~第4幕~
零が帰宅して暫くすると施設の夕食の時間となった。今日は施設に入居している全員が集まっているようだ――
小さな子供から高校生まで20人ぐらいの児童達がうどんやカレーを食べていた。自分のような境遇の人間が意外と多い。零はそんな所感を隣の席に座る拓海へ話していた。
「こんなのほんの一部さ。ここみたいなお家が横浜には何件もあるぜ? な?」
拓海は真向かいに座る2人の少年たちに問いかけた。
「さぁ……そうなのかな?」
「俺に聞くなよ?」
「いや、兄ちゃんが俺達のなかでは年長だからさ」
1人は小学生で1人は中学生ぐらいだろうか。零達の真向かいに座る少年2人組は兄弟らしい。詳しく話を聞くと、実はさらに小さい妹もいるとのことだ。その妹は離れた席で女子高生2人組と歓談しながらご飯を召し上がっている。
「父さん一人だったけど、その父さんが工事現場で下敷きになっちゃって……」
小学生の少年のほうが話をしてくれた。
「3人兄弟の俺達はこの人数だし、誰も引き受けてくれなくてね……」
「酷い話だよな。まったくだよ。同情するぜ」
「拓海くんのほうが俺達より辛い感じだよね」
「そんなこと競う事でもねぇよ。それよりどうしたよ? 進士くんよ。こんな事を海斗のやつに話させるなんて兄貴の面目丸つぶれだぞ?」
「拓海君、それ以上何も言わないで。兄ちゃん、今日は調子悪くてさ」
「わるい……さきに部屋に帰っていいか……?」
「え? 大丈夫? 全然食べてないよ?」
「一昨日もそんな感じだったな」
拓海はカレーを食べ終えると、溜息を吐いてこう続けた。
「いいよ。進士くん、しんどいなら休めよ。でも一人で抱えこむな。海斗も恵美ちゃんもアンタを頼りにしているのだから、今晩俺の部屋にきてもいいぞ? 話なら何でも聞いてやるから」
「ありがとう。気が向いたら」
「兄ちゃん……」
進士という男子はトボトボと部屋に帰っていった。この施設では1人1部屋授けられるが、部屋はとても狭い。便所や風呂は勿論共用であって、従業員の許可を受けて使うこととなっている。余程の事態であればここの職員が対応してくれるだろうが……
「アイツさ、風呂には入っているのだろうな?」
拓海の吐いた皮肉に零も海斗も笑うことができなかった――
∀・;)拓海の酷すぎる呟き(笑)次回につづきます!!




