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第149話 告発

「どうして、どうしてなの。ここも運気が下がっている。こんなに大きく下がるなら、もっと事前に分かるはずなのに、何で感知出来なかったの!?」


 騒然とするこの場にマリアンがただ一人で、蒼白な顔に汗を伝わせつつ、息を切らしながら走ってくるなり、周囲を見渡してそう叫んだ。突然の彼女の登場にも驚かされたが、それよりも彼女の言葉でより騒然としてきた。


 そして、枯れた茂みに隠れていた謎の存在も姿を見せた。――騒然としていた場が静まり返り、液体が流れる音だけが響く。地面に広がるのは独特な半透明の青色。そう、近くに川があるわけでもないのに。


『それ』は、ブルースライムに似ていて、けれど、より液体に近い、別の何かだった。だが、その場をより戦慄させたのは、『それ』が人間でいうところの『口』のような器官を生成し、次のような言葉を発した時だった。


「タ、ス、ケ、テ――ママ」


 誰かが甲高い叫び声を上げた。あまりにも高い声だったので、おそらく誰かの名前だろう、くらいしか分からなかった。しかし、名前を正確に聞き取れたらしいとあるエルフの男性が、戸惑いつつもあることを口にした。


「ちょっと待ってくれ。確かその名前は、連続失踪事件の被害者リストにもあったよな!?」


 エルフの男性が言い終わった後に、確認するかのように周囲を見渡した。彼の周りにいるエルフ達も困惑しつつも、その多くがあいまいに頷いた。


「何を言っているの。明らかに私の息子の声だったじゃない!」


 とあるエルフの女性がヒステリックにそう叫んだ。さっき名前を叫んだ人のようだ。彼女は周りの制止を振り切って、不気味なブルースライムもどきに近付いていった。すると、『それ』は今度は『手』のようなものを生成した。


『それ』の手は近付いてきたエルフの女性の片足を掴み、すさまじい勢いで引っ張っていった。そして、彼女は片足から両足、それから下半身まであっという間に、『それ』に飲み込まれてしまった。


「まずい。核を、核を破壊するんだ!」


 しかし、オレがそう言ったところで、誰も武器を持っていないし、かといって魔法を使えば、彼女を巻き込む恐れがある。そうして誰も手が出せずにいたが、『それ』は何故か彼女から離れ始めた。


 エルフの女性は戸惑いつつも、その場から離れようとしなかった。目を離そうとしなかった。すると、『それ』はずるずると一か所に集まり、縦に伸びていき、やがてエルフの子供に近い姿へと変わった。


「ママ。ゴメン、ナサイ」


「ああ、やっぱり貴方だったのね。どうして、どうしてそんな姿になってしまったの!?」


「シンデンノ、オクデ、ワルイヒト、ニ――」


 半狂乱の母の目の前で、子は再び理性を失い、今度は抱きつくように襲いかかった。だが、母に触れるよりも前に、エマニエルの魔法によって、核を真っ二つにされて動かなくなった。


 母は子を抱きしめようとしたが、人の形を保てなくなった子は、破壊された核だけを遺して、母の腕の間をすり抜けて地面に吸い込まれた。母は何度も子の名前を叫びながら、地面を爪が割れそうな勢いで掘り返したが、何も出ることはなかった。


次回は12月28日に公開予定です。

ツイッターもよろしくお願いします!

https://twitter.com/nakamurayuta26


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