3「酒は飲んでも飲まれるな」
立ち上がった途端にくらりと来た。酔いが回ったらしい。私は情けなくもターゲットの肩を借りながら屋敷を出て、よたよたと通りまで出た。
「自分でお部屋まで帰れますか?」
「だ……だいじょうぶです」
私はもごもごと言いながら首を振る。正直、こんな状態で三階の部屋まで無事にたどり着けるか不安だ。が、要注意人物であることに間違いないこの男と、酔いが回った状態で接近していることの方が危ない。
「でも、そんなにフラフラで……やっぱり、少し休んで行かれますか?」
「だい、じょうぶです!」
言いながら、私はターゲットの胸を押した。その拍子に足下が覚束なくなり、私はその場でたたらを踏む。「危ない!」とターゲットが手を伸ばすのが見えた。
直後、慌てたような足音が一気に近づき、ぐるんと大きく視界が回る。
「ひょえ、」
気持ち悪さが腹からこみ上げて、私は目を回した。頭が鈍く痛む。両足がふわふわと軽い。そんな私の頭を自身の胸に預けさせて、その人は厳しい声で詰問した。
「――うちの妻が何か粗相でも?」
その声は、紛れもなくエリクスさんのそれである。私は思わずぱっと顔を輝かせる。こんな胡散臭いターゲットより、エリクスさんと一緒の方が何百倍だって良い。それにしても、今のエリクスさんの言葉に、私はにへらと相好を崩した。
「つま……えへへ……」
エリクスさんが私のこと、妻って言った。もちろん嘘だって分かっているけれど、それでも面映ゆいし照れるし……ちょっと、いやだいぶ嬉しい。
私は感慨深く目を閉じて、エリクスさんの言葉を噛みしめる。明らかに浮ついている様子の私を見下ろして、エリクスさんはしばらく黙り込んだ。その腕がおずおずと持ち上がり、私の背に回される。
「大丈夫?」
腰をぐいと引き上げられるようにして、姿勢を立て直させられる。私はほとんどエリクスさんに寄りかかるようにしながら、「うん」と頷いた。自分でも顔が赤くなっているのが分かる。これ以上ふやけた顔をエリクスさんに見られたくなくて、私はその胸元に顔を伏せる。額をつけて瞼を閉じると、エリクスさんの鼓動が聞こえる気がした。
「あの……あのね、まだお夕飯の準備してなくて、」
「大丈夫だよ。僕も思ったより早く帰って来られたからね」
「うん……」
言いながら、私はエリクスさんにそっと擦り寄った。
これは演技。これは演技。だって今はターゲットの面前である。私たちは新婚ほやほやのラブラブ夫婦。だからこれも任務のうちなのである。更に私は今、酒に酔っている。だからこれはちっとも不自然なことじゃない。
「早く帰ってきてくれて、とてもうれしいです」
私たちは、ターゲットに、夫婦であると思わせなければならない。でも私たちは本当の夫婦ではない。
「……あなたが無事で、本当によかった」
だから、そうと信じさせるためには、相応の偽装ってのがひつようなのだ。そうだそうだ。ただでさえこの男はわたしのことを怪しんでいるようなふしがある。だからちゃんと証明しなくちゃ。わたしたちは、ふうふで、なかよしなのだと。
わたしはいま、しあわせ、なんだと。
「――おかえりなさい」
(……エリクスさん、)
この場では口に出せないその名前をそっと胸の中で囁いて、私は背伸びした。エリクスさんの胸に両手を当て、首を伸ばす。驚いたようなエリクスさんの目が、大きく、丸くなるのが、すぐ近くで見えた。私は唇を薄く開く。
「おっと、人前だよ」
と、額を片手で制されて、私は呆気なく崩れ落ちた。踵を浮かせたまま、エリクスさんの肩に額を預ける。
(うう……)
自分でも何をしようとしたのかはっきりしなかった。が、何かとんでもないことをしそうになっていた……気がする。私はぐるぐると目を回しながら呻いた。そんな私の背を撫でながら、エリクスさんはターゲットを見据える。
「妻がお世話になったようですね。……しかし、妙齢の女性、それも既婚者に対して、距離が近すぎやしませんか」
「はは、田舎者の悪い癖ですね。どうも距離感が近いようで」
厳しい声に、しかしターゲットは意にも介した様子はない。しれっと肩を竦めたかと思えば、人差し指を立てて薄笑いを浮かべる。
「旦那さん、……さては、嫉妬深いタイプですね?」
「さあ? 人並みだと思いますが。新婚とはどこもこんなものでしょう」
言いながら、私の肩と腰に回された両腕に力がこもる。うぐ、くるしい……。何かが出てしまいそうだ……。
「それも、初心で無防備な幼妻とくれば、可愛くて仕方ない。多少過保護になるのも無理はありませんよ」
「へへ、えへへ……『かわいい』だって……照れるなぁ……」
「……ちょっと、静かにしててくれるかな」
やに下がって声を漏らせば、ぺし、と頭を叩かれる。私は少し反省して口を噤み、むすりと唇を尖らせた。
「とにかく、今日のところはこれで失礼させて頂きます」
言いながら、エリクスさんは私の膝裏を掬い上げてひょいと持ち上げた。「ほわ、」と口から感嘆と驚きの声が漏れてしまう。ターゲットは目を細めた。
「弁護士さんでしたっけ? 力持ちなんですね」
「こう見えて、結構鍛えているんですよ。筋トレが趣味でね」
エリクスさんは平然と応え、私の体を揺すり上げる。趣味じゃなくて本職だもんね、と私は内心で呟きながら、おずおずとエリクスさんの顔を見上げた。そうして、あまりの至近距離にあった鼻先に私は息を飲む。
「ち、近い!」
「ちょっと、何でそうなるの」
両手で顔を覆った私に、エリクスさんの呆れたような声が降ってくる。私は指の隙間からエリクスさんの表情をそっと窺った。すぐ近くにエリクスさんだ! 視線が重なるのに耐えきれずに、私はシュッと指を閉じる。
「……それでは」
そう言って踵を返しかけたエリクスさんの背に、のんびりとした声がかけられた。
「――そういえば、旦那さんはどのようなお酒がお好きですか? ご用意しておきますよ。今度ゆっくり話をしてみたいですね」
その問いに、私は鋭く息を飲んだ。この話題には覚えがあった。エリクスさんが好きなお酒は何か。一度私に聞いた質問を、次にエリクスさんにもしている。私は総毛立った。……探られている!
(私はあのとき、エリクスさんの好きなお酒を『葡萄酒』と答えた。でもそれはあらかじめ決めてあった内容じゃない。あの場で咄嗟に答えたでまかせだ。……しかし、この局面で私がエリクスさんにそれを伝えることはできない。代わりに私が答えるのも不自然だ)
私の体が強ばったのを感じたらしい。エリクスさんの腕に力がこもる。喉が上下した。
「そう……ですね。昔から酒は種類を問わずに好きですが、」
エリクスさんは一瞬の躊躇いを見せてから、慎重に口を開く。
「強いて言えば、ウイスキー、とか」
(外した!)
い、いや、そりゃ当てずっぽうで酒の種類を答えれば、外す確率の方が高いものである。しかしこれは大きな痛手だった。私は思わずエリクスさんをじっと見上げた。私の反応からして、エリクスさんも自分が答えを外したことを察していたらしい。私は何も言わずに見上げて念を送る。エリクスさんも無言で私を見下ろす。何だこれ。
「あと、あー、そうだな……最近は、ワインなんかにも凝っています」
(正解!)
私は心の中で喝采を上げる。
(に、二回目で当てるのは、むしろリアルなんじゃないの!?)
私の念が通じたのかもしれない。私は目を輝かせてエリクスさんを見上げ、それからターゲットに視線を移す。どういう訳か、二人とも何とも言えない顔で私を見ていた。
「では。妻がお世話になりました」
エリクスさんはそう言い残して、今度こそ本当に歩き出す。私は何も口を挟まないまま、エリクスさんの顔をじっと見上げていた。エリクスさんは私を見ない。
集合住宅の階段を上り始めた頃になって、私はごくごく小さな声で呟いた。
「……エリクスさんが来てくれてよかったです」
「僕も、ちょうど居合わせて良かったと思っているよ」
ため息交じりにエリクスさんに言われる。私はきまり悪くて目を逸らした。エリクスさんは数秒の間、私の方を無言で眺めていたようだった。
「……首に手を回してくれるかな。その方が安定する」
「はっ……!」
沈黙を埋めるように口火を切ったエリクスさんに、私はぎょっとして目を剥く。そ、そういえば、もう人目がないにもかかわらず、まだ運搬されていた!
私は慌てて首を振る。
「あ、いや、もう下ろしてください! 自分で歩けます、」
「駄目だよ。危ないからね」
「重いですよね! ごめんなさい、あのあの、」
「階段で暴れないで。二人一緒に落ちたくはないでしょ」
「うう……」
私は顔を赤くしたり青くしたりしながら、顔を引きつらせた。ただでさえ今しがたエリクスさんに助けてもらったのに、そのうえこんな……運送業のようなことをやらせてしまうなんて!
(これじゃあ、エリクスさんに一人前の有能スパイだと思ってもらえないよ!)
私は絶望した。打ちひしがれて顔を歪める。何だかいつもよりもダメージがでかい。私はきゅっと唇を噛んだ。
瞬間、目頭が一気に熱くなる。下睫毛が雫の重みにたわむ。視界が滲む。
ついにぽろりと水滴が溢れて頬に伝った。エリクスさんがぎょっとしたように目を見開く。
「ちょっと、どうし――」
「エリクスさん、わたし、情けないです……! うっかり酒を飲まされてこんなになった挙げ句、エリクスさんにこんな……うっ、ご迷惑をおがげじで……!」
突如として両手で顔を覆って泣き出した私に、エリクスさんのため息が降ってきた。やっぱり呆れられたんだ。私はずきずきと痛む頭を抱えながら身を竦めた。
「やっぱり酒を飲まされたか。どうりでアルコールの匂いがすると――」
「わ、わたし酒臭いですか!? そんなぁ! それなら、なおさら下ろしてください!」
「ほらほら暴れないの、もうすぐ部屋に着くからね」
「うわーん! わたし、酒臭いし、身だしなみもぐちゃぐちゃだし、可愛くもない……こんな醜態を晒すなんて!」
「どっちかって言うと、醜態の原因は他のところにあると思うよ」
「ど、どこですか! わたしのどこが醜態ですか!?」
「素面に戻ったら分かるんじゃないかな」
「えーん! エリクスさんが意地悪して教えてくれない!」
足をばたつかせて駄々をこねる私を見下ろしながら、エリクスさんは低い声で「……このことは担当教官に報告を上げておくか」と呟いた。
エリクスさんの声の裏で、鍵が開く音や扉の開閉する音がする。この数日で慣れてきた室内の気配がして、私はふっと全身の力を抜いた。エリクスさんの肩口に頭を乗せたまま、私は瞼を必死に持ち上げながら呟く。
「うう……教えてくださいよぉ……具体的にどの点が醜態なんですか……」
「はいはい」
そんな相槌を聞きながら、私はふっと目を閉じた。
***
「すべてが醜態でーす……」
とっぷりと日が暮れ、いつしか時針が頂点を僅かに越した深夜、私は枕に顔面を埋めて呻いた。
「……酒は……飲んでも……飲まれるな…………」
私は低い声で呟きながら仰向けになった。この数日で見慣れてきた天井を睨みつける。右に寝返りを打つ。左に転がる。……もう最悪だ。マジで最悪。
「最悪……私は一体何ということを……」
私はいつの間にか自分のベッドの上に横たわっていた。服は襟元が緩められているものの、昼間に着ていたものと同じである。しかし、自分で寝室に入った記憶がない。絶対エリクスさんに運び込まれている。絶対そうだ。
あまりの羞恥に、自然と体が丸まってゆく。膝に額を押し当てる。身動きひとつしたくなかった。
エリクスさんに運搬されながら口走った数々が脳裏でずっと回っている。エリクスさんの呆れたような視線が蘇る。エリクスさんの頬に顔を寄せようとして阻止された記憶が頭の中で明滅している。
「ほんと、私、全然駄目だ……」
呻いて、私は布団を引き寄せて頭まで被ろうとしたが、喉の渇きと空腹と……あと酒臭さに耐えかねて、のそのそと布団を押しのけた。緩慢な動きで足だけをベッドから落とし、それから両手をついて体を起こす。
「……明日の朝までに謝罪の言葉を考えておこう……反省文も書いた方が良いかな……」
もうエリクスさんに合わせる顔がない。でもこれは任務だから、ちゃんとしなくちゃ。
(……例の異能者集団が行動を起こすと危惧されている祝祭の日まで、あと四日しかない。それまでに、私たちはその企てを阻止しなくてはならない)
接近することはできたけれど、まだ相手が何を企んでいるのかは見当も付かない。時間は限られている。
ちんたらしながらベッドから立ち上がった私は、あまりしっかりとしない足取りで廊下へ出て、居間に向かった。音を立てないように扉を押し開けた直後、私は、その場で、凍り付く。
「ヒィ!」
こんな夜中になればもう部屋に戻っていると思っていたエリクスさんは、ばっちり居間のダイニングテーブルについていた。真正面から視線が重なる。
「おはよう。体調は大丈夫?」
「え……りくす、さん、」
私は思わず数歩下がった。逃げ腰になる私に、エリクスさんは「おいで」と気楽な調子で手招きする。
「夕飯の残りを温め直すよ。座って」
「あっ、いや、そんな、」
「先にお風呂に入ってくる? 準備しておくね」
「ああー、お気遣いなく……」
私はその場で両手を落ち着きなく動かした。エリクスさんは私の固辞を意にも介さず、さっさと台所に立ってしまう。私は居間の入り口でうろうろした。
「あの、まだ反省文書いてなくて……もう少しお待ちください」
「あはは、寝ぼけてる? 僕は教官じゃないよ」
エリクスさんは鍋の蓋を取りながら笑う。風呂に入ってくるように言われて、私は動揺を隠しきれずに頷いた。頭を冷やしてきたい、というか、心の準備と言い訳の用意をさせて欲しい。
***
(ぜんぜん! 考えが! まとまらない!)
ばん、と浴室の扉を開け放って、私はタオルを被せた頭を乱暴にかき混ぜた。水滴が四方八方に飛んでいく。
(むしろ一人でシャワー浴びてるとフラッシュバックが……)
げっそりとため息をついて項垂れる。数え切れない妄言、ご迷惑と羞恥で頭が爆発しそうだ。頭を上げつつ、私は鏡に映った自らの姿を見つめた。
「ん?」
洗面台に両手をつき、鏡に顔を寄せる。何だか、この顔に見覚えがある気がした。
――私が生まれ育った土地を失ってから、既に六年以上が経つ。もうすぐ七年だろうか。その間、私は貴重な少女時代の大半を諜報員になるための訓練とともに走り抜けてきた。『普通の』女の子たちが、友達や恋人なんかと青春を送っているはずの日々を、私は限られた世界のみで過ごしてきた。
……だから、自分がたくさんの時間を超えてきた感覚が、あんまりなかったのだ。
私は手を伸ばし、鏡に映る自分の顔に指先を触れた。
「……私、お母さん似なんだね」
思わずそう呟いてから、私は目を細めて笑ってみた。もう記憶がおぼろげだけれど、確か、お母さんはいつもこんな風に笑っていた。そう思って作ってみた表情が、驚くほど、記憶の彼方にあるものと同じなので。
「あ、はは……」
私は思わずずるずるとしゃがみ込んだ。洗面台のふちに指先を引っかけて、肩を揺らして笑う。
――『お酒は成人してからね』。
はたり、と洗面台から手が落ちる。
『初めて飲むときは、お母さんと、一緒に飲もうね』。
脱衣所にぺたんと座り込んで、私は深く項垂れた。
「……ユティニアのみんなは、今頃どこにいるのかな、」
今は既になくなってしまった村。慎ましやかに暮らしていたはずのユティニア人。行方も知れず、生死も分からぬ隣人たちは、今、どうしているだろうか。
……私の家族は、きっとどこかで生きている。両親と弟。いずれも死体は見つかっていないけれど、消息も分からないままだ。
(三人とも一緒にいてくれたら良いんだけど……)
手の甲で乱暴に目元と頬を拭うと、私は立ち上がって身支度を調え、脱衣所を出た。
***
居間に入ると、香ばしい肉の香りが鼻孔をくすぐった。私ははっとして台所を見る。え、エリクスさんが肉を焼いている!
私は慌てて駆け寄った。
「ご、ごめんなさい、そんな、散々ご迷惑をかけたのに、食事の準備までさせて……」
「良いよ良いよ。今日……というか昨日は、長い間ターゲットの近くにいて疲れただろうからね。しかも酒まで飲まされて」
「う゛っ……そのはなしはやめてください……」
「あはは」
愉快そうに笑いながら、エリクスさんはフライパンから皿にお肉を移した。私は手元を覗き込みながら「おおー」と感嘆の声を上げる。
「すごい……手が込んでそう……。……鶏肉ですよね?」
「そこから確認?」
苦笑したエリクスさんが、私に皿を手渡した。テーブルまでは自分で持って行けということか。いそいそとテーブルの方へ向かった私に、エリクスさんは気軽な口調で声をかける。
「でも、別に手は込んでないよ。その辺の店で売っていたハーブソルトをかけて焼いただけだからね」
「な、なるほど、お洒落な響きですね。料理上級者の家にあるイメージですけど……」
「うん、分かる」
エリクスさんは笑顔で頷いた。自分で言うか、と私は横目でエリクスさんを見やる。エリクスさんはひょいと肩を竦めた。
その顔にあくどい笑みが浮かぶ。
「僕だって自宅には常備していないよ。でも、ここでの生活費は経費で落ちるからね。――せっかくだから良いものを買わせてもらったんだ」
「あー、悪い人だ」
「心外だな。これは必要経費だよ」
ちっちっ、と人差し指を振って、カウンターの向こうのエリクスさんが悪戯っぽく笑う。私は「ええー」とわざとらしく唇を尖らせた。
「じゃあ余った分はどうするつもりなんですか?」
「うーん、捨てるのも勿体ないし、こっそり持ち帰ろうかな」
「いや、駄目じゃないですか!」
私がびしりと指を指して突っ込むと、エリクスさんは両手を挙げて「参ったな」と舌を出す。
「これくらい見逃してよ。じゃあさ、余った残りを半分こしようか。共犯共犯」
そう言っておどけた口調で小瓶を振る、その仕草が妙に面白く思えて、私はついに小さく吹き出した。……どうもそれが堰を切ったらしい。私は堪えきれずに声を上げて笑い出してしまった。
私が肩を揺らして笑う様子を、しばらく黙って眺めてから、エリクスさんは腰に手を当ててにこりと微笑んだ。
「――うん、やっぱり僕の奥さんは笑っているのが一番可愛いね」
「!?」
いきなりの言葉に、私はぴしりと固まったのだった。




