第12話「レオンの決断と覚醒の代償」
──王宮の夜。
セレナの魔力暴走は一時的に収束したものの、彼女の体内にはまだ“封印の残滓”が残っていた。
それは、かつて父王によって施された感情封印魔法の“根”——
完全に解かれていないまま、彼女の深層に潜んでいた。
「……このままでは、また暴走する。次は、命に関わるかもしれない」
レオンは魔導書を閉じ、静かに立ち上がった。
彼の聖魔法では、封印の“外側”には届いても、“核”には触れられない。
必要なのは、精神と魔力の深層に直接干渉する術——
それは、転生者にしか使えない“禁忌の心術”だった。
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「レオン、何をしようとしてるの?」
セレナは彼の気配に気づき、書斎へと駆け込んだ。
レオンは術式を描きながら、彼女に背を向けていた。
「君の魔力を完全に解放する。封印の核に触れて、壊す」
「でも、それは……あなた自身に危険が及ぶかもしれない」
「わかってる。でも、君を守るためなら、俺は“この世界の理”すら超えてみせる」
セレナは震える手で、彼の腕を掴んだ。
「……私のために、そこまでしないで。私は、もう十分に救われた」
「違う。君はまだ“誰かに許されること”を恐れてる。なら、俺がその恐れごと、壊してやる」
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レオンは術式を完成させ、魔力を流し込んだ。
「——心界干渉術エンパシア・ゼロ!」
彼の意識は、セレナの精神の深層へと潜り込んだ。
そこには、幼いセレナが一人、氷の檻の中で膝を抱えていた。
「……誰も、私を見てくれない。感情を持ったら、捨てられる」
レオンは彼女に近づき、そっと手を差し伸べた。
「君を見てる。ずっと、見てきた。だから、もう一人じゃない」
氷の檻が砕け、光が溢れ出す。
セレナの魔力が完全に解放され、封印の核が崩壊した。
だがその瞬間、レオンの体に異変が起きた。
「……っ、魔力が……逆流してる……!」
彼の聖魔法が暴走し、体内の魔力が崩れ始める。
セレナはすぐに彼を抱きしめ、魔力を流し込んだ。
「お願い……戻ってきて。あなたがいなきゃ、私は……!」
その声に導かれ、レオンの魔力が再び安定し始める。
聖魔法と氷魔法が融合し、彼の体を包み込んだ。
──そして、彼は目を開けた。
「……戻った、よかった……」
セレナは涙を流しながら、彼の胸に顔を埋めた。
「ありがとう……私を、救ってくれて」
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その夜、王宮の空には氷と光が混ざり合った美しい魔法の花が咲いていた。
それは、二人の心が完全に重なった証。
だが、遠く離れた帝国の地下では、封印の間に残された魔物の残滓が静かに脈動していた。




