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96.降霊祭2


 俺を置いて真っ直ぐ続く廊下にある部屋のドアの一つへと入ろうとしたルッカが直前で止まった。

 

 ……ルッカ?


 『前に神殿の侵入をしようとした時にいた奴らがいる。うかつに入れない。ううん。むしろもう私たちのの事気付かれているかも』


 やっぱりそういう事かー。そりゃ兄妹の取り巻きが周りにいてもおかしくないよな。

 分かった。せっかくここまで来たんだからやばそうな場所を確認しに行こうぜ。

 最初の目的はそっちだったし。


 『うん……でも』


 なんだよルッカ、珍しく歯切れ悪いな。

 大丈夫だよ。もし俺達の存在がバレてたらきっと出て来るだろ。視覚的には見えないわけだし、すぐに捕まる訳でも追いかけまわされる訳でもなさそうじゃん。

 兄妹あいつらだってこれから降霊祭イベントに参加するんだからすぐに死ぬことはないだろうしさ。


 『でもちょっと気になるのよね。ここから視た感じでは二人ともだいぶ生命力が落ちている感じがするから。』


 う、それは気がかりだな。どのくらいやばそう?


 『今すぐ死にますって感じではないけど、心身ともに疲れ切ってるわよ。まだ若いのに苦労してるわねー。レオなんてまったりだらけきった生活してるから同じ兄妹としてみるとなんだか気の毒になっちゃう』


 ……そうかな。思い当たる事が無くもないけど、ここんとこそんなにまったりしてたかな。いや、今は止めておこうぜ。

 とにかく今死にそうじゃないってことなら、二人はやっぱり後にしよう。せめて降霊際イベントの後がいいと思う。

 今、無理に部屋に押し入るリスクを考えるとさ……礼拝堂ならまだしもこんな所で俺達の存在が見つかったら一悶着起きるのは避けられないだろ。

 大騒ぎを起こしたところで、せっかく神殿ここに集まっている参拝者ギャラリーが居なくなるってのは俺達にとって得策じゃない気がする。

 まだ神殿ここのうさん臭さの原因が何にも分からないのにさ。


 『ふーむ。それもそうね……じゃ、なるべく早めに切り上げられるように頑張りましょ』


 兄妹ふたりのいる部屋の前を後にして、誰もいない廊下を進む。誰もいない。鑑定にも何も引っかからないから拍子抜けする。

 建物の中は塵一つ落ちていないし、床も綺麗に磨かれているのにこんなに人気ひとけが無いのに違和感。まあ、魔法使って綺麗にしているから人手が要らないのかもしれないけどさ。

 それにしても殺風景な建物だな。こんな所にずっといて兄妹あいつらもさぞかし退屈だろう。

 前に、兄貴アンドレが領地に遊びに来たがってたけど、確かにここに比べたら領地の方がのんびりできるし活気もあるし断然いい所だ。


 廊下はどこまでも真っ直ぐで非常に分かり易い。途中途中の部屋をルッカが確認して周ってくれているが、今のところは誰もいないらしく長い廊下をひたすら歩くのみ。


 国王じいちゃんの話と地図によれば、この先にいわば女神様が祀られている本物の祭壇があるといわれているんだ。って事は、結構重要な場所だよな。


 『ふうっ。やっと見えてきたわね。あの大きな扉の向こうでしょうね、行きどまりだもん』


 ああ、やっぱり扉かあ……また開けるときに音が鳴るとまずいんだよなあ。


 『やっぱりここには中に誰かいるわ。うーん……仕方ない。ヴェンゲロフ……使いましょうか』


 まじか……ヴェンゲロフ……今、凍ってるんだけど。

 解凍するのに時間がかかりそうだ。

 

 『そう? じゃ、とりあえず見てくる! もうこの際気付かれたらうまく逃げてくるわ。それでこの扉が開けば、その隙にレオが中に入れそうじゃない?』


 そんなうまくいくかいな。

 ま、最悪の事態に備えてヴェンゲロフは出しておくから頼むよ。凍ってるけどうまく動かしてごまかしてくれ。


 『分かった。じゃ、行ってくるわ』


 ……袋に入れっぱなしにして忘れてたけど、はっきりいって死体をいつまでも持ってるのって気分悪いな。

前にルッカにも言われたけど、いくら悪い奴の死体だからといってこうやって使ってると……人として何か健全な物を失いそうな気もする。

 つーか、単純に袋に入ってる死体ヴェンゲロフを触りたくないだけってのあるんだけどさ。


 『おーい。お待たせ! 中に3人見張りがいるんだけど、ヴェンゲロフと同じ操り人形みたいな感じなの』


 え、それって


 『人間ヒトの抜け殻っていったらわかりやすいかしらね。とりあえず私にも反応はするけど、反応して少し動くだけって感じ。扉の所に2体いて、広い部屋の中に綺麗なクリスタルの祭壇があるんだけど、その後に1体』


 じゃあ、ヴェンゲロフで中に入る必要は……『たぶん、ないわ』 おお、食い気味できたな。

 でもさ、じゃあどうやって俺は中に入ればいいんだ?


 そこなのよ。せっかくここまで来たのにね。

 しょうがないから、兄妹あのこたちが礼拝の為にこのエリアから居なくなるのを待った方がいいかもね。それなら多少音が立っても気付かれないでしょ?


 うーん……そっか。

 兄妹あいつらの様子も見たかったから、一応、イベントには参加するつもりだったんだけど仕方ないか。

 わかった、ディアーナに連絡しとこう。で、俺達はここで待機、か。

 ……ここでのタイムロスは痛いな。


 『ま、ご兄妹の晴れ舞台はディアーナ姉さんに見届けてもらいましょ。はぁ、それにしてもうまくいくかしらね』


 だよな。……やっぱりヴェンゲロフ、使う?


 『ううん、大丈夫。きっとうまくいくわよ!』 

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