第14話 相手にもストーリーがあるのだろうが構ったことではない
なるほど、俺が盾を突き立てた小舟は、多少はダメージを受けにくくなっているようだ。
ダメージはゼロとはいかないけどな。
「あああああ! お、俺の船の舳先が! 削れていくぅぅぅぅ!!」
船主、すまんな!
もっと俺が腕を上げて、今度は船もダメージゼロになるようにするからよ!
肉薄したら、どうやらあの妙な武器の射程範囲から外れたらしい。
目の前にはどでかい幽霊船が迫る。
「行けえ、エクセレン!! ぶっとばせ!!」
「はーいっ! とおぉぉぉぉりゃあああああ!!」
俺の腰から背中を駆け上がり、跳躍するエクセレン。
マジックミサイルを放った勢いで加速して、回転しながらミノタウロスアックスを叩きつけた。
「あっ、だめですマイティ! 段々治っていきます!」
「ってことは、こいつはこの間の魔術師と一緒だな? よしエクセレン、棍棒だ!」
「そっか! えーいっ!」
ミノタウロスアックスを投げ捨てたエクセレン。
腰から引き抜いたのは愛用のトゲ付き棍棒だ。
それが金色に光り輝きながら、幽霊船を激しく打つ。
すると、幽霊船の巨体がその一撃で傾いだ。
『な、何を……何をしているのかお前らあああああ!! 吾輩の、吾輩の船に……』
「えいえいえいえいえいえいえいえいえいえい!!」
エクセレンの棍棒連打だ!
幽霊船は連続で叩かれたところから、板ではない粉々の粉末になり、バラバラに崩れていく。
『や、やめろーっ!! 吾輩の船に手を出すな馬鹿者めええええ!! 吾輩が、吾輩が復讐をするための手足が! 魔王様から授かった力が!!』
「魔王だと!? おいエクセレン、こいつは当たりだ。魔王とか言っているぞ。いや、本当にいるんだな魔王」
エクセレンの乱打で、幽霊船のあちこちに穴が空いた。
俺はここに乗り込んでいくことにする。
キャプテンガイストとかいう幽霊船の親玉を倒さねば、この仕事は終わらないだろう。
海の護衛依頼というものはかくも大変なのだ。
こういう仕事をこなしていた冒険者たちに、俺は敬意を覚える。
「お、おいどこに……」
「船主、すぐ戻る。幽霊船の足元にいれば安心だ。大人しくしていてくれ」
「行ってきます!」
エクセレンが手を振ると、船員たちはこわばった顔に無理やり笑みを浮かべて、手を振り返す。
あの心遣いに応えてやらなくちゃな。
幽霊船の内部は、アンデッドの巣窟だった。
だが、思ったよりも数が少ないな。
本来いたはずの数が減っているようだ。
まあいいか。
幸運だ。
『アアアアアア』
『オオオオオオ』
呻きながらすがりついてくる。
「ふんっ!!」
奴らをガードで弾きながら、吹っ飛ばす。
「そのまま駆け上がれ、エクセレン!」
「はい! おりゃー!」
幽霊船の階段を駆け上がりながら、周りの壁や天井をめちゃくちゃに叩いて突き進むエクセレン。
『オアアアアアア!! 吾輩の! 吾輩の船があああ!! 貴様、貴様らあああああああ!! これから吾輩の復讐が! 吾輩の物語を邪魔した連中への復讐が始まると言うのにぃぃぃぃぃ!!』
「知りません! えいっ!」
『ウグワーッ!!』
いいぞ!
キャプテンガイストが棍棒で殴りつけられたらしい。
俺が甲板に駆け上がると、そこではエクセレンとキャプテンガイストが戦っているところだった。
『見切ったぞ! 小娘! お前は大した腕ではないな!』
「あっ!」
棍棒が弾き飛ばされた!
いや、危ないところだったな!
キャプテンガイストのサーベルがエクセレンに突き立てられる寸前。
「ガードムーブ!!」
俺が身につけたスキルの一つ。
かつてフェイクブレイバーズの仲間たちからは、タンクがわざわざ守るために移動するなど無駄だと笑われた技だ。
だが、身につけておくものだ。
これは守るべき対象と定めた相手の元まで一瞬で移動し……!
『な、なんだとお!!』
「危ないところだったな!」
今度弾かれたのはガイストのサーベルだ。
ガードムーブは、守るべき対象が視界にいる限り、そこまで移動して守る!
俺はこれを極限まで磨き上げている。
即ち、俺がエクセレンを守るために割り込む速度は、ガイストがサーベルを繰り出すよりも速い。
そして守りが万全ならば、敵が身を守るべき武器が弾き飛ばされているならば。
「行きます!! とおおおおりゃあああっ!!」
俺の脇から飛び出したエクセレンが、キャプテンガイストを真横からぶん殴った。
『ウグワーッ!? きさ、貴様、貴様ああああああ!! 吾輩は、吾輩は!!』
抵抗するために振り下ろされたサーベルを、俺の盾が再び弾く。
その脇腹に、めちゃくちゃに叩き込まれる、輝く棍棒。
連打連打連打。
『ウグワワワーッ!? こんな、こんなどこの誰かも分からん誰かに、吾輩がーっ!? い、いやだーっ! 吾輩の最後が、こんなよく分からない終わり方なんていやだああああ! 吾輩はもっとドラマチックに! もっと、もっと、復讐を果たして、人間どもに恐怖を刻み込んで、伝説に残る……!!』
「ほりゃあ!」
『ウグワーッ!』
顔面をぶん殴られ、キャプテンガイストはそこから粉々になった。
同時に、幽霊船が凄まじい勢いで崩れ落ちていく。
「エクセレン、俺の首に抱きつけ」
「は、はい!!」
ぎゅっとエクセレンがしがみついたのを確認しつつ、俺は幽霊船から小舟に向かってジャンプした。
着地すると、甲板が砕けて大きな穴が空く。
「ほぎゃああああ! ふ、船がー!! シーモンキー号があああー!!」
「すまんな」
俺は心から謝ったのだった。
「見て下さいマイティ! ガイストの使ってたサーベルです! またパワーアップしちゃいましたよー!!」
パーティー名『エクセレントマイティ』
ランク:C
構成員:二名
名前:エクセレン
職業:エクセレントファイター
Lv:15→19
HP:156→200
MP:97→123
技 :魔技ミサイルスピン クイックドロー バックスタブ パイルバンカーブロウ
エンタングルブロウ
魔法:マジックミサイル(中級):派生ドリルマジックミサイル(下級) ヒール(下級) ライト(下級)
覚醒:シャイニング棍棒
武器:鉄のナイフ 鉄のトマホーク トゲ付き棍棒(覚醒) ミノタウロスアックス
ガイストサーベル
防具:チェインメイル
名前:マイティ
職業:タンク
Lv:86
HP:1200
MP:0
技 :ガード強化(特級) カバーガード(特級) エリアガード(特級)
マジックガード(特級) マインドガード(特級) パリィ(特級)
ガードムーブ(特級) ヘイトコントロール(特級) マッチング(初級)
魔法:なし
覚醒:なし
武器:なし
防具:熟練のプレートアーマー、熟練のビッグシールド
幽霊船長撃破!
ついでに得物をゲットなのだ!
お楽しみいただけましたなら、下の方の星をスルッと増やしていただけますと幸いです!




