ひとつの、ゆうき。
「……考えたことないのよね、恋なんて、私にはそんなに近くになかったもの」
「そうなんだ……」
なんか、しょぼんとするっていうか、さみしいっていうか。こころも全然知らなかったけど、こころよりずっとオトナっぽいから、そういうのも全部知ってるのかと思ってた。顔も近いし、ひそひそ話だから、吐息がかかるような距離。自分から話をしだしたけど、それだけでゾクゾクしちゃうし、ドキドキ、もっと増えちゃうな。
「色事だって、周りにあったのは寂しさを埋めるためのものばかりだったの、……だから、分からないのよ、誰かを想うとか、想われるとかも」
「そっか、……じゃあ、蘭さんも、はじめてなんだね、……デートするの」
「そうね、今更かもだけど」
慣れてないって聞いたけど、初めてなんて思わなくって。初めてなのに、なんか、普通にされてる感じ。オトナのよゆーってやつなのか、そんなにドキドキしてないからなのかわかんなくなる。知りたいな、もっと。
「なんか意外かも、そういうの、いっぱい知ってるのかと思ってたな」
「そうかもね、……びっくりしたかしら?」
スクリーンの向こうでは、いちばん、ドキドキするとこ。お互いの気持ちを伝えあってて、観てるだけでほっぺが熱くなっちゃうくらい甘くて。……『すき』って言われたいし、ちゅーだってされたいし。おでことか、間接キスとかじゃなくて、くちびるとくちびるで。
「うん、……ねえ」
「何かしら?」
ドキドキさせられてばっかりで、こういうの、全然言えてない。想像しただけで喉がカラカラになっちゃって、また飲み物に手をつける。こころのほうからも寄りかかって、顔、すぐ近く。光でぼんやりと照らされた顔、いつ見てもキレイ。たった三年しかちがわないはずなのに、ずっとオトナに見える。
「……蘭さん、……すき、だよ」
「……こころさん」
引っかかってた言葉、ようやく出せた。もっと、近づいてもいいかな。……映画の一番いいとこ、見逃しちゃうな。……でも、今はそれよりも、もっと特別なことがしたい。
顔を寄せて。それでも、離さないでいてくれる。そのまま、こっちのほう向いたまま。……いいよってこと、……だよね、きっと。蘭さんの体を抑えるように軽くぎゅってして、……もっと、もっと、まつ毛が触れ合って、止まれない。
「……っ、ぅ」
ふにふにで、ぷるんってしてて、……あつい。あったかいとか感じれないくらい一瞬だったのに、体の中、全部熱くなっちゃう。
……目、ぼんやりと開ける。まだ、夢みたい。力が入らなくって、寄りかかっちゃう。しっとりした手つきで髪をなでてくるせいで、余計に溶けちゃいそう。




