302話 Sランク並みの家臣達でございます!
「おお、もう皆揃っておったかの。いたたた……」
考えていたらちょうどコハーク様がやってきた。片手で腰を叩きながら震える手で杖をついている。歩みもフラフラ。どう見てもギックリ腰をしてしまっている。王様も心配そうに様子を見ている。
「やっと来たと思ったら、腰やっちゃったの。大丈夫?」
「申し訳ない国王様。その通りなのです。誰かに荷物を運ぶの手伝ってもらわんと……」
「私が手伝いますよ。その前に」
回復魔法を唱えてコハーク様の腰を直した。……直したはずなんだけど、単純にこの人は元から姿勢が悪いのか、角度がちょっと上向きになったくらい。まあでも杖は要らなくなったみたいだし。
「ありがとうだの、アイリス殿。ではこっちに。……あ、まて、やはりよく考えたら女性じゃ持ってくるの厳しいんだの」
「そうですか? でも私、元はゴーレムですから人に頼むより荷物は多く運べると思いますが」」
「おっと、そうだったの。つい忘れてしまう。では引き続き頼もうかの」
私はコハーク様に連れられて玉座の横にある彼の部屋へ入った。もちろん姿はゴーレムで。この部屋には何かよくわからないアイテムや文献がゴチャゴチャと散らかっている。しかしどうやら普段から散らかっているというわけではなく、今だけ、何かを探してて散らかってる最中というべき散らかり方をしている。この推理、私が掃除好きじゃなきゃできなかったわね。
「普段はこんなぐちゃぐちゃじゃないんだの。アッシ、こう見えても綺麗好きだし。ま、とにかく……その壁際にある本やら紙をまとめて持ってきてほしいんだの」
【承知しました】
荷物でひと山できてしまっている。たしかにこれは人間の私が手伝った程度じゃ力不足だったでしょう。いや、男性でも無理ねこれは。
私は部屋の真ん中でドミニオンゴーレムの最大の大きさになり、荷物を手ですくい上げた。手を遠隔操作して部屋の外へ運ぶ。この巨体じゃ私自身は出られないし、これが最善の方法でしょう。
書類の山をそのまま軽く整えてから、私はいつもの人間態に戻った。そのまま王様達の元に戻る。
「アイリス殿のおかげで思ってた何倍も早く運び終わったんだの」
「そうだね、なんか手だけ飛んできてたね。じゃああとはガーベラくんを呼び戻して、騎士団長や魔導師長とかを呼べば全員揃うかな」
まず王様は兵士さんに命じてガーベラさんを連れてこさせた。今日は顔以外全身を鎧で見に包んでいる。戦う覚悟をしてきたのが一目でわかる。それから続いて、国王様が一昨日言っていた城に仕えるSランク相当の実力者三人もやってきた。えっとたしか、槍使いのランスロットさんに弓兵のタイガーアイさん、魔導師のペリドットさんだったかしら。全員かなりの風格があるわ。
「やあやあ、みんな来たね! じゃあまずはお互いはじめましての人もいると思うから、各々で初対面の人と一通り自己紹介してね。十五分後にコハークの説明を始めるから、その間に」
王様は人と人とが協力するには友好関係が重要だと考えているらしく、このように自己紹介は必ずさせる主義らしい。壁側でずっと待機していたおじいさんが念話で私達に教えてくれた。
まず、私たちの元に来たのは大魔導師のペリドットさん。この国随一の魔導師にして魔法使い。外見はかなり若く、なんなら私と変わらないくらいに見える。
「あら~~、初めまして~~! わたしはここで魔法使いをしてるペリドットなの~~、よろしくね~!」
「「よろしくお願いします!」」
「あなた達は、えっと~、髪の短い子がリンネちゃん、長い子がロモンちゃん、元ゴーレムだっていうアイリスちゃんに、ベスちゃんの子供のケルちゃんね~~! あなた達の父さん、お母さん、おじいちゃんからた~くさんお話しは聞かせてもらってるわ~~。聞いてた通りみんなチャーミングね~~」
やっぱり私たちのこと話してるのね。王様より仕事仲間の方が話す量多いだろうし当然だけれど、やっぱり少し恥ずかしくなるわ。
「……全員すごい魔力の量ね~。特にリンネちゃんは、グライドさんに憧れて剣士してるんでしょ~? 意外よ~。そこらの冒険者のA級魔法使いより強力な魔法使えるんじゃない~?」
「ぼくたち四人は普段から一緒の内容を行う特訓と、個々の長所を伸ばす特訓、気分で両方してるので! だからロモンは魔物使いだけど近接格闘もいけるし、ぼくも基本的な属性の最上級呪文は全部使えるんです」
「あら~~、聞いてた通り! すご~く頑張ってるのね~~! お姉さん、感激よ~~!」
ペリドットさんはちらりと横を向くと、「順番待ちしてるみたいだし次行くわね~」と言って私たちの元から離れ、ガーベラさんのところへ向かった。
代わって来たのはタイガーアイさんだった。弓兵と聞いていたから身軽そうな見た目かと思ってたけど、とんでもない。ゴリゴリの筋肉が目立つ大男。トラのような耳と尻尾がついおり、つまるところトラの獣人のようだけど、可愛さはゼロ。
「「初めまして!」」
「ああ……。自分が、タイガーアイ……」
「よろしくお願いします」
「……よろしく……。自分は、グライドや総騎士団長から、いつも、お前達の話を……すごく聞かされてる……だから、お前達のこと、少し知っている」
この人寡黙そうだし、グライドさんから話し合いですらない一方的な娘自慢を聞かされている姿が簡単に目に浮かぶ。
「……グライド達の話じゃ、弓使いは一人もなし。剣か魔法か。ちょっと悲しかった。でも、今見たら、どうやら、お前はそこそこ使える。……そうだろ?」
「私ですか? え、ええ。特に練習した覚えはありませんが、それなりに扱えはするようです」
「弓の道、極めてみないか?」
「申し訳ありません、私の一番の得物はすでに剣となっているので……」
「……ぅ。たしかに、元魔物でも、実質、グライドの娘。仕方ない……」
申し訳ないけど、私の遠距離武器として魔法も操作可能な手もあるし、正直に答えてしまった。きっと私たちの誰かに弓を教えてみたかったのでしょうけれど。タイガーアイさんはトラの耳をぺたんとたたみ、みるからにしょげている。
「でも、聞くところ、勇者も槍使い。誰も弓使わない……」
【でも誰も弓を使わないということは、弓が必要な場面になったら貴方自身が一番活躍できるということじゃないかゾ?】
「……!! たしか、ケル……か。お前はかしこい。その通り」
こういう時ケルくんってズバリなこというから素敵だと思う。フォローがうまいのね。タイガーアイさんは元気になって私たちの元を離れていった。
次で最後ね。最初にまっすぐガーベラさんの元に向かって行った、彼と同じ槍使いのランスロットさん。その人が私たちの元に来た。
「グライドの娘達だな。話は散々嫌という程聞かされている。周知だろうが俺はこの国最強の槍使い、ランスロット! グライドのライバルなのだ」
「お父さんのライバル?」
「その通り。俺とアイツは今まで互いに競い合い、99勝99敗99引き分けなのだ」
違え武器の使い手とはいえ、お父さんにライバルなんていたかしら。そんな話、ロモンちゃんもリンネちゃんも聞いたことがないようだし、お母さんの口からも聞かされていない。これはまさか、勝手にライバル認定してるという感じかしら。この人のテンションからしてあり得ると思う。とはいえやはり、お父さん達がこの人にも自分や娘自慢をしていたのは今まで通りらしい。もう、本当に私たちのことをこの城内で知らない人はいないんじゃないかしら。
「グライドとノアさんの娘、総騎士団長の孫娘ときいてどんなものかと見てみれば! ……言っていたことは事実だったようだ、大変な努力を積んでいることがわかるのである」
「ありがとうございます!」
「あの勇者といい、最近の若者は有望なのだなぁ。若い頃はこの年齢になったら『今の若いものはなっていない』なんて小言を言うだろうとばかり思っていたんだが」
ランスロットさんは嬉しそうにそう言った。まあ、お父さんとライバルかどうかの真偽は置いておいて、強くて、ちゃんとした立場に立っているのは間違いない。多分この人がガーベラさんの見極めをするのだろうけれど……本当にこの人がこの国最強の槍使いなら、もしガーベラさんが勝ったら……?
「そろそろ時間であるな。ではまた!」
「はい!」
時計を確認したランスロットさんが離れたところで、王様も少し大きいのか頭の中心からズレていた王冠を直しながら立ち上がった。
「それぞれ自己紹介は終わった? じゃあそろそろ探し物のお願いの説明をするよ! コハーク!」
「承知しましたの」
コハーク様は私が運んだ資料の中にあった、丸まった古びた紙を手に持っている。それを両手で広げ、みんなに見やすいように掲げた。その紙に書かれていたのはうすら水色に光っているダイヤモンドのような色合いをした石であった。
「これは賢者の石! 魔王討伐に必要なものなのだの!」
「そうなんだ、みんなにはこれを探して欲しいんだ! いや、正確には魔王より先に見つけて欲しいの。この石は勇者みたいに僕達だけに恩恵をもたらすものじゃなくて、手に入れたその人に平等に効果をもたらすから」
なるほど、まだどんな能力かは知らないけど、魔王にも利用される可能性がかなり高いということね。それはたしかにちゃんと戦力となる人材が整った前で話した方がいい内容かもしれない。もしこれをガーベラさんが手に入れれば、今よりガーベラさんが強くなるのかしら。
……でも、なんか、あの石、見たことがあるような気がしてならないのよね……。
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申し訳ありません、寝落ちして投稿を今の今まで忘れてました!
次の投稿は9/2です!




