第154話 ご神木の中で
奥の間への扉を開け、一本の通路を進んだ先には、不思議な苔が光を放つ、道が縦横無尽に分岐する洞窟があった。一つ目の分岐点では、下へ垂直に落ちる道の前でジャックが慌てて立ち止まり、二つ目の分岐点では、頭上の道から落ちてきた水滴にエマニエルが叫んだ。
「アンタ達、はぐれるんじゃないよ。迷子になっても、探しに行く余裕なんてないからね。それと、くれぐれも足元には気を付けるんだよ」
アンヌが洞窟の地図をメモ帳に書き込みながら、チーム全体に指示を出していく。キャロラインが不在でも、ツバキという本来はチーム外の者がいても、アンヌの指揮の下、チームは迷宮のような洞窟を淀みなく進んでいく。
よほど焦っていたのか、『星の円卓』の誰かが真新しい足跡を残していたので、オレ達はそれを辿って迷うことなく奥へ奥へと進んで行けた。どうやら、足跡は左右に蛇行しながら上へと向かっているようだ。
キャロラインが後を追いやすいよう、時々目印を残しながら進むこと数十分、吹き抜けのある広い空間に出た。ここで少し休憩した方が良いとアンヌが判断したので、十分ほど休憩することになった。
腰を下ろして、周囲をじっくり観察して、ようやく確信した。オレ達が通ってきた道、今ここにある空間、全てがご神木の内部なのだと。この考えはスケールが大き過ぎて、さっきまでは信じられなかったのだ。
しかし、だとしたらさっきまでの道とこの空間は、どうやって形作られたのか。その答えは、がりがりと木の繊維を削る音と共に、頭上から、周囲から、じわじわと迫ってきた。オレ達は休憩を中断し、再び武器を手に取った。
そいつらは白アリのような生物だった。ただし、全長約一メートルの化物でもあった。その数、およそ十数体。いや、暗闇でよく見えない分、もっといるだろう。鋏のような部位が口の周りに付いていて、それが開閉される度に不穏な音が立てられる。
「こいつら、『プラントキラー』です。樹木や草花を食い荒らし、生態系を破壊する可能性がある、第一級優先駆除対象に指定されている魔物です。通ってきた道もこの空間も、きっとこいつらが食い荒らしたことで出来たんです。でも、何でご神木に――!?」
エマニエルが最後まで言い終わらないうちに、プラントキラーAが彼女に襲いかかった。それに対してオレは『鉄壁の盾』を発動し、プラントキラーAの攻撃を阻止しにいった。鋏のような部位が盾の表面をわずかに削った。
執拗にオレに食らいつくプラントキラーAの頭に、オレは『落雷斬り』の一撃を叩き込んだ。こいつらの外殻は意外と脆く、割れ目から緑色の体液が流れ出て、プラントキラーAは崩れ落ちて動かなくなった。
しかし、いかんせん数が多過ぎる。一体倒したところで、後から後から増える一方だ。危険を承知の上で、エマニエルに炎の元素魔法を使わせるか考え始めた、その時だった。キャロラインが、武装したエルフ達と共に、オレ達に追いついたのは。
次回は2月1日に公開予定です。
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