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第33話 邪神と遺跡

 エマニエルはあれから元素魔法について、老婆の司書の厳しい視線を気にしながら、声のボリュームを小さくして長々と話した後、ようやく遺跡のことについて話し始めた。魔法も確かに興味深いものではあるのだが、様々な要因で使いこなすのが難しく、転生前も今も習得を断念しているのだ。


「ええと、元素魔法についてはとりあえずここまでにしておきますね。それでは次に、魔法は遺跡と深い関係がある理由についてですが、それは現存する遺跡の多くが邪神の手によって、世界を不毛の砂漠に変える、強力な呪いの発生源にされている問題にあります。この問題を解決するには魔法の力が必要不可欠なんです」


 老婆の司書が再び咳払いを一つした。さすがに長話をし過ぎた。エマニエルはまたもや恥ずかしそうに本で顔を隠しながら、その場に座り込んでしまった。彼女の魔法と遺跡に対する情熱は素晴らしいものなのだが、かといってここまで周囲が見えなくなるのは問題だと思う。まあ、今回は途中で止めなかったオレも悪いんだが。


 これは後で知ったことなのだが、彼女の説明を補足すると、遺跡が呪いの発生源になっているのは邪神の元素魔法が原因であり、その原因を取り除くには同じ元素魔法の力が必要なのだ。ちなみに、当たり前の話ではあるのだが、邪神も遺跡を攻略されないように、大量の魔物と罠を配置している。


「そろそろ借りる本を決めて、近くの店で昼食にしないか。オレはこの前、みんなで行ったあの店が良いな。何だったかな。ほら、魚とか貝が入ったスープが看板メニューの、あの店。美味しかったから、また行きたいな、と思ってたんだよ。どうかな?」


 オレは話題と雰囲気を何とかして変えようと、しどろもどろになりながらも必死に言葉を紡いだ。すると、エマニエルはゆっくりと本を下げてオレの顔を見上げた。まだ少し気まずそうではあるが、多少は元気を取り戻せたようで、立ち上がってすぐに何冊かの本を選んで手に取った。


「確かにあの店ならここからすぐ近くにありますね。分かりました。今すぐに本を借りる手続きをしてきますので、ヒロアキさんは何を注文するか考えておいて下さい。いえ、やっぱりもうちょっとだけ待っていただけませんか。ええと、この本と、この本も借りたいな」


 エマニエルは受付に行こうとしたところで立ち止まり、本棚の前まで戻って再び本を選び始めた。さすがにこれ以上はここで時間を使いたくなかったので、オレは申し訳なく思いつつも、本棚から強引に彼女を引き離し、受付で本を借りる手続きを済ませた。


 図書館を出た後にそのことでエマニエルから文句を言われたが、昼食にスイーツを一品、オレの金で奢ると約束したら、彼女はあっさりと機嫌を良くした。意外と現金な一面もあるのだなと、オレは懐を気にしながら思った。どんな高いスイーツを奢らせられるのか、内心で戦々恐々としていたのは言うまでもない。


次回は10月22日に公開予定です。

ツイッターもよろしくお願いします!

https://twitter.com/nakamurayuta26


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