぇ、アイスくん」

「は、はいっ」

「ちょっと歩きながら話さない? 聞きたいことも色々あるしさ。アイスくんだって、こんなとこに住んでるわけじゃないんでしょ?」

「あ、ああ、えっと、はい! あの、近くに村があるから、そこに行って話したい……デス」


 あはは、すぐには無理か。そうだよね。


「うん、じゃあ、連れてって!」


 わたしが肩を叩くと、アイスくんはまた赤くなっちゃった。

 スッとわたしの一歩前を行くアイスくん。華奢な首にはまった、ゴツい首輪が痛々しい。清潔な格好をしているし、服装もボロっちくないけど、でもこの首輪が“奴隷”っていう状況をハッと思い出させる。


 奴隷にされちゃったひとがどんな状況に置かれるのかなんて、想像もつかないや。でもきっと、アイスくんから言わないなら、聞かないほうがいいことなんだよね。


 わたしは口から出かかった言葉を飲み込んで、最初に決めたとおり精霊の話題を振った。


「ね、アイスくん。精霊って、みんなコンちゃんみたいな動物なのかな」

「え? ううん、むしろクォンペントゥスのほうが珍しいよ。僕が見てきた精霊はみんな、クォンペントゥス以外は人間みたいな姿をしてるから」

「へ~。そうなんだね。大きなウサちゃんがいっぱいいるのかと思ったのになぁ」


 ちょっと残念!

 そんなわたしの気持ちが伝わったのか、アイスくんがクスッと笑った。


 いいね! いい傾向!

 変な敬語も取れてきたし!


「精霊ならこれから会えるよ。むしろ、アスナさんに会ってもらいたくて呼んだんだ」

「そうなんだ。精霊って色んな種類の精霊がいるんでしょ? どんな精霊?」

「光の精霊と、闇の精霊だよ。風の精霊はいつもはここにいないし、火の精霊は忙しい。水の精霊にいたっては、一度も見かけたことがないんだ」

「えっ、水って、どこにでもありそうなものなのに?」

「うん」


 えっと、精霊は今のところ、火・水・土・風・光・闇の六種類ね。

 そのうち、水はいなくて、火は忙しい、風はどこかへ行っちゃったし、土はキャンディのそばにいる。


「じゃあ、会えるのは光と闇だけなんだね」

「うん。光の精霊はルキック・キーク、闇の精霊はグルニムエマ・カロン。ふたりとも三歳くらいの男の子みたいな姿をしてるんだ」


 えっ、精霊の名前が難しすぎてわかんない。クッキーとマカロンって言った?


「ふたりも精霊がいて、わたしに助けられるようなことなんてあるのかな? だって、精霊ってお願いを聞いてくれるんでしょ?」

「いや、精霊は本当に気まぐれで……それに人間の願いなんて叶えないよ」

「でも、アイスくんのお願いは聞いてくれるんだよね? だって、コンちゃんに連れてきてもらってたし。アイスくんって、精霊の巫女なんでしょ?」

「ええっ? ミコ? それって、なんのこと……?」

「えっ」


 アイスくんは立ち止まって、わたしの顔を不思議そうに見ている。そこに答えなんて書いてないのに。おかしいなぁ、てっきりアイスくんは教授の言う「精霊の巫女」だと思ったのに。


「えっと、わたしが聞いたところによると、精霊と会話をして特別にお願いを叶えてもらえる存在が巫女なんだって話だよ。そういう一族がいる、らしいって。アイスくんって、いつから精霊と一緒にいるの?」

「…………」

「アイスくん?」

「わからない……。気づいたらそばにいて……でも、僕の言うことを聞いてくれるようになったのは、つい最近のことなんだ。それまではずっと、ただそこにいるだけの存在だった。誰も、精霊に言うことを聞かせる方法なんて教えてくれなかったし……。親とか、いないから……一族なんて言われても、困る……」

「ご、ごめん……」

「いえ……」


 アイスくんの表情がどんどん曇って、苦しげになっていった。うつむいて、ギュッと握りしめた手が震えていた。わたしは、謝ることしかできなかった。他に何を言えばいいのかわからない。


 ふいっと逸らされた顔。アイスくんにとって、きっと言いたくないことだったのに、わたしが無理に言わせちゃったんだ。まだ中学生くらいの男の子なのに、身寄りもない上に捕まってるだなんて……。


 わたしには何もしてあげられないけど、せめて、ひとりじゃないって知ってほしくて、わたしはアイスくんの手を握った。


「あ、あああ、アスナさんっ!?」

「わたしにできることは何でも言ってね。わたしは、アイスくんの味方だから」

「なっ、なっ、何でも!?」


 何でもは言いすぎたかな?

 でも、それくらいの気持ちってことよ。


「できることは、ね。アイスく」

「あっ、おかえり、アイス〜!」

「ん?」


 村のある方向から、ぴょんぴょん飛び跳ねる小さな子が出てきた。金髪の、髪の毛を肩で切りそろえた、男の子か女の子かあんまり区別がつかない子だ。歳は三歳くらいかな?


 それじゃ、この子が精霊!?

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