エピローグ
少し経って、『The Earth』に衝撃的なニュースが流れた。
運営が、違法行為を行ったプレイヤーのアカウントを凍結したと発表したのだ。
個人のIDこそ隠されたが、キャラクターの名前は公開され、その中には、あの騎士団の団長アレックスを初めとした、幹部勢の実に七割の名前が羅列されていた。
同時に、ギルド『天馬の騎士団』の活動停止、専用エリアが剥奪され、騎士団は、この『The Earth』から消滅した。
同時に、以前は否定されていたはずの、騎士によるPKや略奪などの行為が、掲示板・SNS等で一気に拡散された。騎士団に正義などなかった。すべては、嘘だったのだと。
違法行為の温床であった騎士団の消滅により、麻薬やバグ武器の蔓延は防がれた。だが、すべてが消え去ったわけではない。今までよりも相場が跳ね上がったが、それでも、その違法品を手に入れようと目論む者は後を絶たなかった。
だから、今日も、掲示板は動く。
『B武器使ってたら、突然黒ずくめの男にPKされた。むかつく。誰か、あいつ殺してほしい。名前は――』
彼は、恐れない。
この『The Earth』を汚す連中を、許さない。それらを排除するために、ひたすらに剣を振るう。
悪しき深みにその名を沈め、輝く正義に背を背け、その目に光を宿すことなく、歪な闇を我が身へ宿し。
すべては、ただ、愛のために。




