第三三話 防具開発
▽一五六八年十二月、澄隆(十三歳)鳥羽城 禁秘ノ部屋
光俊にお願いした兵器開発だが、光俊から、まずは炮烙玉作りが成功したという報告があった。
さすが、多羅尾一族、火薬作りも得意だったが、兵器作りもお手のものだった。
焼夷弾タイプも手榴弾タイプも数を増やしている。
ただ、もう一つの兵器は難しいようだ。
鉄の大筒作りは、芝辻理右衛門のおかげで、衝撃への対策にはまだ改善の余地があるが、なんとか形にはなった。
光俊には、大筒を渡して、兵器の試行錯誤を繰り返してもらっている。
それで、今日は光俊に、防弾チョッキの進捗具合を確認するために、禁秘ノ部屋に来てもらった。
「光俊、兵器開発中にすまない。以前、お願いしていた絹織物の進捗具合はどうだ?」
光俊は、大きく頷く。
「はい、紡いだ生糸のうち、しなやかで強いものを選び、様々な方向から織り上げて、どの織り方が矢を通さないか、確認をしておりました」
光俊は、懐から、ハンカチサイズの生地を出した。
「本日は、試作品をお持ちしております……。こちら、蜘蛛の巣のように織っておりまして、これが一番、矢が貫通しませんでした。今は、この蜘蛛の巣織りを採用して、生地の量産を図っております」
「そうか……この生地を重ねて、火縄銃の弾にも耐えられる織物を作るということか」
光俊が笑顔になって答える。
「はい、生地を何層、重ねたら良いのか、まだ検証中ですが、出来ましたらお持ち致します」
光俊が持ってきてくれた生地は、美しい光沢があって、綺麗だった。
確かに伸びがあって、丈夫な生地だな。
刀で斬られても、ある程度は耐えられそうだ。
俺は、この生地を見て、あることを思い付いた。
「そうだ、まずは、この生地で作ってもらいたいものがある……。できるだけ、闇夜の中でも気付かれない色、そうだな、藍色に染色してほしい」
俺は、手元にある紙で、イメージ図を描いて、光俊に手渡す。
相変わらず、自分で書いた絵は絶望的な下手さだ。
光俊は、そのイメージ図を見ると、数秒、固まっていたが、顔色を変えず、畏まりましたと答えた。
▽
続いては、スカウト結果だ。
宗政が、また、俺が欲しかった人材のスカウトに成功した。
それも二人だ!
一人目。
近江国の大原観音寺で、小僧として修行中だったため、九鬼家の小姓として優遇すると宗政がスカウトしたところ、二つ返事で了解したそうだ。
宗政に聞くと、お寺でも、超秀才小僧として既に有名だったらしい。
その人物の名前は……石田三成だ。
豊臣秀吉のもとで、事務方の中枢を担った人物で、関ヶ原の戦いで破れて、処刑されるまで、豊臣家を裏切らなかった。
忠誠心は高いだろう。
秀吉に取られる前にスカウトできて良かった。
評定部屋で待っている三成に会いに行くと、とっても華奢な子供が座っていた。
そういえば、大人になった時でも、五尺を下回るぐらいの身長だったらしいな。
見た目は、まだ、可愛い子供だ。
目が大きく、剃り上げた頭も青々しい小坊主だな。
頭が尖っている。
とんがり三成だな。
背筋をピンとして胸を張っている。
俺は、上座に座って、三成に話しかける。
「俺が澄隆だ。これから小姓として働いてもらうが、親と離れて暮らすことになる。寂しくはないか?」
「はい、わたしは次男なので問題ないです! そんなことより、読み書きが得意なわたしは、何をすればいいですか!?」
寂しいか聞いたら問題ないか……。
それに、聞いてないのに、自分から得意なことをアピールするとは。
第一印象は、芯は強そうだが、なんとなく、冷たいというか、ギラギラしているというか。
俺は、何て返答しようか悩んだが、事務的な話をすることにした。
「三成、まずは、俺の小姓として慣れてくれれば良い。読み書きが得意なんだな?」
「はいっ! それに、そろばんも得意で、計算の早さなら誰にも負けません。小姓として力を尽くしますっ」
頭は良いのだろう。
自分の売り方も分かっている。
頭が回る分、何となく年齢よりマセているのが気になるが、宗政の補佐になってくれたら良いな。
「よし! 小姓をしながら、宗政に色々教えてもらえ」
さあ、恒例の握手をしよう。
俺は、三成を呼んで、握手をした。
【ステータス機能】
[名前:石田三成]
[年齢:8]
[状態:良好]
[職種:小僧]
[称号:無し]
[戦巧者:3(58迄)]
[政巧者:14(92迄)]
[稀代者:玖]
[風雲氣:玖]
[天運氣:壱]
~武適正~
歩士術:陸
騎士術:陸
弓士術:伍
銃士術:伍
船士術:伍
築士術:捌
策士術:玖
忍士術:伍
〜装備〜
主武器:無し
副武器:無し
頭:無し
顔:無し
胴:木綿の小袖(弐等級)
腕:無し
腰:木綿の袴(弐等級)
脚:木綿の足袋(弐等級)
騎乗:無し
其他:無し
う、うぉっ!
政巧者の数値が宗政以上か。
内政で有名な武将だし、数値の高さはさすがだな。
ただ、気になるのが、風雲氣が玖で、天運氣は壱のところだ……。
秀吉の下で大出世をしたが、不運な最後を遂げた人物だ。
史実に照らし合わせると、風雲氣は野心、天運氣は運の数値の可能性が高い。
大出世したのも、不運な最後なのも、この二つの数値が関係したのかもしれないな。
政巧者の数値が高いから宗政に付けよう。
宗政は、俺のせいで苦労が絶えないし、とんがり三成にも手伝ってもらえば、助かるだろう。
………………
石田三成をスカウトして、数日後。
尾張国で桶屋を細々と営んでいた福島正信という男がいた。
その男に、志摩国で桶屋の大元締めをお願いして、子供も小姓として重用すると伝えると、家族で志摩国に引っ越してくれることになった。
家臣として欲しかった人物は、その福島正信の息子だ。
子供の名前は……福島正則だ。
前に、賤ヶ丘七本槍の岸嘉明を見つけたが、福島正則も七本槍の一人だ。
前世の記憶によると、思いっきりの武闘派で、大人になると酒癖が悪いのでも有名な人物だ。
近郷がもう一人増えるような気がするが、能力は高いだろう。
将来は一軍を任せたい。
福島正信と子供の正則に早速会ってみた。
正信は、髭を生やした粗雑そうな男だった。
正信は、品が無く、口を大きく開けて、豪快に笑って言った。
「この度は、桶屋の大元締めをお任せ頂けるそうで。へへへっ! ありがとうごぜいやすっ! こちらが、息子の正則でさ」
隣にいる正則も頭を下げる。
「正信、遠い尾張国から、よく来てくれた。正則も新しい地で慣れないと思うが、これからは小姓としてよろしく頼む」
「はいっ!」
俺が労いの言葉をかけると、正則は驚倒するぐらいの大声で返事をした。
正信が、ガハハと笑って言う。
「儂は、志摩国の名産、澄み酒を一度飲んでから、澄み酒に惚れましてな! 志摩国で働けると聞いたので、すぐに駆け付けましたわぁ!」
正信は、お酒好きか。
息子の正則のお酒好きは、親譲りなのかもな。
親子とも、下顎の犬歯が大きく尖っている猪みたいな容貌で、顔も体も大きい。
ファンタジーに出てくるオークみたいだ。
この前、小姓にした、華奢なとんがり三成とは、正反対な雰囲気だ。
いのしし正則だな。
二人には、その場で、いつも通り、握手をした。
親の正信は、戦巧者が30台だったが、子供の正則は期待した通りの数値だった。
【ステータス機能】
[名前:福島正則]
[年齢:7]
[状態:良好]
[職種:無し]
[称号:無し]
[戦巧者:8(86迄)]
[政巧者:2(41迄)]
[稀代者:捌]
[風雲氣:漆]
[天運氣:漆]
~武適正~
歩士術:捌
騎士術:玖
弓士術:参
銃士術:伍
船士術:漆
築士術:弐
策士術:参
忍士術:壱
〜装備〜
主武器:無し
副武器:無し
頭:無し
顔:無し
胴:木綿の小袖(弐等級)
腕:無し
腰:木綿の袴(弐等級)
脚:木綿の足袋(弐等級)
騎乗:無し
其他:無し
なんと!
戦巧者が80オーバーだ!
武適正も高い数値が並んでいる。
嬉しくなるな。
まだ、七歳だし、現在の数値は、これから鍛えないと。
近郷が性格が合いそうだし、近郷に教育は任せよう。
―――――――status―――――――
[名前:石田三成]
[年齢:8]
[状態:良好]
[職種:小僧]
[称号:無し]
[戦巧者:3(58迄)]
[政巧者:14(92迄)]
[稀代者:玖]
[風雲氣:玖]
[天運氣:壱]
~武適正~
歩士術:陸
騎士術:陸
弓士術:伍
銃士術:伍
船士術:伍
築士術:捌
策士術:玖
忍士術:伍
〜装備〜
主武器:無し
副武器:無し
頭:無し
顔:無し
胴:木綿の小袖(弐等級)
腕:無し
腰:木綿の袴(弐等級)
脚:木綿の足袋(弐等級)
騎乗:無し
其他:無し
お寺で小僧として修行中だったが、立身出世を夢見て、九鬼家に仕官した。
華奢な身体つきで頭が尖っているのが特徴。
物事の先を読むのは大得意。
性格は尊大でプライドが高く、野心家で出世欲が強すぎるところがあるが、根は忠犬ハチ公のように、一度主と仰いだら絶対に裏切らない、熱い一面もある。
―――――――――――――――――
[名前:福島正則]
[年齢:7]
[状態:良好]
[職種:無し]
[称号:無し]
[戦巧者:8(86迄)]
[政巧者:2(41迄)]
[稀代者:捌]
[風雲氣:漆]
[天運氣:漆]
~武適正~
歩士術:捌
騎士術:玖
弓士術:参
銃士術:伍
船士術:漆
築士術:弐
策士術:参
忍士術:壱
〜装備〜
主武器:無し
副武器:無し
頭:無し
顔:無し
胴:木綿の小袖(弐等級)
腕:無し
腰:木綿の袴(弐等級)
脚:木綿の足袋(弐等級)
騎乗:無し
其他:無し
乱暴者のいのししマン。
父親がお酒を旨そうに飲んでいるのが羨ましく、早く大人になりたいと思っている。
やることは荒々しいが、人情深くて裏表がなく涙もろい一面があり、真っ直ぐな性格。
大食漢で燃費が悪い。
将来は巨漢になりそうな体型をしている。
―――――――――――――――――
お読みいただき、ありがとうございます。
次回は、農業チートに取り組みます!




