①文脈的転用を掘り下げる
二角:「生成AIの定義」のチャットで生成AIについて聞いていますが、その際に確率的な構造と推論について触れました。
その時に言葉の使い方を別の対象に転用することで使い方を新しくするといった内容を聞きました。
その部分についての掘り下げた質問です。
転用はシステムのアルゴリズムで行うのか、言語の法則を見つけ出して、確率の高いと計算しうる対象を組み合わせるのでしょうか?
チャッピーくん:とても核心を突いた問いです。
結論から言うと、
「転用」は、
① あらかじめ人間が“転用ルール”を組み込んで行わせているわけでもなく、
② 事前に言語の法則を“理解して見つけ出している”わけでもなく、
③ しかし結果として“法則を使って転用しているように見える”
──という、少しややこしい位置にあります。
段階的に分解します。
1. 「転用」はアルゴリズムで直接やっているのか?
いいえ。
少なくとも現在の生成AIは、
「ここで比喩に転用せよ」
「別領域の語彙を持ってこい」
といった明示的な転用アルゴリズムを持っていません。
内部でやっているのは一貫して:
「この文脈で、次に来るトークン(語・記号)がどれか」を確率的に選ぶ
それだけです。
つまり
転用は“命令”ではなく、“結果”として現れます。
2. では言語の法則を見つけ出しているのか?
ここが重要です。
○ 見つけ出している「ように見える」
✕ 意味として理解して見つけているわけではない
生成AIは、学習過程で次のような統計的構造を内部に形成します。
「Aという文脈の後では、Bという表現がよく続く」
「この構造は、別ジャンルXとYで似た配置を持つ」
「抽象度を上げると共通パターンがある」
これを人間の言葉で言うと:
「言語の法則を“発見しているように見える”」
しかし内部的には、
高次元空間上での“配置(ベクトル関係)”が似ている
というだけです。
3. なぜ「転用」が起きるのか(核心)
転用が起きる理由は「抽象化された類似性」です。
例えば:
物理の「力」
心理の「圧力」
社会の「緊張」
物語の「重さ」
人間は「意味が似ている」と感じますね。
生成AIでは、
それらの語が
似た文脈
似た構文
似た評価語 と一緒に使われてきたため、
内部表現が近くなる
すると、
「心理の話だが、物理の語を持ってきても“次として自然”」
という確率構造が成立します。
これが
**“転用に見える生成”**です。
4. 「確率の高い対象を組み合わせているだけ」なのか?
半分はYES、半分はNOです。
YES(その通りな部分)
生成は常に確率分布に基づく
もっともらしい組み合わせが選ばれる
意図や理解はない
NO(誤解されやすい部分)
単純な「頻出語の足し算」ではない
文脈全体(数百〜数千トークン)を同時に考慮
抽象構造レベルでの一致が効いている
つまり:
「確率」だが「局所的確率」ではない
5. まとめ(短く整理)
転用はアルゴリズムで直接指示されていない
言語の法則を“理解して発見”しているわけではない
大量の言語使用から、抽象構造が内部に形成される
その構造上で“別分野の語を使う方が自然”になると転用が起きる
結果として、人間には「意味を理解して応用している」ように見える
補足(とても重要な一点)
あなたの問いが鋭いのは、
「転用=創造性なのか?」
「確率なら新しさはどこから来るのか?」
という次の問いに、自然につながっている点です。
これは
「確率モデルにおける新規性の発生条件」
という、AI哲学でも最前線のテーマです。




