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第61話 橋の王国へようこそ!と出迎えられる

「橋の王国ブリッジスタンへようこそ! さあ通行税を下さい!!」


「いきなり大歓迎かと思ったらお金を無心されてしまった」


 驚くばかりの俺である。


「これだから、我々ナゾマーの民は橋の王国に入ることもできない。外から眺めて中身を想像するばかりだった。遠目に見る鳥の翼は美しいというやつだ」


「ウインドのナゾマーことわざが出たな」


 ジュウザが楽しげである。

 ナゾマーの民であったウインドは、言い回しがちょいちょい独特で、価値観も俺たちは違う。

 そこが話していて楽しい。


 彼もその違いを興味深く思っているようだった。


「ウインド、ここは金を払えばいいんだ。こっちとうちの王国で、通貨が違うとは思うんだが……金貨と銀貨だから大丈夫だろう。商人がここ通っているって話だしな。いくら?」


 ブリッジスタン入り口に立つ人に聞いてみる。

 兵士なのかと思ったら、入国管理官という仕事なのだそうだ。


「金ならこの重さ、銀ならこの重さですね。ああ、食料や革製品、他の金属でもお受けしています。ただ、宝石では税になりませんね」


「重さで量るのか。わかりやすいなあ」


 銀貨を秤に掛けてもらい、

 よしが出た。


「ブリッジスタンへようこそ! 国内では色々お金を必要としますから、路銀が足りなくなったらアルバイトをおすすめしますよ!」


「面白い国だなあ」


「変わった国ですねー! 入り口であんなにフレンドリーだったの初めてですよー」


 エクセレンもうんうんと頷いている。

 入国税さえ払えばなんでもいいということなのだろう。


「大陸の間に掛かる大きな橋が領土なんじゃろ? 作物を生み出したりは苦手なんじゃろ。じゃから再利用できるものを税金としてもらっておるのじゃ!」


「なるほど」


 ディアボラの説明に、納得する俺たちである。

 さて、エクセレントマイティ一行はブリッジスタンへ入った。


 ここは見渡す限り、石畳が広がる国だ。

 足元全てが巨大な橋そのものなのだから当然といえば当然。


 家々は木造だったり、やはり石造りだったり。


「暑さはナゾマーと変わらない感じですけど、風が吹くから気持ちいいですね!」


「おう。橋の向こうはすぐに海だからな」


 橋の幅は、ライトダーク王都の半分くらい。

 橋の長さは、ライトダーク王都の二倍くらい。


 王国として考えると小さな国なんだが、とにかく存在している場所と言い、存在している形といい物凄く独特だ。


「よし、では宿を決めたらめいめい散策に出かけよう! それから、路銀もそろそろ少なくなってきたから仕事を探さないとな。散策しながら、いい感じの仕事も探してくれ」


「はーい!」


「おう!」


「分かった」


「任せるのじゃ!」


 宿は外見石造り、中身は木造のオーシャンビュー。

 つまり海が見えるってことだ。

 まあ、この国の宿屋は全部海沿いで、部屋は全て海側に大きな窓がある。


「このような作りで、守りが薄いのではないか」


「海面から高さがある。船で攻撃をしようとしても、届かないだろう」


 ジュウザとウインドが、わいわいと防備について話し合っている。

 こういうところは似た者同士だな。


 隣が女子部屋で、ベランダから身を乗り出したエクセレンが手を振ってきた。


「マイティー! こっちの部屋は可愛くて素敵ですよー!」


「部屋の作りが違うのか!」


「こっちに来ます?」


「行ってみるか」


 隣室に顔を出すと、ディアボラが早速、床に大きな紙を広げて魔法陣を書いている。


「なんじゃ、女子部屋に遠慮なく入ってくるのう!」


「エクセレンに招かれたんでな。ほうほう、絨毯があるんだなここは。こりゃあ凄いな」


 ばかでかい絨毯に、いろいろな柄が織り込まれている。

 男子部屋など、木製の床に太い藁で編まれた敷物が広がっているだけだぞ。

 殺風景だ。


「そりゃあ、女子部屋の宿代は倍くらいしたからなのじゃ!」


「そうだったっけ」


「こっちの方が安全な作りなんですって」


 宿の主人が気を利かせて、女子の部屋はいい部屋にしてくれたということだろう。

 ウェルカムフルーツまであるな。


「これは、さっさと路銀を稼がないとお金が底をつくぞ」


「わしら、ライトダーク王国であまり報酬を受け取らなかったからなのじゃー」


「それどころじゃなかったですもんねー」


 俺たちはしばらく宿でまったりした後、宿のフロントに鍵を預けて外へ出るのだ。

 橋の王国とやらを散策してやろう。


「わしは一人でぶらぶらするのじゃ! なに、身を守るのは得意じゃ! 魔将じゃからな!」


 ディアボラはそう告げると、人混みに消えていった。


「では、拙者はウインドとともにこの国を調べよう」


「変わった素材が手に入るかもしれない。楽しみだ」


「だがウインド、先立つものが無ければ手に入れられぬぞ」


「お金というものか? 外の世界はなんとも不便だな……」


 ジュウザとウインドも去っていった。

 ということは。


「俺と」


「ボクが一緒ですね! 二人きりは久しぶりですねえ」


「ああ。エクセレントマイティも随分賑やかになったからなあ。俺としては、あと一人女子組が増えそうな予感がしている」


「なんですかそれ。マイティは予知ができるとか!」


「そういう能力は無いと思うんだけどなー」


 俺たち二人のやることは、観光半分、仕事探し半分。

 橋の王国の先にある、ノウザーム大陸の情報は、ジュウザとウインドが手に入れてくれることだろう。


 俺は地に足がついたことをしないとな。

 一応、パーティーのリーダーでもあることだし。


「見て下さいマイティ! 何か美味しそうなものを焼いてます! えっ!? そこの海で獲れた大きな虫みたいなものを!? エビ? なんですかそれ!?」


 早速エクセレンが面白そうなものを見つけてしまった。

 散財はほどほどにして、金を稼ぐ手段を見つけないとなあ。

橋の王国での冒険は、ちょっと観光気分なのだ


お楽しみいただけましたなら、下の方の星をスルッと増やしていただけますと幸いです!

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