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第24話 ゴブリンの群れ(1)

 翌朝、オレ達はゴブリンの小規模な群れを討伐するため、アンカラッドの西に存在する森林の中にいた。アンカラッドからここまで来るのに馬車に乗って約一時間、次に森林の中を歩いてさらに約三十分かかっている。なので、明らかに体力に不安があったエマニエルは、すでに疲れ切ってしまっていて地面に座り込んでいた。


「エマニエル、あまり無理はしなくて良い。みんな、ここで一回休憩しよう。今回の敵はゴブリンの群れ。小規模な群れとはいえ、なるべく万全な状態で戦うようにするべきだ。アンヌ、君はどう思う?」


 今回の依頼に助っ人として同行してくれているアレックスが、エマニエルの隣に座ったままアンヌにそう聞いた。


 それに対してアンヌは「そうするべきだろうね。ジャック、私と一緒に周囲を警戒するよ」と、クロスボウをいつでも使えるように準備しながらそう言った。アンヌから指示を受けたジャックも、「言われなくても分かってるっての」と言いながら、茂みに誰かが隠れていないか眼光を鋭くした。


 オレ達が今いるこの森林は、アンカラッドと西方の開拓前線を繋ぐ主要な街道、北西の山脈からアンカラッドへと流れていく河川、この二つに挟まれる形で存在している。今回の依頼で討伐対象となったゴブリンの群れは、数週間前からこの森林を縄張りにして、西方への街道を通行しようとする人間を襲撃していた。


「オレ、こんなに大きな依頼を受けるのは初めてッス。センパイは?」「俺も久し振りだな。開拓前線とは違ってアンカラッド周辺は、魔物が少ない地域だからな」


 アレックスと同じ開拓者チームに所属している若い二人の男が、周囲を警戒しつつも雑談しているのが聞こえてきた。この二人もアレックスと同じ、今回の依頼の助っ人だ。アレックスによると、『鋼の戦士』というのが彼らのチーム名らしい。


「ヒロアキ、あっちの方からゴブリンの群れが近付いてきているから、今すぐ戦いの準備をするんだよ。ほらほら、敵はもうすぐそこまで来ているんだから、早く早く!」


 アンヌが音を立てないように注意しながら、オレの傍まで小走りで近付いてそう言うと、助っ人の若い二人の男がいる場所とは逆の方向を指差した。オレは剣を鞘から抜きつつ、アンヌが指差した方向をよく見てみると、不自然な揺れ方をしている茂みの隙間からゴブリンの姿が見えた。


 ゴブリンとの距離はここから約三十メートルといったところだろうか。茂みに隠れているので他にもゴブリンがいるかは分からないが、幸いなことにオレ達の存在にはまだ気付いていない様子だった。


 ゴブリンが茂みに隠れながらこちらに向かってゆっくりと進んでいる間、敵の正確な数を確認した後に効果的な奇襲攻撃をするために、アレックスとアンヌが指示した位置にそれぞれ身を隠した。急速に緊張が高まっていく中、オレは戦いの時が近くなってきているのを感じていた。


次回は6月18日に公開予定です。

ツイッターもよろしくお願いします!

https://twitter.com/nakamurayuta26


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