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アスタシア王国の男装令嬢         作者: 大鳥 俊
三章:男装令嬢と「熱風と臆病風の吹く秋」
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番外編6:貴方の為に

 





 婚約式を終えて三カ月。

 第二王子であるフィリップが公爵の地位につく事が決定した。

 婚姻による臣籍降下が理由で、元々彼が拝領していた地名から名前が決まる。


 メイブリック公爵。これが彼の新しい名前。ユリウスもユリウス=セクトからユリウス=メイブリックへと変わる。準備は日々行われていた。



◆◇◆◇



 長かった冬も過ぎ去り、心地よい春の日の事。

 ユリウスは手に持っていた物を放り投げて、机に突っ伏していた。



「ああああ~~もう無理~!!」

「無理じゃありませんユリウス様」



 情けない声を上げる主人を(たしな)めるのは侍女マリー。彼女は「もう」という表情のまま、ユリウスが放り投げたハンカチを手に取る。

 

 二人の周りにはきちんと折り畳まれた白いハンカチと、様々な色の刺繍糸。針山には長さの違う刺繍針がいくつか刺さっており、その全てに色鮮やかな糸が通っていた。



「やればやっただけ成果が上がるのです」

「うそ~! ちっとも上手くならないよ!!」



 子供のようにごねるユリウスに「嘘じゃありません」とマリーは言う。



「事実、剣の鍛練は上手くなるじゃないですか」

「剣術とコレ(・・)は別物だよ!!」

「一緒です」



 はい。と、投げ捨てたはずのハンカチを手渡され、ユリウスはげんなりする。

 無理。ホント無理。何で私が男装していたか知ってるよね、マリー?

 そんな思いで侍女を見つめるが、彼女はニコリと笑うだけで一切取り合ってはくれない。完全無視である。



「口を動かしてもいいですけど、手元はしっかり見て下さいね」

「見てるよ、見てるけど……っ!!」



 チクリとした痛みが走る。

 またの失態にユリウスが涙目で顔を上げると、マリーは素早くユリウスの手をとり、すぐさま治療を開始した。



 ――刺繍、とは。

 淑女の嗜み。手仕事。もしくは暇つぶし。

 大体がこんな認識ではあるが、今ユリウスが取り組んでいる刺繍は必須事項であった。


 フィリップと婚約したユリウスは未来の公爵家の妻。

 妻は夫の持ち物に自家の紋章を刺繍する。まずは手始めにハンカチから。


 そのハンカチですら綺麗に縫えないユリウスは自分の腕前に失望していた。

 紋章が複雑である事を理由にしても、あんまりの出来だった。



「かくなる上はマリーが……」

「ユリウス様」



 マリーが咎めるように、名を呼ぶ。

 彼女はそれ以上何も言わない。言わないけれど、ユリウスには彼女が何を言いたいのか分かっていた。


 根性はある方だと思う。

 望むものを得るための努力もしている方だと思う。


 だけど苦手なものに対しては逃げ腰である事をユリウスもよく分かっていた。


 マリーが表情を緩め、休憩を提案してくれた。

 ユリウスはそれに頷き、彼女が部屋から出るのを見送る。そうして扉の閉まる音を聞き、深く息をついた。


 ユリウスは刺繍もダンスも苦手。

 ダンスは一年前の任務もあり大分上手くなったが、刺繍はさっぱりのままで。

 今までのように逃げ回る事も出来なくはないけれど、やはりそれではいけないと彼女は思っていた。


 席を立ち、壁際へと向かう。

 目線より上には書籍がずらりと並び、ちょうど書き物が出来る高さからは引き出しになっている書棚。ユリウスは一番上の引き出しを開けた。

 

 中にはフィリップとおそろいのわんこクリップと、くたびれたハンカチが一枚。

 汚れる度に洗濯をしてようやく出来上がった一枚は、すでに使い古された感じがしていて、とても新品には見えない。



「渡す前からボロボロって、情けない」



 ハンカチを手に取り、開けた窓越しに光を透かす。

 生地はすでに薄くなっており、刺繍のごちゃごちゃした裏側もよく分かる。

 表も満足に出来ないユリウスに、裏側の後処理が上手くいくはずもなかった。


 唯一の完成品を眺めた後、ユリウスはコテンと窓枠に額を乗せる。


 フィリップに渡すのだから、綺麗なものがいい。当然裏側の糸もマリーみたいに整えておきたいし、本当はハンカチだけじゃなくて他の物にも刺繍してあげたいと思っている。


 自分にできる? 本当に?

 このままでは渡せない。出すのが恥ずかしくなるようなハンカチでは、使えないじゃないか。


 不意に部屋をノックする音が聞こえ、ユリウスの意識が逸れる。

 ……と、その瞬間。ビュッ、と風が吹いた。



「あっ……!!」



 気付いた時にはもう遅く、ハンカチが手から離れる。

 渡すつもりのない、でも、手放す気もなかったそれは、落ち込んでいたユリウスの気持ちとは反対に大空へと舞い上がる。


 幸い風は一吹きで、ハンカチは敷地内に落下を始めた。

 ユリウスはホッと胸を撫で下ろし、見失わないように視線で追い。その先にいた人物を認識する。


(うそ、でしょ……?)


 ヒラリと、ハンカチが降り立ったのは大きな手のひら。

 フィリップがこちらを見ていて、ニコリと微笑んでいた。



◇◆◇◆



「と、突然来るなんてビックリするじゃないか……」



 ユリウスは自分の格好も忘れ、男性のしゃべり方でフィリップを迎えていた。

 彼がお茶でもと言って、お菓子の入った箱を見せてくれている間も、注目するのは一点のみ。彼の手にある、新古品のハンカチであった。


 返して、可及的速やかに返して。それはフィーが見ていい物じゃない。

 じりじりと気持ち的には近づきつつ、ユリウスは「返して」を心の中で繰り返す。


 フィリップがお菓子の箱をマリーに預け、ハンカチを持つその腕を持ち上げる。


 返して。と、ユリウスは手を伸ばす。

 しかしフィリップはその手を避けて、両手でハンカチを広げた。


「っ!!」


 飛びついて取ろうとしたが、失敗。

 フィリップはユリウスの反応を見て、したり顔になり、長身を生かして頭上高くにハンカチをかざした。



「ちょ、ちょっと!! 返してよ、フィー!!」

「隠す事無いじゃないか、ユウリィ」

「やだ! 返して!」

「まあまあ。ちょこっとだけ、な?」



 宥める口調でありながらも、決定事項。

 フィリップがハンカチを見上げたので、ユリウスも内心溜息をつきながら仕方なく顔を上げた。


 刺繍……と言っても良いのか甚だ怪しいその模様は、茶色を基調とした謎の生き物が真ん中に鎮座しており、色のおかげで植物として認められるかもしれない物体がその周りを囲っている。


 答えは(たか)と、柊の仲間であるキュルルの葉っぱ。

 強者と癒しを象徴したメイブリック家の紋章であると言いたいところだが、正直、誰にも分からないと思われる。


 居た堪れない思いでフィリップへと視線を向けると、彼は刺繍を見て、こちらを見て。そうして何処を眺める訳でもなく明後日な方向を見て。一拍の後、ハッと手を打った。



「公爵家の紋章!」

「それ、現物見て気付いたわけじゃないよね!?」



 クイズを出した覚えはない。


 勘弁してよと、ユリウスはハンカチを取ろうとするが、フィリップがそれを良しとしない。

 ひょいと頭上高くに上げられてしまっては、もうどうする事も出来なかった。



「か え し て よ!!」

「どーしよーかなー?」

「『どうしようかな?』 じゃないよ!! フィー!!」

「なあ、ユウリィ。そろそろお茶にしよう? な? な?」



 嬉しそうな笑みを浮かべつつ、フィリップが背中を押し始めたので、仕方なしに歩みを進める。

 ハンカチが気になって仕方がないが、それは後で取り返そうと決めた。


 部屋に入ると、もうお茶の用意が出来ていた。

 「いつもので」と茶葉を指定するフィリップを横目に、不満を隠さないユリウス。

 むうと頬を膨らませたまま、テーブルへと視線を向けて。用意されたお菓子に目を奪われた。



「モモの新作!?」

「そ。ここの菓子、好きだろ?」



 一気にご機嫌になり、ほくほく顔でケーキを頬張る。

 おいしい。おいしいは正義。

 フィリップはマリー達の分も用意してくれているので、安心して食べられるのだ。


 幸せ一杯でケーキを頬張っていると、名を呼ばれた。



「ユウリィ」



 顔を上げると、フィリップの顔が傍にあった。

 「ん?」と、思ったのも束の間。唇のすぐ横に柔らかな感触が伝わる。



「っ!?」

「クリーム。ついてた」



 ペロリと、自分の唇を舐めてみせるフィリップを見て、ボンと顔が熱くなる。


 ちょっと待って! 今、何を!?


 言葉にならないユリウスを見て、フィリップは肘をついたまま、余裕の笑みを浮かべる。



「食べ物を前にすると、いつまで経っても子供だな」

「うっ!! そ、それより!! フィーはいつの間にこんな事覚えたの!?」

「覚えたっていうか、したかったからしただけ」

「へっ!?」

「これならいくらでも食えそうだ」



 ニヤニヤ笑うフィリップが、ちょんとユリウスの口元にクリームを付けた。そしてそのまま唇を寄せ、ペロリと舐める。ハッと、我に返った。



「フィー!!」

「いくらでも食えそうだろ? な?」

「な、なにが『な?』よ!!」

「もちろん口移しでもいいけどな」

「はぁ!?」



 だ、だめだ。

 今日のフィーはお調子に乗り過ぎている。


 何か良い事でもあったのだろうかと、考えを巡らせるが全く思い浮かばない。



「と、とにかく!! こーゆーのはダメ!!」

「キスは良いのに?」

「ヘリクツ捏ねない!!」



 きっと真っ赤になっているだろう顔を隠す事も出来ないユリウスは、ぱくっと目の前のケーキを頬張り、横を向く。せめて見られる箇所を減らそうとした悪あがきであった。


 結局その後も不意打ちのキスをされながら、お茶の時間を終えたユリウスはぐったりとしていた。

 心臓に悪すぎる。いや、もうキスされるのは分かっているんだから、そんなにドキドキしなくていいのに。

 回数から考えれば慣れているはずなのに、いつまで経ってもドキドキは止まらない。



「フィー……今日はもう帰る?」

「いや? 帰らないが?」

「私、疲れたんだけどな……」

「…………。休む、か?」



 片付け終えたテーブルに突っ伏していたユリウスは顔だけを上げる。

 「そうしよっかな」と、返事をするつもりだった。だけど。



「……フィー?」

「え、あ!! いや、その、休むなら……その」



 さっきの余裕は何処へやら。

 フィリップは顔を赤く染めたまま、気まずそうに視線を逸らした。



 ……最近分かった事が一つ。

 フィリップは余裕がある時と、照れ屋な時がある。


 以前、ミラーに内緒で出かけた時、照れていた事があって。多分、予想できる範囲外に出ると、初心な彼が顔を出しているのかなって想像する。


 ユリウスはニヤリと笑った。

 自分だけからかわれるなんて、納得できないって思っていたんだ。



「フィー……」

「な、なんだ?」



 まだ少し照れているフィリップに、ニコリと笑いかける。



「一緒に休もう? あっちのソファーで」

「なっ!!」



 フィリップの顔が一気に染め上がる。

 絶対照れていると分かるゆでダコのような彼が可愛くて、嬉しくて。

 ドキドキしているのは自分だけじゃないんだと、ユリウスはもっともっと迫った。



「フィーも疲れてるでしょ?」

「つ、疲れてない!!」

「嘘ばっかり」



 ぎゅっとフィリップの両手を握って、顔を近づける。

 近い。もう少しでキスが出来る距離。

 いつもなら自分からこんなに近づいたりはしない。だけど今日は。


 ユリウスはその距離を維持したまま、再び笑って見せて。ゴクリとフィリップの喉が鳴るのを見て、己の溜飲を下げた。



「……なーんてね!」

「っ!! ユウリィ!!」

「フィーばっかりずるいんだもん!!」

「ずるいって、お前……」



 フィリップがちょっと怒った顔をして。

 あ、やり過ぎたかなって、思った瞬間。ふわり、と身体が浮いた。



「わっ!?」

「俺をからかうなんていい度胸だ」



 フィリップがユリウスを抱きかかえたまま歩き出す。

 行き先は――……ソファーだ。



「え!? え!?」

「お望み通りにしてやろう」

「わーっ!! 待って、待って!!」



 ポスンと、ソファーに降ろされる。

 そのまま起き上がる前に、フィリップが囲うように手をついて来て――……



「……誘ったのは、ユウリィだろ?」



 息を呑む。

 だって、だって、そういうつもりじゃ――!!


 フィリップの顔が近づいてくる。

 まだお昼。いや、それ以前の問題。


 混乱の末、思わずユリウスが目を閉じた瞬間――。

 ふにゃり、と唇に何かが当たる。



「…………?」



 恐る恐る目を開けたユリウスの唇に、フィリップが人差し指を当てている。


 静かに。と言われているのは明白で。そっとソファーから動いた彼の後をついて行く。

 向かったのは入り口。フィリップは「しー」というポーズのまま、空いている片手で勢い良く扉を開けた。



「きゃっ!!」



 短い悲鳴?


 ユリウスは固まる。

 転がり入ってきたデバガメは当然見慣れている人物で。

 しまった、ばれたか。と、そんな表情を一瞬だけ見せた彼女は、何事もなかったように微笑んだ。



「殿下、ユリウス様。お茶のおかわりはいかがですか?」

「平常心!?」



 ある意味、侍女の鏡である。



「盗み聞きは良くないな」

「あら、何の事でしょう?」



 こてん、と首を傾げ、不思議そうな顔をするマリー。

 そんな彼女を見てフィリップが苦笑する。



「まあ、突入してくるよりはマシか」

「御用とあればいつでも参上いたしますわ」

「じゃあ早速、紅茶のおかわりを頂こうか」

「はい。かしこまりました」



 てきぱきと、本当に何事もなかった様にお茶の準備を始めるマリーに、ユリウスとフィリップは顔を見合わせる。

 そうしてから、二人合わせてぱちくりと瞬きをした後、どちらともなく笑い始めたのだった。



◆◇◆◇



 夕暮れが近づいてきた。

 再びのお茶を終え、フィリップが帰ろうと席を立った。



「また来るな」

「うん」



 楽しかったとか、そういう言葉は敢えて口にしない。

 元々幼馴染みの親友同士だったのだ。楽しいのはお互いの顔を見ていれば分かる。



「ユウリィ」



 少し熱っぽい声で名前を呼ばれ。フィリップが何を求めているか理解する。

 以前よりも少し察しの良くなったユリウスはキョロキョロと辺りを確認して、彼を見上げた。



「……確認しなくても、大丈夫だ」

「うん……分かってるんだけど、でも」



 恥ずかしいよと、いう言葉はフィリップに奪われた。

 手を引かれて、唇が重なって。離したくないと言葉を重ねられているように、強く、強く抱きしめられる。



「フィー……」

「もう、少し」



 もう一度、重なる。

 全く緩まる事のない抱擁でお互いの体温が同じになってゆく。


 目に見えなくても、言葉にしなくても。


 ユリウスは今、幸せを感じていた。

 自分の存在理由が揺らいだあの時と変わらず、フィリップが自分を求めてくれていると実感しているから。


 そうして長い別れの挨拶の後、二人はお互いの顔を見て笑う。

 最後にもう一度と、フィリップが名残惜しそうにぎゅっと抱きしめるのはいつもの事で。

 ユリウスはそれも嬉しく思っていた。



◇◆◇◆



 見送りを済ませ、部屋へと戻る。

 さっきまでフィリップのいた部屋に、今は一人きり。この瞬間を寂しいと思うのも、毎回の事だった。



「さてと」



 寂しさを振り払い、ユリウスは片づけていた裁縫箱に手を伸ばす。

 続きをと思い、蓋を開け。縫いかけの白いハンカチを見て、唐突に思い出す。



「あーーっ!!」

「ど、どうしましたか!? ユリウス様!?」



 悲鳴に反応して飛び込んで来たマリーに掴み寄り、ユリウスは叫ぶ。



「ハンカチ!! ハンカチ返してもらってない!!」

「え??」

「風で、飛ばされたの!! 完成一号!!」



 目をぱちぱちさせているマリーが、あっと気が付いたように「紋章入りのですか??」と問うてくる。



「そうっ!! ……って、言って良いか謎だけど、それ!!」



 あああ……なんてことだと、頭を抱えるユリウスの横で、マリーが「なるほど……」と呟く。

 呟きの意味が分からず顔を上げると、彼女は謎の笑みを浮かべた。



「いいじゃないですか」

「え!? だ、だめだよ、だめ!! フィーにあげるのはもっと綺麗なやつを……」

「ユリウス様はそう思われるかもしれませんが、きっと殿下はすごく嬉しかったと思いますよ?」

「ええっ!? あ、あんなボロボロなのに……」



 泣きそうになりながらマリーを見つめれば、彼女はニコリと幸せそうな笑顔を見せてくれる。



「――自分の為に。殿下はそれが分かっているから、今日は特にご機嫌だったじゃないですか」

「で、でも……」

「苦手を押しての事だと、殿下はよくご存じです。見目など、気になさらないでしょう」



 そう、かな。と、自信なさげに言うと、マリーが「ええ」と力強く頷く。

 不安など微塵にも感じさせないその肯定は、ユリウスの心を優しく包んだ。沈みそうになる心を守ってくれていた。


 そうだと、いいな。

 

 一生懸命縫った。一針、一針、慎重に。フィーの喜ぶ顔を想像しながら。

 全く技術の伴わないそれは、見目も悪く、汚れる度に洗ったから、もうよれよれだけど。それでも、フィーが喜んでくれるなら。それは本当に嬉しくて、幸せで。また、作りたいと思う。



「……縫ったら、使ってくれるかな?」

「もちろん」

「下手でも?」

「丁寧に縫おうとしている気持ちは伝わります」



 そっか。と、ユリウスは笑う。

 もっと、もっと練習しよう。

 下手でも、ちゃんと自分で縫いあげて。フィーに渡そうと決める。



「慣れてきたら、サイズも変えていきましょう」

「他の物にも縫えるようになる?」

「そうですね。もちろん、応用もできますよ」



 マリーがニッコリ笑い、ユリウスも笑う。

 主の笑顔が嬉しい侍女と、近い未来に得られる大好きな人の笑顔を想像する彼女。


 穏やかに過ぎる春の一日。

 幸せはこれからも続いてゆく――






番外編6 貴方の為に おしまい



おまけ。


――ちなみに、思いがけず渡ってしまった完成品一号はその後、ずっと大切に使われた。

恥ずかしがるユリウスを他所に、フィリップはいつもご機嫌。

彼はそのハンカチをとてもとても大切に扱い、最終的には自分の宝箱にて保管する。


「ま、まだ持ってたの!?」

「っ!! み、見た事は忘れろ!!」

「無理!!」


他にも色々入っているのだけど、それは内緒。


おしまい。


お読みいただきましてありがとうございました!!



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