表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
148/156

第148話 成長と残骸

 ツバキがエルフの子供達に囲まれ、あたふたとしているのを、微笑ましくオレは見守っていた。武装して来なかったのは正解だった。おかげで心の距離の縮まり具合が早い。ツバキも同じ意図だったのか、彼女も武装していない分、いつもよりとっつきやすい雰囲気だった。


「ヒロアキ、いいえ、誰でも良いから、見ていないで助けてくれないかしら」


 困り果てた様子のツバキを見て、もうそろそろ助け舟を出そうと、オレは苦笑しながら立ち上がった。その時だった、ロビンとマキナがエルフの子供達に駆け寄って行ったのは。子供達の興味は二人に移った。


「みんな、マキナお姉さんがまた外の世界のお話をしてくれるよ。さあ、こっちに集まって!」


 ロビンの呼びかけに子供達が動き、ツバキから離れていく。解放されたツバキはすっかりくたくたになっていた。マキナは子供達の注目が自分に集まっているのを確認してから、ゆっくりと話し始めた。


「そうですね、今度は港町アンカラッドのお話をしましょう。潮風が気持ち良くて、色んな美味しい料理がある、とても素敵な町なんですよ」


 マキナが優しい声でお話を進めていくほど、子供達は夢中になって瞳を輝かせていく。外の世界との出入りが極端に制限されたこの村では、子供達にとって最高の娯楽になるのだろう。


「わあ、何度聞いてもやっぱりすごいや。ねえ、マキナお姉さん。僕が大きくなったら、『暁の至宝』に入れてよ。それでね、外の世界のことをもっと知って、他のエルフやハーフエルフのみんなにも、外の世界に興味を持ってもらえるように頑張るんだ!」


「そうなんですか。でしたら、まずは開拓者にならないといけませんね。ちゃんとお勉強をしないといけませんよ。開拓者として活躍するには、たくさんの知識が必要なんですから」


 分かりましたね。マキナに諭されるようにそう言われ、ロビンは唇を尖らせた。子供達の間に自然と笑顔が広がる。子供達にお話をするマキナを見ながら、オレは彼女の成長を実感していた。


 ブルク・ダム遺跡で初めて彼女と出会った時、彼女はまるで赤子のようだった。ところがどうだ、今や疲れ果ててオレの傍で寝ているエマニエルよりも、大人びて見えることさえある。


 このままもう少しの間だけ、こうして見守っていたい。けれど、状況がそれを許してくれない。早枯れ現象がより悪化しているのが判明している今、すぐにでも切り上げさせて対応するべき、なのは分かっている。分かってはいるのだが。


 新しい何かが生まれようとしているこの瞬間を前に、いつどう口を挟もうかオレは迷った。だが、脅威は予想を遥かに超える早さで牙を剥いた。周囲の草木が突然、急激に成長したかと思えば、あっという間に枯れ果ててしまったのだ。


 それだけじゃない、枯れた茂みが不自然に揺れた。ちょうどオレの背後だ。オレは大慌てで後ろを振り向いた。そして、見つけたんだ。この村を、森を蝕む、悪意の残骸を。


次回は12月21日に公開予定です。

ツイッターもよろしくお願いします!

https://twitter.com/nakamurayuta26


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ