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32/125

第三一話 第三次スカウト その三

前回のクイズ、さすが皆様、大正解!

▽一五六八年十一月、澄隆(十三歳)鳥羽城 


 山々は紅葉で赤く染まり、雲一つない晴天の昼下がり。

 待ちに待った人物が鳥羽城に来てくれた。



 俺は、喜び勇んで、その人物が待っている部屋に向かった。



 部屋に入ると、男が二人、平伏して待っている。 

 前に座っている方の人物が、スカウトしたお目当ての人物だろう。 

 筋骨隆々な大男かと予想していたが、平均的な身長のやせ形の男だった。


 

 見た目は、浅黒い端正な顔、きつく結んだ口元、眉毛もキリッと濃く、まるで歌舞伎俳優みたいだ。

 この男が、前世の記憶だと、これから鬼左近と呼ばれ、恐れられる人物になる。 



 そう、その男の名前は…………。

 島左近だ。 


 

 俺が、上座に座ると、前に座っている人物が話し出した。

「某、島左近と申します。こちらに控えるは従弟の島勘左衛門。畠山家では粉骨砕身、仕えてまいりましたが、武運拙く、家が破れ、浪人となり苦労しておりました……。この度、一族郎党、全員家臣にして頂けるとのこと有り難く。誠心誠意、仕えさせて頂きます」

 おお、歌舞伎口上みたいだ。 

 優しげな野太いイケメンボイスで、声も良く通る。



 左近だけでなく一族郎党を高額で召し抱えるという、大盤振る舞いをしたおかげで、仕官する気になったようだ。

「島左近、勘左衛門、よく来てくれた。これからよろしく頼む」

 左近は、人好きのするような笑みを浮かべて頷く。

 生粋の武人らしい裏表のない顔つきをしている。

 信用できそうだ。



 さあ、待ちきれない。

 握手だ。

 左近達の所まで、歩いていくと、あれ?驚かない。

「フフっ。澄隆様が家臣にする時、手を握られること、噂で聞いております。噂通りですな」

 快活に笑った笑顔が、男の色気満載だ。

 ビシッと背筋が通った精悍な雰囲気が格好いい。



 さぞやモテるだろうな。

 さあ、ステータスはどんなだろ?

 


【ステータス機能】

[名前:島左近]

[年齢:25]

[状態:良好]

[職種:歩侍]

[称号:無し]

[戦巧者:81(94迄)] 

[政巧者:21(61迄)]

[稀代者:拾]

[風雲氣:漆]  

[天運氣:漆]


~武適正~

 歩士術:拾

 騎士術:捌

 弓士術:漆

 銃士術:壱

 船士術:伍

 築士術:伍

 策士術:捌

 忍士術:壱


〜装備〜

 主武器:無し

 副武器:無し

 頭:無し

 顔:無し

 胴:木綿の小袖(弐等級)

 腕:無し

 腰:木綿の袴(弐等級)

 脚:木綿の足袋(弐等級)

 騎乗:無し

 其他:無し



 俺はそのステータスを見て息を呑んだ。

 ふおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!

 戦巧者94か!

 90オーバーという圧倒的なステータス。

 すんごい人材だ。

 鬼左近と呼ばれるようになるのが分かるな。

 現在の数値も高く、稀代者も拾か。

 武適正の歩士術の数値が拾なのも、初だ! 



 驚き過ぎて、数秒固まった。

 いかんいかん。

 こんな頼りになる家臣をスカウトできたのは僥倖だな。

 左近が戦っている所を早く見たい。

 まあ、九鬼家の戦力が整うまでは、他家と戦いたくはないけれど。



 手を握って分かったが、左近の手は、刀ダコが潰れ続けて固くなっていて、今まで握手した中で、一番ごつごつしている。

 隣に控えている島勘左衛門にも、握手した。

 勘左衛門も、左近より丸顔だが、眉毛が太く、こっちも歌舞伎俳優と言っていい顔立ちだね。 



【ステータス機能】

[名前:島勘左衛門]

[年齢:22]

[状態:良好]

[職種:歩侍]

[称号:無し]

[戦巧者:51(68迄)] 

[政巧者:15(38迄)]

[稀代者:伍]

[風雲氣:伍] 

[天運氣:陸]


~武適正~

 歩士術:漆

 騎士術:伍

 弓士術:壱

 銃士術:伍

 船士術:陸

 築士術:肆

 策士術:陸

 忍士術:参


〜装備〜

 主武器:無し

 副武器:無し

 頭:無し

 顔:無し

 胴:木綿の小袖(弐等級)

 腕:無し

 腰:木綿の袴(弐等級)

 脚:木綿の足袋(弐等級)

 騎乗:無し

 其他:無し



 おお、戦巧者が60後半。

 使える人材だ。

 現在の数値も高いな!


 

 島左近は、一族郎党、五十人ほどで、志摩国に来てくれた。

 早速、宗政に言って、小島の中に建てた家に入居してもらう。



 左近が落ち着いて、常備兵が揃ってきたら、左近には、家臣や兵達を鍛えてもらう教官をお願いしよう。


 

 ただ、このお願いが地獄の始まりだとは、この時は分からなかった……



…………………



 島左近や勘左衛門達をスカウトして、三日後。

 宗政にスカウトされた二人目が来てくれた。



 その人物が待つ部屋に入ると、顔中が傷痕だらけの男が座っていた。

 見た目は、若い。

 年齢は……二十くらいかな。



 浅黒い肌に、青黒い髪。

 顔立ちは、多数の刀傷が気になるが、彫像のように整った美貌の持ち主だった。

 冷めたような切れ長の目をしており、鼻は高く、顔の輪郭は細い。

 髪が一束、額にかかっている。

 なんとなく、腹に一物あるような顔立ちだな。



 俺は、上座に座って、その人物に話しかける。

「俺が澄隆だ。渡辺勘兵衛か?」

「ああ、そうだよ。拙者を雇いたいそうだな?」

 ……ずいぶんと馴れ馴れしいな。

 自分に相当な自信があるのか。



「勘兵衛。何が一番得意だ?」

「見た目の通り、幾度も合戦で斬り合ってきた。対人戦闘は得意だ。ただ、無学で、それ以外は何もできねぇ」

 良く見ると、右耳も切れて無い。

「それに……敬語は苦手だ。これで、上には煙たがれる。それでも良ければ雇ってくれ」



 勘兵衛は、少しうつ向きながら、話している。

 これまで、苦労もしてきたようだな。

 生意気かと思ったが、根は素直な性格っぽいな。

 苦労してきた人材は、俺も前世で同じ待遇だったからか、積極的に雇いたくなる。



 まあ、渡辺勘兵衛は、前世の知識で知っていたし、ある程度の能力はあるだろ。

 ここは、雇おう。 

「よし! いいだろう。俺は、敬語は気にしない。まずは、勘兵衛の力を当家で発揮してほしい」

 さあ、握手だ。

 俺は、勘兵衛の所まで、いつもの調子で歩いていく。



 勘兵衛は、驚愕したのか、ビクリと身体を震わせて背筋がしゃんとした。

 その顔には、驚きの表情が浮かんでいる。

 そのまま勘兵衛の手をぎゅっと握る。

 勘兵衛の手は、指先まで傷だらけだ。

 どういう斬り合いをしてきたんだ。

 本当に。


 

【ステータス機能】

[名前:渡辺勘兵衛]

[年齢:25]

[状態:良好]

[職種:歩侍]

[称号:無し]

[戦巧者:48(89迄)] 

[政巧者:4(15迄)]

[稀代者:玖]

[風雲氣:陸] 

[天運氣:捌]


~武適正~

 歩士術:玖

 騎士術:捌

 弓士術:漆

 銃士術:壱

 船士術:壱

 築士術:壱

 策士術:参

 忍士術:漆


〜装備〜

 主武器:無し

 副武器:無し

 頭:無し

 顔:無し

 胴:麻の小袖(壱等級)

 腕:無し

 腰:麻の袴(壱等級)

 脚:麻の足袋(壱等級)

 騎乗:無し

 其他:無し



 むほっ!

 戦巧者の数値が高い。

 それに比べて政巧者は現在4。

 これまた、尖った能力だ。

 前線向きだな。



「勘兵衛、まずは、左近という男と一緒に、雇ったばかりの足軽達を鍛えてくれ」



 魂が抜け落ちたような、呆然とした顔で佇む勘兵衛。

「ああ、分かった……。よろしく頼む」

 勘兵衛は、頬を染めながら、頷く。



 よーし、よし! 人材が増えてきた。嬉しい。

 ちょっと勘兵衛の俺を見る目がウルっとしていて、気になるが、頑張ってね!



…………………


 

 俺は、やることがあり過ぎて、毎日が、慌ただしい。

 あっという間に時間が過ぎる。

 ある日、隆佐から嬉しい知らせが入った。



 隆佐が、芝辻理右衛門と会って、勧誘したそうだ。

 理右衛門に玉鋼を見せると、たたら製鉄をしている場所が見たいとのこと。

 機密事項だが、ここは、仕方がない。

 光俊に聞くと、鳥羽城の一角に製鉄場所を内々に作ったと言うので、光俊に言って、理右衛門を鳥羽城まで連れて来てもらった。



 俺が定期的な評定を終えて、たたら製鉄をしている場所に案内してもらうと、一人の男が、鉄作りを眺めていた。

「待たせたな。俺が澄隆だ」

 俺は、来てくれた嬉しさを隠さず、話しかけた。

 男は、俺に顔を向けると、頭を下げる。



 男は、二十歳ぐらいか。

 寡黙なのか、喋らない。

「芝辻理右衛門殿、堺から、良く来てくれた。俺と話がしたいそうだが?」

「…………玉鋼」

 うん?

 俺が隆佐に渡した玉鋼のことかな?



「ああ、この設備で作った」

「…………あのレンガ」

「耐火レンガだ。高炉にしても簡単には壊れないぞ」

「………………」

 これって、渡した玉鋼がどう作られたか、知りたかったってことかな?



「理右衛門殿、俺は、この玉鋼を使って、作りたいものが沢山ある。力を貸してほしい」

「…………………な、わ……」

 理右衛門、言葉少な過ぎ!

 読み解くのが大変だぞ。

 えーと、なぜ、有名じゃなくて若輩の理右衛門に声をかけたってことかな?



「この玉鋼は、日の本で作られた初となる高強度の鉄だと思う。俺は、新しい力と共に、時代を切り開いていきたい。理右衛門殿、俺と一緒に行こう」

 俺は、手を理右衛門に伸ばす。

「……………………」

 理右衛門は、迷っていたようだったが、たたら製鉄から流れる鉄をもう一度見ると、俺の方に顔を向けて、握手をした。



「理右衛門殿、俺の家臣として迎える。よろしく頼む」

 理右衛門は、コクっとほんの少し、頷いた。

 よし! 早速頼もう。

「理右衛門と呼ぶぞ。理右衛門、俺に付いてきてくれ。禁秘ノ部屋で見せたいものがある。俺が描いた設計図だ。この玉鋼なら出来るはずだ。多羅尾一族を部下に付けるが、堺から呼びたい鍛冶職人がいればいくら呼んでも構わない。これから、よろしく頼む」



 下手な絵だけど、描いて、無駄にならなかったな。

 色々、作ってほしいが、まずは、この設計図のものを作ってね!

 あと、芝辻理右衛門と手を握った時、ステータスを見た。



【ステータス機能】

[名前:芝辻理右衛門]

[年齢:22]

[状態:良好]

[職種:鉄匠]

[称号:無し]

[戦巧者:33(58迄)] 

[政巧者:2(6迄)]

[稀代者:参]

[風雲氣:弐] 

[天運氣:伍]


~武適正~

 歩士術:参

 騎士術:壱

 弓士術:弐

 銃士術:壱

 船士術:参

 築士術:漆

 策士術:壱

 忍士術:壱


〜装備〜

 主武器:無し

 副武器:無し

 頭:無し

 顔:無し

 胴:麻の小袖(壱等級)

 腕:無し

 腰:麻の袴(壱等級)

 脚:麻の足袋(壱等級)

 騎乗:無し

 其他:無し



 戦巧者に特化している。

 鍛治職人としては、とても強いな。  

 鉄を叩く作業に、戦巧者の能力が役立つのかもね。

 これから、九鬼家の専属鍛治職人として、力を発揮してほしい。



―――――――status―――――――


[名前:島左近(しま さこん)]

[年齢:25]

[状態:良好]

[職種:歩侍]

[称号:無し]

[戦巧者:81(94迄)] 

[政巧者:21(61迄)]

[稀代者:拾]

[風雲氣:漆] 

[天運氣:漆]


~武適正~

 歩士術:拾

 騎士術:捌

 弓士術:漆

 銃士術:壱

 船士術:伍

 築士術:伍

 策士術:捌

 忍士術:壱


〜装備〜

 主武器:無し

 副武器:無し

 頭:無し

 顔:無し

 胴:木綿の小袖(弐等級)

 腕:無し

 腰:木綿の袴(弐等級)

 脚:木綿の足袋(弐等級)

 騎乗:無し

 其他:無し



 見た目は、人気歌舞伎役者。

 服の下は、シックスパックになっている筋肉マン。

 圧倒的な槍術の腕を持っている。

 自分を鍛えるのも、味方を鍛えるのも大大大好き。

 訓練中だけでなく戦闘でも、テンションが上がると笑いが止まらなくなる変態。

 敵には容赦しないが、家族思いの優しい一面も持っている。

 鬼神様と呼ばれる澄隆の評判を聞きつけ、一族郎党の生活のために九鬼家に仕官することにした。


―――――――――――――――――


[名前:島勘左衛門(しま かんざえもん)]

[年齢:22]

[状態:良好]

[職種:歩侍]

[称号:無し]

[戦巧者:51(68迄)] 

[政巧者:15(38迄)]

[稀代者:伍]

[風雲氣:伍] 

[天運氣:陸]


~武適正~

 歩士術:漆

 騎士術:伍

 弓士術:壱

 銃士術:伍

 船士術:陸

 築士術:肆

 策士術:陸

 忍士術:参


〜装備〜

 主武器:無し

 副武器:無し

 頭:無し

 顔:無し

 胴:木綿の小袖(弐等級)

 腕:無し

 腰:木綿の袴(弐等級)

 脚:木綿の足袋(弐等級)

 騎乗:無し

 其他:無し



 島左近の従弟に当たる。

 左近と同じく槍が得意。

 四六時中訓練している左近のことを変態だな〜と思いながらも、心から慕っている。

 

―――――――――――――――――


[名前:渡辺勘兵衛(わたなべ かんべえ)]

[年齢:25]

[状態:良好]

[職種:歩侍]

[称号:無し]

[戦巧者:48(89迄)] 

[政巧者:4(15迄)]

[稀代者:玖]

[風雲氣:陸] 

[天運氣:捌]


~武適正~

 歩士術:玖

 騎士術:捌

 弓士術:漆

 銃士術:壱

 船士術:壱

 築士術:壱

 策士術:参

 忍士術:漆


〜装備〜

 主武器:無し

 副武器:無し

 頭:無し

 顔:無し

 胴:麻の小袖(壱等級)

 腕:無し

 腰:麻の袴(壱等級)

 脚:麻の足袋(壱等級)

 騎乗:無し

 其他:無し



 世渡り下手の苦労人。

 切れ長の目をした色男だが、顔も体も傷だらけ。

 右耳も斬れており、片耳しかない。

 髪が一束、いつも額にかかっている。

 なんと、勘兵衛は自覚していないが、澄隆に一目惚れしたらしい。

 

―――――――――――――――――


[名前:芝辻理右衛門(しばつじ りうえもん)]

[年齢:22]

[状態:良好]

[職種:鉄匠]

[称号:無し]

[戦巧者:33(58迄)] 

[政巧者:2(6迄)]

[稀代者:参]

[風雲氣:弐] 

[天運氣:伍]


~武適正~

 歩士術:参

 騎士術:壱

 弓士術:弐

 銃士術:壱

 船士術:参

 築士術:漆

 策士術:壱

 忍士術:壱


〜装備〜

 主武器:無し

 副武器:無し

 頭:無し

 顔:無し

 胴:麻の小袖(壱等級)

 腕:無し

 腰:麻の袴(壱等級)

 脚:麻の足袋(壱等級)

 騎乗:無し

 其他:無し



 火縄銃を作っていた父親と反りが合わず、家を飛び出し、堺で鍛冶屋を営んでいた。

 喋るのが大嫌いで、話す単語を出来るだけ減らそうと、日々努力している。


―――――――――――――――――


お読みいただき、ありがとうございます。

次回は、兵器開発を進めていきます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 島左近派わかったけど、渡辺氏は知らなかったorz てっきり藤堂高虎かと
[一言] クイズ当たりました!
[一言] 島左近の戦ぶりを早く見たいな
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