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第14話「二人の逃亡と旅の始まり」

──帝都グランゼル、夜明け前。




王宮の空に再び魔力の波が走った。


北部から放たれた魔核の残滓が、帝都の結界を揺らし始めていた。




「このままでは、王宮が持たない。防御陣が崩れかけてる」




レオンは聖魔法で結界を補強しながら、セレナに目を向けた。




「君をここに残すわけにはいかない。俺たちが狙われてる」




「でも、逃げるの? 王族として、私は……」




「これは逃亡じゃない。これは“選択”だ。君が守るべきものを、もう一度見つけるための旅だ」




セレナは迷いながらも頷いた。




「……わかった。あなたとなら、見つけられる気がする」




---




二人は王宮を離れ、帝国の南部へと向かった。


護衛もなく、身分を隠しながらの旅。


だが、彼らの目的はただの避難ではなかった。




「帝国の本当の姿を知りたい。貴族の会議室じゃなく、民衆の声を聞きたい」




「私も……王族としてじゃなく、一人の人間として、世界を見てみたい」




道中、彼らは小さな村に立ち寄った。


そこでは、魔物の襲撃で家族を失った人々が、静かに暮らしていた。




「皇女様が魔物を倒したって聞いた。あれが本当なら、俺たちにも希望はあるのか?」




レオンとセレナは名乗らず、ただ静かに話を聞いた。




「……この国は、誰かに守られるだけじゃなく、誰かが“守りたい”と思える国であるべきだ」




その言葉に、セレナは胸を打たれた。




---




夜、焚き火の前で二人は語り合った。




「あなたは、どうしてこの世界に来たの?」




「神に言われたんだ。“この世界を変えてほしい”って。でも、今は違う。俺が変えたいのは、君の未来だ」




セレナは静かに微笑んだ。




「なら、私はあなたと一緒に、この世界を見つめ直す。守るべきものを、自分の目で選びたい」




焚き火の光が、二人の影を重ねていた。




---




その頃、帝都ではクロードの軍が動き始めていた。




「王宮は空だ。皇女も王子も姿を消した。ならば、我々が“正統”を名乗る」




彼の手には、魔核を組み込んだ兵器の設計図。


帝国は、静かに“内戦”の兆しを孕み始めていた。



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