第15話「感情の完全解放と愛の確信」
──帝国南部、静かな湖畔の村。
レオンとセレナは、魔物の被害を受けた村で復興支援を手伝っていた。
瓦礫を片付け、子どもたちに魔法の使い方を教え、夜には村人たちと食卓を囲む。
王族でも転生者でもない、ただの“人”として過ごす日々。
「……こんな風に、誰かと笑い合えるなんて、昔の私には想像できなかった」
セレナは湖畔に腰を下ろし、静かに呟いた。
レオンは隣に座り、彼女の手をそっと握った。
「君が変わったんじゃない。君が“戻ってきた”んだ。感情を持つ、本来の君に」
「でも、まだ怖い。私の中には、まだ“氷”が残ってる気がする」
レオンは微笑みながら、彼女の手を胸に当てた。
「なら、俺が溶かす。君の心が望む限り、何度でも」
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その夜、セレナは夢を見た。
──幼い自分が、氷の檻の中で泣いている。
──父王の声「感情は毒だ。お前は皇女として、冷たくあれ」
──誰にも触れられず、誰にも触れようとしなかった日々。
「……私は、誰かに愛される資格なんてない」
その言葉に、夢の中のレオンが現れた。
「資格なんて、誰が決める? 君が誰かを愛した時点で、君はもう“愛される存在”なんだ」
セレナは涙を流しながら、氷の檻を自らの手で砕いた。
──目覚めた瞬間、彼女の魔力が静かに輝いていた。
氷の魔力は、冷たさではなく“透明な優しさ”を帯びていた。
それは、感情を完全に解放した証。
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「レオン……私、もう怖くない。私は、あなたを愛してる」
その言葉に、レオンは静かに微笑んだ。
「俺も、君を愛してる。契約でも、使命でもない。これは、俺たちの“選択”だ」
二人は抱き合い、湖畔に氷と光が混ざり合った花が咲いた。
それは、政略婚から始まった関係が“愛”へと変わった瞬間だった。
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その頃、帝都ではクロードの軍が進軍を開始していた。
魔核兵器を搭載した部隊が、王宮を包囲する準備を進めていた。
「皇女と王子がいない今、帝国は我々のものだ」
だが、遠く離れた湖畔では、二人の心が一つになっていた。




