~第12幕~
陽が沈んで辺りが暗くなったその時、明神翔と野神修也は握手と新たな協定を交わした。修也の決死の覚悟、それはこれからのゲームをより動かしていくものとなっていく――
夜も沈んだ。翔と修也は木々を集めて焚火を始めていた。
翔は小さく古黄ばんだ紙を眺めながら「死神ゲーム3のルール採用」を話す。しかしそれは修也も知っているとせせら笑ってみせた。
「相手は自分が殺した敵だよ? 言うこと聞くかよ?」
「しかしあの決闘の中で死んでいた筈の死神がいたぞ」
「へぇ~それは誰?」
「黒崎零、それから黒崎エレナと共に動いていた女がいた。男ではない。女だ」
「女の死神なんてたくさんいるじゃない?」
「馬鹿、そういうことじゃあない。奴らが証人で雇った鬼道院とは別に拳銃を持った女だ。ちょっとまえに拳銃自殺した少年のニュースを知っているか?」
「ボク、ニュースは見ないからね」
「ふん、信じないなら信じないでいい。俺がやるのは勝算ある交渉だ。よく見ておけ」
「はいはい、仰せのままに」
翔は契約書にとある死神の名前を書きながら話を続けた。
「俺は今、ルール3を知っているか? と聞いた。この召喚術はルール2では死神と雇用主が揃ってでないと行えないものだった。しかしルール3では死神単身で召喚術を行えるようになる。そしてルール2からより進化を果たした術にもなる。お前ほどの者が知らなかったとは滑稽なものだな」
修也が「術なんかに頼らなくてもボクは戦えるからねぇ~」と返事した時にその物体は出現した。
「ん……」
光る光体はそのまま人となって側臥位の状態から起きあがった。
「アレ? ここは?」
目を覚まして周囲をキョロキョロ見渡すのは召喚された九龍奈美だった。
「お目覚めか、お嬢さん。君とやり合った明神翔だ」
「アンタ……!」
奈美は戦闘の構えに入ろうとしたが力が入らなかった。その瞬間に理解した。彼女は死神として召喚されているのだという事に――
「殺されちゃった挙句、今度は奴隷になるの? そんな話は聞いてないよ?」
奈美は困った顔で翔を見つめる。そして――
「アレ? そこの蟲男も召喚されたの? 様になるモンね」
修也はそれに苦笑いで答えてみせるだけだった。
「さっそくだけど、君の力を我々に貸して欲しい。生き死を懸けて戦った仲だ。俺がこのゲームを制したら、君の願いも完全でなくとも叶えるようにしよう。ゆっくりと君たち姉妹の話を聞かせて欲しい」
「アンタ、正気なの?」
「正気さ、正気じゃなきゃあ君を召喚したりしないよ」
「そう」
奈美はゆっくりと翔たちの元へ歩み寄る。そして手を差しだした。それから握手を交わそうとした瞬間、翔の顔にベッと唾を吐いてみせた。
「がっ!? 何をする!?」
「私が叶えたい願いなんてないの! 叶えると約束するなら、美奈を呼ぶべきだったね! 白髪のおっさん!」
「キサマァッ!!」
翔が契約書を破ろうとした時に光体だった奈美は粉々に弾けて消えた。その一部始終を見終えた修也は腹を抱えて爆笑するばかりだ。
「笑うな! 小僧!」
「アッヒャヒャ!! だって勝算があったのだろ? 思いっきり失敗しているじゃねぇのよ! おっさんさ!」
翔は舌打ちをして修也の笑いが収まるのを待った。そして――
「お前の無知の方こそこちらが笑いたくなる」
「え?」
翔は全身に力を込めた。すると少しずつ彼の背後に蒼い狐火が灯りだした。そして彼は満面の笑みをみせる。
「これがルール3の適用だ。今まで倒した敵の能力を1つだけ自分の武器にできる」
修也は息を呑んだ。
「どうした野神よ? おっと、お前が活用する前にお願いしなきゃあな」
「え? あ……いや……」
翔はジリッと修也に近寄って彼の肩を掴んだ。
「ひとまず、お前の力をコピーさせて貰うぞ? 野神修也」
翔は静かに修也の耳元で囁いてみせた――
∀・)奈美ちゃん久々の登場!翔に穢土転生されるの巻でした(笑)しかし失敗(笑)ここで語られた「ルール3」の適用ですが、召喚&交渉で失敗しても自分の力に変えることができるし、無論召喚&交渉しなくても自分のサブウェポンにできるという便利なルール追加になります。そしてそして山Pの肩に掴みかかって小声で囁く吾郎さん(笑)ファンは喜ぶんじゃないでしょうか(笑)次号!!




