第146話 真実と悔恨
虹色の欠片がツバキの手の中で妖しく輝いている。ツバキはそれを半ば布で包んで持っている。直に触れただけで正気を失う恐ろしい物を、どうして彼女は持ち歩いているのか。
「この欠片の真の名は『神の権能』。いえ、正確にはその一部ね。『星の円卓』は世界各地に散らばるこれを、まさに血眼になって探し回っているわ。それには大きな理由があるの。何だと思う?」
当然、オレは首を横に振った。オレの反応を見たツバキは、苦笑とも自嘲ともとれる複雑な笑みを浮かべた。
「正解は、『ミッドヘイムの神様になるため』、でした。どう、信じられないでしょう。――私は、『星の円卓』は、それが可能であることを、ずっと前から知っていたわ」
「神様に、なる。ずっと前から、知っていた?」
理解が追いつかない。この子は何を言っているんだろう。復唱してみても分からなかった。
「二年前の『凶兆の流星群』、あれは『神の権能』が砕け散って発生したの。だから、欠片はその一部。でも、たとえ一部でも、大きな力を得られる。その上、全ての欠片を集めたら、『神の権能』は本来の力を取り戻す」
ツバキの口から次々と明かされる真実に、オレは頭がくらくらしてきた。それでも、オレは迷わない。オレは、立ち止まらない。彼女もそんなオレを見て話を続ける。
「名前の通り『神の権能』は、持つ者に神としての力を与えるわ。世界を思うがままに出来る力をね。そのことを知ることが出来たのも、欠片の力があったからこそなの。ただ、リスクもあるわ」
「リスク?」
「ええ、そうよ。欠片は持つ者に多くの、世界の秘密に関する知識を与えてくれる。けど、あまりにも知り過ぎると、漆黒のローブと黄金の仮面の死神が、どこからともなく現れて殺しにくる。それがさっき言ったリスクよ」
オレはベルンブルクでの出来事を思い出した。『永遠の炉火』を巡る争いの最後に現れ、『星の円卓』幹部のカネキを一瞬で葬った謎の人物。あの闇の元素魔法を超える魔法は、未だに見たことがない。
「それでも、『神の権能』を求めて、多くの人間が死んでいったわ。当たり前よね。望んでいた自分が、世界が手に入れられるもの。私も、完璧な自分になって、周りに受け入れられたかった。過程に問題があっても、神にさえなれれば――」
ツバキはそこまで言ってまた口を閉ざした。悔恨の念が彼女の表情からにじみ出ている。
「でも、『星の円卓』幹部として、欠片の争奪戦をしている内に、気付いたの。もしこのまま神になれたとしても、私はきっと、私自身を許せなくなるって」
ツバキの頬に涙が伝う。彼女は肩を震わせ俯く。オレも自分の足元を見ながら、かつての後悔を思い出した。償っても、犯した罪は消えることはない。風はまだ、木陰を揺らしている。
次回は12月7日に公開予定です。
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