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わたし、異世界でも女子高生やってます  作者: 小織 舞(こおり まい)
ノーマルルート
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お怒りのワケは?

 ジャムのヤツ、顔だけはいいし声もまぁまぁだし、わたしより背が高いし……何より男の子だもんね。怒ると迫力がある。怒鳴られたりはしないけど、こんな近くで上から覗き込まれたら、ちょびっと怖い。ハリセンを置いてきたのが悔やまれた。


 ジャムの手に、眉に、ぎゅっと力がこもる。


「オレは……、オレはずっと待ってたんだぞ。それなのにこの一週間、寂しがって帰ってくることもなく、オレに会いたいという手紙を送ってくることもなく! おまけに、オレに会いにくるときには手作りクッキーを手土産に持ってくるものと相場が決まっているっていうのに、まさかの手ぶらだと! 信じられん……!」

「いや、信じらんないのはアンタの脳みそでしょ!」


 誰だ、この馬鹿王をここまで甘やかしたのは!

 シャリか! 出てこいコノヤロー!!


「まったく、怖い顔して思い詰めてるからなにかと思えば……身構えて損しちゃった!」

「オレは本気で言ってるのに……」


 恨みがましそうな目で見てくるジャムは面白い。まったく、イケメンが台無しだ。本人にはこんなこと絶対に言わないけどね。わたしはジャムの胸を押しのけて距離を取ると、仕方がないのでちょっとだけフォローすることにした。


「そんな顔しないの。一週間に一度会いに来る約束は果たしてるでしょ。それもまだ一回目よ? 手土産がなかったのはごめんって。街に買い物にも出れてないし、今日は余裕がなかったの。次はきっと、なにか持ってくるから!」

「……仕方ないな。楽しみにしておこう」


 あらま。案外あっさり引き下がった。それにしても、そんなスルッと「楽しみにしておこう」なんて台詞が出てくるもんだよね。女の子をその気にさせる名人でも目指してるんだろうか、ジャムのヤツ。モテモテだっていうのもわかる気がする。


「学校生活はどうだ、不自由ないか」

「ありがとう。今は帰ってきたテストの復習で手一杯。来週から講義が始まるの。手始めに図書室でたくさん本を探すつもりよ」

「帰るためのヒントか」

「あったりまえ!」


 ニッ、と笑ってみせると、ジャムもニッと口の端を持ち上げて笑った。


「あの学校には最高の頭脳たちが揃っている、精々こき使ってやれ」

「反対しないんだね。そこは本当、ジャムっていいヤツって思うよ」


 シャリとは違ってね、な~んて、部屋の端っこにいるヤツへの嫌みだよ。そんな何気ない言葉だったっていうのに、ジャムときたら驚いたように目を見張った。


「それはつまり、オレに惚れたってことだな! ふっ、安心しろ、帰らないことに決めたなら妃の座はお前のものだ!」

「なんでそうなるの!」


 まったく、ちょっと誉めたらこれだわ……。ドーナツさんもニコニコしてないで止めてよ! シャリ、頷くな!


「ジャム、前にも言ったけど、わたしの好みはもっとこう……わかって?」

「わからんな!」

「自信満々に!? じゃなくて……ジャムにはキャンディっていう許嫁がいたでしょ? なんでわたしなのよ」


 気になってはいたのだ。キャンディがジャムの花嫁候補なんだと聞いたときから。だって、曲がりなりにも婚約者扱いなわけじゃない? そういうことって昨日今日決めるものじゃなくて、何年も前から準備するものだから。それを急に取り止めにするなんて、どんな神経してんのかなって。


 ジャムはキャンディの名前に首を傾げたけれど、すぐにそれが誰のことかわかったみたい。その上で、不本意そうな表情を作った。


「キャンディ、か。オレの意思とはよそに決められた縁談だが、あいつは親戚だし、なにより妹のようなものだ。妹に恋愛感情を持つなんて、少なくともオレには無理だな。

 それに……キャンディスはオレの何代か前のお祖母様にそっくりなんだ! 後で肖像画を見てみたらいい、ゾッとするくらい似てるぞ」

「そんなに?」

「ああ。だからオレはずっと断り続けてるんだ……向こうにもその気はないみたいだしな」

「あー……」


 そうだった、キャンディは女の子が好きなんだった! パッと見、派手なお嬢様って感じのキャンディは、実はとってもおしとやか。話せばすぐにいい子だとわかる。でも、時々妙ちきりんなことを叫んだり頬を染めて倒れそうになったり、わたしのことを変な目で見てくるんだよね。悪い子じゃないんだけど……たまにキャンディがエロ親父とダブって見える瞬間があるよ。


「なぁ、アスナ」

「なによ」

「オレはお前を気に入っている。ディースに言われたからだけじゃないぞ、今はちゃんとお前を見て、知って、その上で求婚している。それを忘れてくれるなよ」

「…………」

「お前を腕尽くで手に入れるのは容易い。権力に物を言わせて妃にするのもだ。それでもそうしないのは、そんなことをしてはお前の輝きが失われてしまうかもしれないと、そう思ってのことだ。側に置けばきっとお前はオレを好きにならざるを得まい。

 だがアスナ、オレはオレの愛する国をお前に見てほしいんだ。多くの物を見て、多くの者と出会い、その上でオレを選べ、アスナ。いや、選ばせてみせるとも……」


 ……なに言ってんだ、コイツ。


 えっ、キメ顔してるんだけど。まさかこれ、口説き? わたしを口説いてたの? ペラペラとよく回る舌だなぁと思って放置してたけどさ。ちょっと、勝手にひとの手にキスすんのやめてもらえるかな? 馬鹿なんじゃないの、コイツほんとに馬鹿なんじゃないの? うん、もうこれ、言うべきことはひとつだけだわ。


「チェンジで!」

「なぜだっ!?」


 なぜだもクソもあるか!

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