~第17幕~
突然のことであった。
もう少しで、あともう少しで命を落とすところであった。
拓海の母、晴海の脳味噌が突然破裂したのだ。
彼女はそのまま横たわった。死神であるからなのか、すぐに息絶えるワケでないようだ。真人がそうであったように、彼女の体から綿のような粒子が浮き、宙へ舞って消えてゆく。
「どうして……拓海……拓海……」
彼女は涙を流して息子の名前を呼び続けた……そして消えた。
暫くしゃがみ込んだまま、零は動くことができなかった。
「おい、大丈夫か?」
水道関係の職員だろうか? あるいは近所の者だろうか? 腰を酷く曲げた老人が手を差しのばしてきた。
手を借りた零だったが、立ち上がってからは「もう、いいです。大丈夫です」と自分で歩いていった。
零が梯子をのぼっていくのを老人はただ見つめていた。
「ほほう、儂が見えるのか。いま“触れた”ことだし、いい獲物が獲れたのう……」
老人は卑しく微笑んでみせた。
零はまだ地獄から抜け出したワケでなかった……。
零がマンホールから抜け出すと、そこにエレナが立って待っていた。
「オ疲レサマ。満身創痍ジャナイカ」
「お前がやったのか?」
「ン?」
「お前が拓海を殺したのか?」
「イイヤ、彼ガ彼デ自殺ヲシテクレタヨ」
「そうか。そうだったのか……」
「疑ワナイノカ?」
「何だろうな。お前が嘘を言っているように聞こえない。それに……」
「それに?」
「アイツの気持ちがいま、すごくわかる気がして仕方ない」
「彼ノキモチ?」
零はエレナに向けていた背を反転させて、彼女と向き合った。
「俺とはもう金輪際関わるな! 二度とでてくるな!」
きつく言い残した零はそのまま青風園を目指した。
エレナは夜空に浮かぶ星空を見上げた。
「死ヌノガ怖クナイカカ……」
林原拓海の死は零にもエレナにも重たい影を残していった――
∀・)第2章・完です。読んでくださる皆様に感謝!すぐに第3章の執筆に入ってゆきますが「SHINIGAMI GAME」も更新していますので、そちらもチェックしてね。感想も気軽に残してください。また来週お会いしましょう。イデッチでした。




