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もうじき乙女ゲームの始まる季節ですが、僕の彼女は異分子です  作者: うすいかつら
番外編

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13/15

それもきっと恋だから・2

 うわあとは声を漏らさなかったけど、顔には出たらしい。


「……言っておくけど、イーサン殿下に変な性癖はないからね……今のところ」


 こくこくと頷いておく。

 口にしなければ不敬罪には問われないと信じたい。


「イーサン殿下に露出趣味の気があったら、エリス嬢との既成事実は既に成立してると思うよ。人目を避けてエリス嬢と二人きりになろうとして、止められているんだしね」


 だけどアーノルド様が少し目を逸らして、ぼそっと続けたセリフには半眼になった。

 アーノルド様にむりやり既成事実を仕組まれて、一気に結婚に持ち込まれたのはたった一ヶ月と半月前のことだ。

 別にアーノルド様を嫌いなわけではなかったし、わたしが鈍すぎたと言われたら返す言葉はないんだけど、未だにちょっとどころでなく強引だったとは思っている。


 ……アーノルド様には露出趣味があるんだろうか。


「僕もないからね?」


 また顔に出てたらしい。


「ほんとですか?」

「ほんとほんと」


 返事が軽すぎて疑いが湧いてくる。

 じとっと見ていたら、急にアーノルド様の顔が目の前に来た。


 ちゅっと軽い音を立ててキスが唇を掠めていって、目を見開く。


「な、なななんで」


 急に!


「いや、ちょっと可愛かったから」


 どこが!?


「っと、しまった、もうジェラルドたちが来るな」


 はっとして廊下を覗くと、推定ヒロインさんとステファン様がまだ見つめ合っていた。


 誤魔化された気がするけど、でも今はヒロインさんのことを無視はできない。

 エリス様の未来がかかっている。


 見つめ合ってと言っても、色っぽい感じじゃない。

 こう……張り詰めた空気だった。

 でも睨み合っているというわけでもないので、見つめ合っていると言うしかない。


 ステファン様の視線は遠くからでもわかるくらい冷ややかだ。

 ヒロインさんの方は、焦っていると言うか怯えていると言うか……


「あのまま行き会うと困るか……ステファン!」


 隠れていた扉からアーノルド様が顔を出して、ステファン様を呼んだ。


 ステファン様がさっと振り返るとアーノルド様を見て、ヒロインさんの手を握って引っ張って、こちらに早足で来た。

 引っ張られるヒロインさんの顔は強張っていたけど、抵抗する様子はなく、ついてくる。


 そして二人が部屋の中に入ると、アーノルド様は扉をきちんと閉めた。


 いつものようにお昼休みに入ってエリス様をお迎えに行ったイーサン殿下の一行が、表の廊下をそろそろ通るはずだった。

 そういえばお昼の遭遇イベントも確かにあったけど、エリス様は出てこなかった気がする……でも、入学からずっとイーサン殿下がお昼にお迎えに来るのは続いてるよね。


 え、じゃあ、お昼のイーサン殿下のイベントはすべてエリス様の目の前で……!?

 それはエリス様も怒るよ……

 悪役令嬢化しちゃうわ。


 他の攻略対象の皆さんは授業が違うと後から合流ってあるから、一人の時に遭遇してたとも考えられる。

 ステファン様は特に学年が違うから、お昼は遅れていらっしゃることも多かった。


 でも、でもイーサン殿下は……お迎えに来る前だったらエリス様はいない?

 だけど他のお付きの方は誰かいる。


 やっぱりヒロインさんに攻略されると露出趣味に目覚めちゃうのかしら。


「アーノルド、今日から復学なの? 朝はいなかったけど」


 ヒロインさんの手を握ったままで、ステファン様がアーノルド様に訊ねる。

 手を握ってるけど、色っぽい感じじゃない。

 逃げないようにって感じだ。


 わたしたちが休んでる間に、この二人にどんなイベントが起こっていたのか気になるところだった。


「そうだよ、さっきまで復学の手続きをしてたからね。午後から授業に出ようかと思っていて、昼だから食堂かエリス嬢のところに行こうとしていたんだけど」


 そこでアーノルド様は視線をヒロインさんに向けた。

 それでステファン様は理解したらしい……けど、真実とはちょっと違うんじゃないかと思う。


「ああ、僕がいたからわかったの? そうだよ、彼女が手紙に書いた子」


 ステファン様が来る前からヒロインさんを観察してたとは思ってないよね、やっぱり。


 その辺はアーノルド様は腹黒攻略対象らしくスルーして、にっこりとヒロインさんに挨拶をした。


「はじめまして、僕はアーノルド。ディネイザン家の長子だ。こちらは妻のレベッカ」

「は、はじめまして」


 紹介されてしまったので、わたしも慌てて挨拶した。


「はじめまして、アーノルド様、レベッカ様。わたしはリンディです」


 ヒロインさんもにっこり笑って挨拶を返す。


 やっぱり名前はリンディなんだ。

 そういえば家名を名乗らないのは、庶子だからなのかな。

 ゲームやってる時には全然気にしなかったけど、今だとわかる。


 ……アーノルド様が結婚したことは知っていたんだろうか。

 だから驚かないんだろうか。

 それともヒロインとしての自覚がないのか……自覚があるなら三人目の転生者ってことになるから、その可能性もある。


 三人目は多いよね。

 でも、モブのわたしよりもヒロインの彼女が転生者の方が自然な気がする。


 つらつら考えているうちに、ステファン様のお説教が始まっていた。


「前にも言ったよね? あんな風に待ち伏せするなんて淑女らしくないんじゃない?」

「すみません」

「反省してる顔じゃないよ!」

「ごめんなさい」


 ステファン様がぷりぷり怒っているけれど、リンディさんはてへっと笑っている。

 腕組みして、そんなステファン様とリンディさんのやり取りを聞いていたアーノルド様が横から口を挟んだ。


「……君は、イーサン殿下とお近づきになりたいの?」

「高望みはしないので、父からもうちょっといい薬代を毟り取れるくらいのコネが作れればいいなと思ってます」


 さっとニコニコ朗らかな笑顔を向けて、リンディさんが答える。

 しかしニコニコ笑顔では誤魔化せないくらい、発言内容はあけっぴろげだ。


 ステファン様は固まっていた。


 攻略対象の皆さんはいいとこのお坊ちゃまですもんね……

 わたしも前世の庶民的な記憶がちらほら残っていなかったら、同じ反応だったかもしれない。


 でも……薬代?

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[良い点] 〉じとっと見ていたら、急にアーノルド様の顔が目の前に来た。 〉 ちゅっと軽い音を立ててキスが唇を掠めていって、目を見開く。 〉「な、なななんで」 〉 急に! 〉「いや、ちょっと可愛…
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