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第153話 もしもと今

「この籠みたいなところにブルースライムの核を入れて、文字を打って直接刻む仕組みのようですね。マキナの言う動力源は、間違いなく魔力だと思います。改造を担当したのは、おそらくさっきのドワーフでしょう」


 改造タイプライターを分析しながらエマニエルはそう言った。そのとなりでマキナも頷いている。今のエマニエルの表情はまるで能面だ。感情というものが全く見えない。いや、努めて見せないようにしている。


「私は中庭に戻ってこの機械を保管しておくよう、村の人達に頼んでおくわ。犠牲になった子供達のことも報せないと。貴方達は先に奥の間へ向かってちょうだい。後で私も合流するわ」


 キャロラインは改造タイプライターを手に、魔法研究室を足早に出ていった。残されたオレ達もすぐに後を追うように出た。それから奥の間へと急行したが、今度は妨害されることなく、あっさりと奥の間へと続く扉の前に着いた。


「君からもらった地図によると、この先が奥の間か。オードリーはそこにいると思うかい、ツバキ?」


「ええ。それと、アーサーもね。今のあいつらにとって、あそこは秘密を隠せる最後の場所だから。黄金の森でしてきた数々の悪行には、一体どんな意味があって、どうつながっているのか。残った謎の答え合わせをして、あいつらの真の目的を阻止する!」


 ツバキはそう宣言すると、力強く奥の間への扉を押し開けた。扉が開いていくのを見ながら、オレは奥の間がどんなものか今更だが想像してみた。厳かな祈りの場か。それとも、華やかな宴の間だろうか。


 しかし、実態はオレの安易な想像とはかけ離れたものだった。待っていたのは広間ではなく一本の通路で、さらにその先には仄暗い空洞が、ツル草を舌先のように覗かせ、大きく口を開けて待ち受けていた。


「――行こう、みんな。今度こそ、『星の円卓』を止めるんだ。これ以上、あいつらの好きにはさせない――!」


 オレは一人、先に通路を突き進む。初めて『星の円卓』を知ったあの日から、その存在を意識しなかった日はなかった。もし、転生してから最初に出会ったのがアンヌではなくアーサーだったら、一体どんなオレになっていたのだろう。


「待てよ、焦り過ぎだぜ。こういうのはまず俺だろうが。お前もだぜツバキ。腕が立つのは分かっている。だからこそ、一番後ろから全体を見てカバーしてくれ」


 意識せず先走っていたオレの肩を背後から掴み、ジャックが代わってオレの前に出る。そこでやっと、オレは自分の気が逸っていたことに気付いた。ツバキもオレと同じようなことをしていたことにも。


 ジャックが空洞の一歩手前で先の様子をうかがっている。それを何となく落ち着かない気持ちで見守っていると、アンヌがぽんと優しくオレの背中を叩いてきて、寄り添うようにとなりに立ってくれた。


次回は1月25日に公開予定です。

ツイッターもよろしくお願いします!

https://twitter.com/nakamurayuta26


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