~第15幕~
零は深夜遅くになって食堂に降りて頼んでおいたものを召し上がった。
もう夜中の23時になる。白飯も味噌汁もすっかり冷めていた。
拓海はまだ部屋に閉じこもっているのだろうか? いや、そんなワケないか。
零が夕飯を召し終えて階段をあがろうとしたところ、玄関で掃除をしている婦人がいた。いつもなら放っておくのだが、彼の靴を弄ったりまでしている。思わず声をかけてみた。
「あの~、こんな時間に何しているのですか?それ、俺の靴ですよ?」
「う~ん、ちょっと迷惑かけてやろうと思って」
「迷惑?」
「息子が私を部屋に入れてくれないのよね。実の母親だっていうのに」
「実の母親? はっ……!?」
零はハッとした。そして悟った。こんな時間に家事を行う職員なんかいる筈がない。こんな玄関付近で迷惑行動をするものなら、従業員が気づく筈なのだ。
「息子とは仲良くしてくれているみたいで。礼は言うわよ? でも私が見えるなんて残念ね。息子のいないここで始末するしかない。御愁傷様♡」
彼女はそう言うと拳銃をとりだしてニヤついた。
自分の不運を憎むしかないのか。そう思った刹那、拓海が横から現れた。
「糞ババァ。やってみろ。本気で撃ち殺すぞ」
拓海も拳銃を握っていた。そして銃口を婦人に向けていた。
婦人は動揺していた。その時になってわかった。彼女が死神で彼女の雇用主が拓海である事を。しかし自分1人ではどうにもならないようだ。その時だった。
「黒崎君、林原君、こんな遅い時間に何しているの? 早く部屋に帰りなさい」
従業員が玄関にでてきた。間一髪で九死に一生を得た。そう思った矢先。
「え?」
従業員である男は晴海に脳を射抜かれた。瞬殺だった。
「クソババアァ!!」
拓海は発砲した。銃弾は晴海の肩を直撃した。
「かはっ!! 拓海!?」
実の息子による攻撃、心身ともにこれは堪えたはずだ。そう瞬時に判断した零は従業員のポケットから鍵をとりだして、玄関から脱出した。
「ぐっ……待ちなさい!」
すぐに晴海は零を追跡した。それを追おうとした拓海だったが、突然何者かが彼の背後から彼の首に縄をかけて絞殺を謀ろうとした。
「林原拓海、ヤハリ、オ前ガ、アノ女ノ雇用主ダッタカ」
拓海の背後に現れたのは零の死神であるエレナだった。苦しむ拓海だったが、渾身の肘撃ちを彼女の顔面に見舞った。拓海の肘撃ちをくらったエレナはそのままふらっと倒れた。
拓海はすぐに青風園を飛び出した。エレナもまた彼を追った。
零は咄嗟に路地裏に入り、蓋が開いていたマンホールの下へと降りた。汚い下水道を通り、物陰に隠れた。相手は肩を負傷している。しかも重傷だ。ここに来たとしても対等以上に渡り合えるがどうだろうか。
不運にも足音が聴こえた。そして地下に響き渡る死神の声も聴こえた。
「いるのでしょ~? 隠れても無駄よ~?」
死神であるがゆえに常人ならぬ身体能力でもあるのか? ゆっくりとだが、しっかりとした足音が聴こえてくる。やるしかない。
死神晴海が近くに来たその瞬間、零は彼女へ飛びかかった。
「ぐっ!?」
晴海と零は揉み合った。しかし、身体というより精神に異常をきたしている晴海の腕力は負傷しているとはいえ、強力だった。
「がっ!!」
零は口腔内に銃口を入れられた。
トリガーを引く彼女の手と腕を零は必死で押さえた。
「観念しなさ~い! あは! あはははははははは!」
凶器と狂喜にまみれた悪魔の手によって零は葬り去ろうとされていた――
∀・)恐ろしき晴海ママの進撃!この決戦のゆくえは!?次週です!!
∀・)林原親子、配役はどうでしょうね??晴海ママは松嶋菜々子さんかなと思ったり。いい案あれば是非とも教えてください☆




