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SHINKIROU THE SHINIGAMI  作者: いでっち51号
第2巻~SURVIVE THE WORLD~
17/163

~第7幕~



「近所迷惑ね。やめてくれないかしら?」



 琢磨の背後に女が現れた。見えるだと?



 この瞬間に相手が死神か雇用主であることは覚知できた。すぐに振り返る、そこに立っていたのは小太りの特徴的な顔をした女性だった。いかにもバラエティ番組でお笑いを担当していそうな人間の顔つきだが、彼女の表情はダークそのものだった。鬱病あるいは何らかの精神病を抱えた人間の顔つきでもある。



「ねぇ、ちょっと聞いてもいいかしら?」

「なんだ?」



 琢磨は構えた。死神を一斉に始末する計画を変更せざるえない状況となった。この女がこちらに攻撃を仕掛けてくるのは時間の問題だ。



 琢磨は背後にある海水を浮上させて水龍を創った。その大きさは人間3倍分の大きさに相当する。



 しかし女は動じてない。ずっと冷ややかな面持ちで琢磨を睨んでいるままだ。やがて溜息をつき、その口を開いた。



「苦しむことなくアッサリ死にたい? それとも戦って勇敢に死にたい? 私としてはその力、もっと見てみたいところだけ――」



 彼女が何かを言いきる刹那、琢磨は水龍による攻撃を放った。



 滝よりも激しくその身を打ちつけ、やがては水塊のなかに閉じ込めて窒息をさせる。タイマンで戦闘しても圧倒的に勝てる力だと琢磨は自信を持っていた。




 しかしその自信は微塵にもなく凍てつかされた――




 一瞬だった。一瞬にして琢磨は放った水龍ものとも氷結させられた。女の体には異常な冷気が纏われていたのだ。



「あっけないわね。こんなにも簡単に殺せちゃうなんて……」



 女はそっと凍りついた琢磨に近寄った。



「まずは私の復讐、果たさせて貰うわよ……!」



 女の握りしめた拳が凍った死神を粉々に破壊した。




 氷山由紀、彼女は琢磨と同じ工事現場の落下事故で命を落とした人間だった。尾崎琢磨が同じ落下事故で死した理由、それは由紀と並んで歩いていた通行人の背中を押して替わりに犠牲となったからであった。その通行人は何の偶然か、女性で美人な人間ときていた。



 そう、由紀にとって容姿の醜悪さのコンプレックスこそが彼女の深刻な悩みであったのだ。



 遡ること10年前の話になる――



「離して! 私は死ぬのよ! こんな人生を生きるぐらいなら死んでやる!」

「やめろ! 簡単に決めつけるな! 俺だって幸せになれた!! お前だって頑張れば幸せになれる!」

「なれっこなんかない! いいから離してちょうだいよ!!」



 断崖絶壁の崖の上で由紀は兄より強いビンタをくらった。そこで自殺しようという想いは切れた。彼女はその容姿が理由で学校にて冷やかしの対象となり、間もなく高校を中退したのだった。顔のよく似る兄は結婚した。これまでどの兄妹よりも仲良くしていたと自覚して、何より励みの存在であった兄がどこか遠くにいってしまうのではないか。漠然とした不安はやがて自殺願望となった。



 しかし自分を愛してくれている兄、その存在を改めて知ることとなったのだ。彼女は立ち上がった。地道にコツコツとお金を溜めて、自分の美容に費やそうと決意を固めた。そう思っていた矢先の落下事故死だった。



 彼女の能力は≪アイス・バーン≫。全てを凍てつかせる能力だ。そんな彼女の雇用主は他でもない兄だったが、死神となって彼とは1度も顔を会わせてない。それは彼女にとっての矜持であった。




 ただ事故死の真相、そして尾崎琢磨の情報を提供してくれた存在が彼女にはあった。1匹の大きなハエが彼女から少し離れた位置の壁にとまって、喋った。



『はっはっは~! お見事だね! 由紀ちゃん! 惚れ惚れしたよ!』

「情報提供に感謝するわ。早速だけど、他の死神の情報もくれない?」

『そうだね~もうちょっとしたら“死神が集まるイベント”が開催されるよ!』

「死神が集まるイベント?」

『そうそう、その頃にはさっき殺した奴の能力も使えるようになるだろうね!』

「ふうん、じゃあそのイベントが始まりそうになったら教えてくれるかしら?」

『らじゃ♪』

「それではまた今度」



 挨拶を交わした由紀は冷気を送って大きなハエを凍てつかせた。そして海芝浦駅をあとにした――




「つめたっ!?」



 金髪の男は手を強く振って異常な冷めたさに対応した。ここはとある豪邸の一室。ソファーに腰掛けて寛いでいたところだった。



「まったく! なんだよ! あのオバチャン! いつも凍らしてくるんだぜ?」

「警戒してるんじゃねぇの~? いずれは命を奪い合うモン同士なんだしさ~」

「それ言っちゃおしまいだけどなぁ(笑)でも大体は死神の目ぼしがついてきたみたいだね。“あのイベント”でだいぶ上手く亡くなりそうじゃない?」

「うん、まぁ、冷静にやろうかね~。ひっく」

「姉ちゃん、呑み過ぎだし浮かれすぎだよ?」



 野神晶子の気楽な様子に、金髪の男は顎に手を当てて「やれやれ」といった顔をしてみせた。彼らの計画はまだ始まったばかりであった――

∀・)さらに新たな死神が登場しました(笑)ヒエヒエの実の使いです(笑)久しぶりのバトルシーンでしたが、バトルってなかなか難しいものですね~。言葉のセンスが試されるというか何というか。えっと、氷山由紀役って誰がいいんでしょうか?ボクにはちょっと難しいです。宜しければ感想で教えてください。彼女のお兄ちゃんはカンニング竹山さんで良いと思う☆

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