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第三七話 北畠滅亡

▽一五六九年八月、澄隆(十四歳)鳥羽城 


 

 完成した鳥羽城に作った屋敷に、家臣とその家族達が続々と引っ越してきた。

 家臣の家族達からも、綺麗に整備された真新しい家の評判は良い。

 住み心地が良いそうで、俺に会う度に頭を下げ、礼を言ってくる。

 俺は、その度に落ち着かない気持になる。

 差配したのは宗政で、作ったのは領民達だ。

 感謝は宗政と領民達にしてくれ。



 それで、鳥羽城に家臣達を集め、住まわせることによって、伝令にかかる時間と集合にかかる時間が減り、迅速な行動ができるようになった。



 また、予想外の効果として、城に家族も一緒に住むことで、城での物資の消費が増え、物資を運搬する商人たちの往来が活発化し、城を治めている俺の権威が上昇した。



 家臣達の引っ越しも落ち着いてきたある日、光俊から急報が入った。

「澄隆様! 尾張国の織田家が北畠家領内に侵攻してきたと、我が配下の物見からの報告がありました!」



 うん、史実通りに織田信長が北畠家に攻めてきた。

「澄隆様、いかがされますか?」

 それって、北畠家に援軍を出すかってこと?

 史実だと、北畠具教の弟の木造具政が織田家に寝返って、北畠は破れたはず。

 こんな危ない所に、援軍なんて出せる訳がない。



「光俊……。この戦、北畠家が破れる。ここは、九鬼家領内の地固めを急ぐぞ」

「ははっ」



 史実だと確か、木造具政に裏切られた後、北畠具教は大河内城に籠城して、数ヶ月死守するも降伏。信長の次男坊の信雄を養子として迎え入れるはずだ。

「あと、澄隆様。大事なご報告が……」

 光俊は、言いづらそうに話し出す。

「織田家の中に、九鬼嘉隆がおります……。噂によると織田水軍を率いているとのこと」



 俺は、ため息が出そうになるのを抑えた。

 史実通り、嘉隆は信長の家臣となったか……。



 史実だと、織田信長が北畠具教を攻める際、信長の家臣となった九鬼嘉隆は織田水軍を率いていた。 

 織田水軍は、北畠海賊衆を破り、北畠具教の大淀城を海上から大砲で攻撃して陥落させるなど、活躍した。



 史実通りに進むのだとすると、北畠家が降伏した後、九鬼嘉隆は志摩国を海から攻め、志摩国の地頭達を滅ぼすはずだ。



 今のままだと、滅ぼされるのは俺となる。

 この時代でも、同じことが起きようとしている。 



 九鬼嘉隆は俺のことを殺したいだろう。

 普通に考えたら、俺は負ける。

 詰んだかもしれない……。

 今の俺の顔は、相当、暗いだろう。



「光俊、逐次、織田信長の侵攻状況を探ってくれ。最重要事項だ」

「はっ! 物見を増やします! それと……、多羅尾一族の者を数人、織田家に潜入させる手筈を整えました。何とか情報を仕入れてみせます」

 素晴らしい、光俊。 

 俺は、光俊に頷きながら、これからの思案をした。

  




 織田軍は、北畠具教が篭城した大河内城を二ヶ月近く攻め続け、北畠家を降伏させた。

 信長は、北畠具教の養子として、信長の次男坊の信雄を送り、北畠具教を三瀬館という所に隠居させた。

 実質的には、北畠家は、織田信長の属国扱いになった……。

 はぁ、全部、史実通りに動いている。





 九鬼家の隣の南伊勢が、キナ臭くなってきたところで、吉報が入った。

 悪いこともあれば、良いこともある。

 俺が是非とも欲しかった人材のスカウトに、また成功したのだ。



 その人材だがまだ八歳で、刀鍛冶をしていた父親は既に亡く、母と共に、叔父がいる津島に肩身を狭くして住んでいた。

 宗政に命じて、探してもらったところ、その子供は、津島の妙延寺で読み書きや武芸を習い、神童として有名で、すぐに見つかった。



 早速、宗政にスカウトを命じた。

 母親を鳥羽城の女中として雇い、子供を小姓として採用すると伝えると、母子一緒に志摩国に引っ越してくれることになった。



………………



 それで、早速、宗政に連れてこられた母と子に会うことにした。 

「俺が澄隆だ。遠くまでよく来てくれた」

 俺が、声をかけると、母親が代表して恐縮そうに話し出した。

「い、伊都と申します。こ、この度は、困っている私たちにお声かけ頂きありがとうございます。誠心誠意、勤めさせて頂きます」

 母親の年はまだ二十代後半ぐらいか。

 鼻筋がスッと綺麗で、惹きつけられる透き通った瞳が印象的なクールビューティーだ。

 子供がいるようには見えない。



「あ、ああ、よろしく頼む」

 俺は、不器用に受け答えをすると、伊都は少し涙目になりながら深々と頭を下げた。

 


 俺は隣に座っている子供も見る。

 史実から、なんとなく虎のイメージがあったが、見た目の第一印象は、面長で両目の間隔が広く、馬顔だ。

 ただ、母親似で、鼻筋が通っていて、イケメンではある。

 身嗜みは、子供なのに着崩しのキの字も許さないかのようにピシッとしている。



 その子供の名前は…………。

 加藤清正だ。

 俺が知っている限り、思いっきり武闘派だが、領内統治にも成果を出した人物だ。



 シャープで涼しげな目元の清正に声を掛ける。

「俺は、将来有望そうな子供を探しては、声をかけている。清正も内々に調べさせてもらった。神童として有名らしいな。小姓として、これからはよろしく頼むぞ」

「はっ! まだまだ未熟者ですが、よろしくお願い致しまするっ!」 

 清正は、よく通る声で堅苦しく答えた。

 行動も一つ一つの動きがキチキチしていて几帳面な性格のようだ。

 キチキチ清正だな。



 俺は、満足そうに頷く。

 現在は、小姓として、賤ヶ岳七本槍の岸嘉明と福島正則を採用としている。

 加藤清正で三人目だ。



 賤ヶ岳七本槍で、どうしても欲しかった清正を手に入れることができて、嬉しくてニヤニヤが止まらない。

 俺は、母の伊都と清正を近くに呼び、握手した。



 伊都は戦巧者が40をこえていて、ビックリした。

 清正の強さは母親似なのかもな。

 ちなみに、キチキチ清正のステータスはこうだった。



【ステータス機能】

[名前:加藤清正]

[年齢:7]

[状態:良好]

[職種:無し]

[称号:無し]

[戦巧者:8(90迄)] 

[政巧者:13(73迄)]

[稀代者:拾]

[風雲氣:漆] 

[天運氣:捌] 


~武適正~

 歩士術:玖

 騎士術:拾

 弓士術:漆

 銃士術:伍

 船士術:陸

 築士術:捌

 策士術:捌

 忍士術:壱


〜装備〜

 主武器:無し

 副武器:無し

 頭:無し

 顔:無し

 胴:木綿の小袖(弐等級)

 腕:無し

 腰:木綿の袴(弐等級)

 脚:木綿の足袋(弐等級)

 騎乗:無し

 其他:無し



 うんうん!

 戦巧者が90をこえ、稀代者が拾なのは、島左近に続いて二人目だ!

 現在の戦巧者の数値は低いが、左近の変態さを考えると、将来は恐ろしい強さになることだろう。

 九鬼嘉隆に滅ぼされそうな状態で、気分が暗かったが、気持ちが盛り上がる。



 清正は、まだ七歳。

 将来は一軍を任せたいな。

 そのためには、今を生き残らないと。

 織田水軍が攻めてくるのを前提に準備を急ごう。



―――――――status―――――――


[名前:加藤清正(かとう きよまさ)]

[年齢:7]

[状態:良好]

[職種:無し]

[称号:無し]

[戦巧者:8(90迄)] 

[政巧者:13(73迄)]

[稀代者:拾]

[風雲氣:漆] 

[天運氣:捌]

 

 ~武適正~

 歩士術:玖

 騎士術:拾

 弓士術:漆

 銃士術:伍

 船士術:陸

 築士術:捌

 策士術:捌

 忍士術:壱


〜装備〜

 主武器:無し

 副武器:無し

 頭:無し

 顔:無し

 胴:木綿の小袖(弐等級)

 腕:無し

 腰:木綿の袴(弐等級)

 脚:木綿の足袋(弐等級)

 騎乗:無し

 其他:無し



 面長の馬顔だが、見た目はカッコイイ。      

 口の中に拳を入れることができるほど、大きく口を広げられるのが自慢。

 とんでもなく几帳面で、何でもピッタリキチキチ揃えないと気が済まない性格。

 真逆の性格の福島正則とは、会ってすぐに喧嘩になった。


―――――――――――――――――

これから、織田信長の家臣となった九鬼嘉隆との戦いが始まります!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 九鬼嘉隆との戦い、楽しみ。 海戦になるのかな?
[良い点] 賤ヶ岳七本槍、三人目ですね! 四人目はあるのでしょうか!?
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