55.危機
信じられない事が起きた。
いや・・なにを体験したというよりは全く理解を越えていたのだが・・・・・・
あ・・・ありのまま今起こった事を話すぜ!
俺は蛇を倒したと思ったら、、、、、、レベルが上がったんだ!それも飛躍的に!
それだけじゃない、ボーナスポイント付きだ!!!
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『ステータス』
Lv: 25
Hp:265
Mp: 8/167
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『所持ポイント』
1833253P
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・・・・・・・・・・そんなに強かったのか、あいつ。
うん、強かった。
あいつは絶対に強かったんだ。
あの蛇・・・『気配察知』があったのにあんなに至近距離に近づくまで全く気づかなかった。
いや、そもそも今までだってデカい魔物が近づいてくれば何となく分かった。
主に音で。
だが気づかなかった。
鬱蒼と茂る木々の犇めく中をあんなデカい蛇が這う音も聞こえなかった。
おそらくあの巨大オロチは相当レベルが高かったのだろう。
俺より・・・俺なんかよりも断然強くて気配を全く感じさせかったんだ。
あんなに近づくまで。
血の気が引いた。
あの時ビビって立ち竦んでいたらこっちがやられてた。
火事場の馬鹿力が功を奏しただけだ。
単にラッキーだっただけだ。
こんな小さな山に危険な魔物がいるんだからヤバい奴はまだまだいる。
もしロイ爺が言ってた知能が高い魔族だったら、今頃もっと上手く殺されていただろう。
レベルが上がったのは嬉しい。
だけどただの運だ。もっと強くならなければ死ぬ。
北の山脈の魔物が、もし魔族だったら・・・まずいな。
別の意味でも俺は今危険な状態だし。。。
そう、俺は今・・絶賛MP枯渇中だ。
『重力操作魔法Lv7』を全力で使い、その後も蛇退治や清掃の為に魔法を使ったからだ。
・・・・
巨大オロチから貰ったボーナスポイントを今使わないでいつ使うんだ!
『エキストラスキル』
『MP自動回復』1000000Pを取得。
レベルが上がったのに、MPがないとかマジありえねぇ。
『回復魔法Lv6』『重力操作魔法Lv7』は有能だが、
レベルに見合ってないスキルだった事は認める。
だからなんだ、それなら使えるチートを取ればいいだけだ!
だが、残りのポイントは温存する。
まだ、何があるか分からない。
10日以内にサクッと帰れる保証がない。
王都に行く事になるかもしれない。
もしそうなったら、ディアーナの為に『偽装』を取りたい。
「ちょっと、近いわよ! ぼんやりしてないで進んで!
臭いんだから、あんまり近づかないで」
「ごめんっ」
いけね、ディアーナに怒られて気がついた。
現在北の山脈の麓を馬で移動中。
蛇騒動の後、掃除に洗濯としていたらもう野営どころではないとまだ夜中だというのに暗闇の中、山を降りる事になった。
ずっとディアーナには文句を言われ続けている。
せめて『回復』して詫びの一つでもしたいのにMPが枯渇と、
最悪のコンディションだ。
レベルとポイントに気付いて『MP自動回復』を勢いで取ったから、今は半分位戻ってるけど。
さすが100万もする『スキル』なだけある。回復が早いぜ。
MP回復を更に促進させる為に馬に乗りながらもずっとパンとトカゲ肉を頬張り続けて数時間。
北の山脈、カシニルナ山脈は驚くほど大きい。雲に隠れて見えない頂上を持つ数千メートル級の山が幾つも連なっている。その麓を山道に沿って進む。
ボン爺によれば『北の祠』とはナリューシュ王国側から山に入る時に、無事を祈る為に造られた神殿の無人派出所みたいなものらしい。
仮にも”神殿”に魔物が棲みつくとか・・本当にこの国の神には御利益があるのだろうか。
祠までの行程を『マップ』で確認しているが、あと1〜2時間ぐらいかかるな。
『あの』
ん?
『あの、旅の方』
ん??
耳元で声が聞こえる。
鈴の様な小さく高い心地よい声だ。
だけど周りを見ても何もいない。
『私が見えないのは当然です。私は死んでいるのですから』
は、・・・はぁ!?
『私の体は、昔・・・あの大蛇に飲まれ無くなりました。
ですが魂は囚われたまま、どの位の年月が経ったのか分かりません。
貴方が大蛇を倒してくれたから、私は今貴方の持つオーブの中に魂を移し
こうして話しかけているのです。』
えっ? ・・・・・・・・いいよ! 成仏してよ!
『そう言わずに。ああ見えてあの大蛇は識者でした。
この付近の情報が絶えず入ってきていたのです。
貴方達一行の動向も山に入る前から知っていたのです。
殺されるとまでは思わなかった様ですが。』
話がみえないし怖えぇよ。
なんで成仏しなかったんだよ。
『怖がらないで下さい。私は貴方にお礼がしたかったのです。
外に出して貰ったお礼を。
貴方はレオン・テルジアですね。
今すぐに馬を走らせるのです!
ガルム・テルジアという人物が極めて危険な状態です。
同じ名字ですもの、きっと身内なのでしょう?』
へっ?
なんだって?!
『急ぎなさい! 早く!
間に合うか間に合わないかそこまでは私には分かりません。
もし大切な人なら、とにかく急いで!』
「・・ボン爺! 馬を走らせよう! 父上が危ないんだ!」
「なんだと? なぜ分かる!?」
「説明は難しいけど、・・オーブだよ!
あのオーブが教えてくれたんだ!」
「・・・分かった! ダニエル、両足で馬の腹を思い切り蹴るんだ。
馬から振り落とされるなよ! 急ぐぞ!」
「分かっ・・! うっうわっっっ」
ボン爺の言う通りにすると驚いたアイリーンが突然走り出し俺の体は宙に浮いーーー
「ほらっ何してるの!もっと身を屈めなさい!」
たところを横付けしたディアーナが体を押さえてくれた。
「ディアっ!ありが」
「悪いけど、先に行くわ!
ダニー、足手まといのあなたは後から来なさい!」
ディアーナの後ろ姿が遠のいていく。
・・・・・・・・・・・
・・・ふっざけんな!
俺はもう一度 馬を蹴ると、必死でしがみつき2人の跡を追った。




