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第二九話 第三次スカウト その一

▽一五六八年五月、澄隆(十三歳)鳥羽城 禁秘ノ部屋



 築城を始めて約四ヶ月が経過した。



 石垣作りの専門家、穴太衆も無事に雇え、島の東西南北に設置する四つの砦は、だいぶ完成に近付いてきた。



 それに、志摩国の領内で募集した人夫も想定以上に集まった。

 この時代は、全ての作業を人力で行っているが、人夫たちは労を惜しまず働いてくれて、作業が急ピッチで進んでいる。



 どうも、夫役の褒美に雑穀などの現物支給を実施したことで、人夫たちのモチベーションアップに繋がっているらしい。



 予定より早く作業が進んでいるため、俺は田城城から、築城中の鳥羽城に拠点を移すことにした。



 鳥羽城には『禁秘ノ部屋』と名付けた、俺以外に入ることを禁じた鍵付きの部屋を新たに作った。



 この部屋の窓には侵入防止の鉄格子をつけ、天井も厚い板を五重に貼り付けたものを使用して天井裏に忍び込んでも室内が絶対に見えないようにした。

 まるで、俺が牢屋に入っている気持ちになる部屋だが、俺の悪巧みを他人に見られないようにするには必要な処置だ。



 禁秘ノ部屋で考え事をするからと近習に言ってあるので、今は一人だ。



 俺は、この部屋で新たなスカウトのために、戦国時代の武将を書き出している。


 

 今の段階で、幸い、忍者は数多く家臣にできたが、忍者が本来得意なのは他国の情報収集などの忍び働き。

 大人数での合戦には向かない。



 まあ、風魔一族の忍者のような戦が得意な例外はいるけどさ。



 これから、スカウトしたいのは、合戦の指揮をできる人物だ。

 あと、単純に強い武将も欲しい。

 ここで、大事なのが、裏切らないこと。

 ステータス機能で、強さや賢さはある程度分かるが、忠誠は分からない。



 俺はただの歴史オタクで、内面は不器用で無能な男だと自覚している。

 裏切られる自信はある! 



 そのため、前世の知識を参考に、義理堅いと思える武将を選ばないと。

 あとは、既に、他の家に仕官していたり、年齢がいっている人材は出来る限り敬遠して。

 あとあと、この志摩国から遠くなるほど、この時代は土着意識が強いので、スカウトしても来てくれない可能性が高い。



 ……考えれば、考えるほど、選択肢が狭まってくる。


 

 朝から深夜まで、歴史オタクの知識を総動員して、千人近く知っている武将名を書き出し、選び抜いた。

 両手で左右のこめかみを押さえると、ズキズキと痛みを感じる。

 考え過ぎて、頭がクラクラする。



 疲れたが、何とかスカウトしたい人材がまとまった。

 俺は、書き出したリストを見つめながら、独り呟く。



「このリストが俺の生命線になるな……」

 近郷が言うには、戦場では近郷より強い男がゴロゴロいて、死にそうになったことが何度もあるのだという。

 つまり、戦巧者が50の近郷よりもまだまだ上な数値の男がたくさんいるということだ。



 このまとめたリストの武将は、全員、現代でも有名な武将たちだ。

 戦巧者の数値も相当高いだろうし、そういう武将を数多く揃えることで、これからの戦いに生き残っていきたい。

  


 フゥと溜息をつき、すっかり冷たくなった白湯を飲み干した。

 よーし、スカウトだ。

 宗政、出番だ!

 多羅尾一族の忍者も貸すから、スカウトしてきてくれ。



 あ、でも深夜だね。

 さすがに宗政を起こしてまで頼むのは、少しだけ気がひける。

 明日にするか。





 寝たと思ったら、すぐに朝になった。

 俺は、起き上がると、背筋を伸ばして眠気を飛ばす。

 目を細めながら両手を伸ばすと、関節がポキポキと鳴った。

 まだ、頭が働かないが、思い立ったが吉日。

 すぐに行動しよう。 



 俺が評定部屋に向かって進んでいると、顔が朝から脂でテカテカと光っている近郷が歩いていた。

 朝から暑苦しいな。



 俺は、寝不足から『ふぁ~あ』とだらしない欠伸が出る。

「澄隆様! 朝から弛んでおりますぞ」

 近郷が俺の顔を見ながら、いつもの大声で小言をいってくる。

「おはよう、近郷。昨日は遅くまで、考え事をしていてな」



 そう言えば、今日は小西隆佐が九鬼家に来る日だった。

 一人、目星をつけている人材が隆佐に関わりのある人物だ。

「近郷、そう言えば、小西隆佐に会ったら、評定部屋に来るように伝えてくれないか? 隆佐に頼みたいことがある」

 早速、近郷に隆佐を呼ぶように伝える。

「は、はぁ」

 近郷は、俺の言葉に怪訝そうな顔をしながらも頷く。

 いつもそうだが、当主に向ける顔じゃないぞ。



………………



 近郷に頼んでから半刻。



 俺が融通した澄み酒などを売り捌き、儲かったお金で堺の豪商にまで成り上がった隆佐に、商いの最中に、いつもの評定部屋に来てもらった。

「これはこれは、澄隆様。ご機嫌麗しゅうございます。お待たせして申し訳ありません。本日はいかようなご用件でしょうか?」

 小西隆佐は、ニコニコと揉み手をしそうな勢いで話してくる。

「良く来てくれた! 隆佐殿。儲かっていると聞いているぞ」

「いやいや、これも澄隆様のお陰でございます」



 隆佐は、人の悪い笑顔でニヤリと笑った。

 豪商になってから、顔つきが前以上に悪くなったぞ。

 まあ、ともかく、今日は、俺の目的を達成せねば。

「うん……隆佐殿とは長い付き合いになっているが、これからも懇意にしていきたいと考えている。そこでだ! 隆佐殿には次男がいるそうだな。我が小姓として、仕官を考えてもらえないだろうか?」



 隆佐は、予想外のことだったのか、目を丸くして、驚いている。

 その後は、真剣な顔をしながら考え込んでいる。



 俺に預けるメリットとデメリットを考えているな……。

 メリットはもちろん我が家との関係が深くなること。

 だけど、関係が深くなればなるほど、九鬼家が沈む時に小西屋も沈む可能性が高くなる。



 どうする? どうする? 小西屋!



 しばらく待つと、隆佐がキッと目を見開いて話し出す。

「大変、光栄なことです。次男、行長をお預け致します」

 隆佐は、俺に対して、今までにない深々としたお辞儀をした。

 九鬼家とこれまで以上に関係を深くする覚悟を決めたようだ。



 これまで、小西屋を優遇してきたのが役に立ったようだ。

 よっしゃぁぁぁ! 

 小西行長ゲットォォ!

 この小西行長が欲しかったんだよね。



 今から数年後、小西行長は、大名の宇喜多直家に才能を見出されて仕え、後年、羽柴秀吉にもずっと忠義を尽くし、重用される武将だ。

 直家に取られる前に、ゲットできた。

 会って、ステータスを見るのが楽しみだな。



………………



 さあ、後のスカウトは宗政の出番だ!

 宗政を呼ぼう。

「宗政! またスカウトだ。これから言う人材を探してスカウトしてきてほしい。光俊の配下に手伝ってもらっていいから」

 宗政は、こけし顔で、また、遠い目をして頷く。

 褒美に澄み酒たくさん渡すから、頑張ってね。


  

………………



 小西隆佐と会って一週間後。

 小西隆佐と次男行長がお供を十数人引き連れて、鳥羽城に来た。



 隆佐曰く、可愛い次男坊の配下として、お供は、このまま九鬼家に置いておきたいとのことで、全員、採用した。

「よし、行長。これから我が小姓としてよろしく頼む。隆佐殿、行長は責任を持って預かる」



 行長が、子供らしく勢い良く平伏する。

「澄隆様! よろしくお願いします!」

 おお、行長、ハキハキ明るい子だな。



「では、行長、握手」

 いつもの握手をお願いすると、誰もがきょとんとした顔をするが、行長も不思議な顔をしながら手を出した。

 変わった当主だけど、裏切らないでね。



 行長、良く見ると、頭の形がおにぎりみたいで、可愛いな。

 髪の毛も短く、海苔付のおにぎりみたいだ。

 父親の隆佐は、普通の頭の形だし、似てないな。


 

 あ、そうそうステータス見なくては。



【ステータス機能】

[名前:小西行長]

[年齢:10]

[状態:良好]

[職種:無し]

[称号:無し]

[戦巧者:9(78迄)] 

[政巧者:12(79迄)]

[稀代者:捌]

[風雲氣:漆] 

[天運氣:漆]


~武適正~

 歩士術:捌

 騎士術:伍

 弓士術:伍

 銃士術:壱

 船士術:陸

 築士術:陸

 策士術:漆

 忍士術:肆

 

〜装備〜

 主武器:無し

 副武器:無し

 頭:無し

 顔:無し

 胴:木綿の小袖(弐等級)

 腕:無し

 腰:木綿の袴(弐等級)

 脚:木綿の足袋(弐等級)

 騎乗:無し

 其他:無し



 おおおおお!!!

 戦巧者も政巧者も両方、70以上だ。

 両方がこんなに高いのは初めて見た。

 良い人材で、思わずニマニマする。

 鍛えがいがありそうだ。

 おにぎり行長は、小姓を少し経験させたら、宗政の下に付けようかな?

 


 あと、行長のお供も全員、握手したら、一人、目立つ人材がいた。



【ステータス機能】

[名前:木戸末郷]

[年齢:28]

[状態:良好]

[職種:商人]

[称号:無し]

[戦巧者:9(15迄)] 

[政巧者:32(59迄)]

[稀代者:肆]

[風雲氣:伍] 

[天運氣:伍] 


~武適正~

 歩士術:弐

 騎士術:壱

 弓士術:参

 銃士術:壱

 船士術:壱

 築士術:陸

 策士術:伍

 忍士術:壱


〜装備〜

 主武器:無し

 副武器:無し

 頭:無し

 顔:無し

 胴:木綿の小袖(弐等級)

 腕:無し

 腰:木綿の袴(弐等級)

 脚:木綿の足袋(弐等級)

 騎乗:無し

 其他:無し



 末郷は目が小さく、いつも眠そうな顔をしているから、政巧者が高いようには見えない。

 だが、ステータス機能があるから、能力が高いのは分かっている。

 宗政の下につけて、ブラックな苦労をしてもらおう。



………………



 それと、光俊の息子で、奈々の弟である多羅尾光雅が、忍者見習いとして、九鬼家で働くことになった。

 ずんぐりむっくりとした小太り体型で光俊や奈々にも似ていない。

 あ、顔のパーツは所々似ているかな。



【ステータス機能】

[名前:多羅尾光雅]

[年齢:12]

[状態:良好]

[職種:忍之者見習い]

[称号:無し]

[戦巧者:9(33迄)] 

[政巧者:13(53迄)]

[稀代者:肆]

[風雲氣:参] 

[天運氣:肆]


~武適正~

 歩士術:肆

 騎士術:壱

 弓士術:参

 銃士術:壱

 船士術:参

 築士術:弐

 策士術:参

 忍士術:漆

 

〜装備〜

 主武器:無し

 副武器:無し

 頭:無し

 顔:無し

 胴:木綿の小袖(弐等級)

 腕:無し

 腰:木綿の袴(弐等級)

 脚:木綿の足袋(弐等級)

 騎乗:無し

 其他:無し



 握手をしてステータスを確認すると、政巧者の方が高い。

 将来は、最前線で戦うより、諜報活動の担当にしても良いかもな。

 俺が、よろしく頼むと言うと、喜び勇んで元気な返事をした。



―――――――status―――――――


[名前:小西行長(こにし ゆきなが)]

[年齢:10]

[状態:良好]

[職種:無し]

[称号:無し]

[戦巧者:9(78迄)] 

[政巧者:12(79迄)]

[稀代者:捌]

[風雲氣:漆] 

[天運氣:漆]


~武適正~

 歩士術:捌

 騎士術:伍

 弓士術:伍

 銃士術:壱

 船士術:陸

 築士術:陸

 策士術:漆

 忍士術:肆


〜装備〜

 主武器:無し

 副武器:無し

 頭:無し

 顔:無し

 胴:木綿の小袖(弐等級)

 腕:無し

 腰:木綿の袴(弐等級)

 脚:木綿の足袋(弐等級)

 騎乗:無し

 其他:無し



 堺の商人である小西隆佐の次男として京都で生まれる。

 頭の形が三角形で、おにぎりに似ている。

 正義感が強く、曲がったことが大嫌い。

 融通の利かなさが、時に悪い方向にいくことがある。

 身体が大きく、既に大人の背丈ぐらいあり、この年で、女のコのことが気になるマセたガキ。


―――――――――――――――――


[名前:木戸末郷(きど すえさと)]

[年齢:28]

[状態:良好]

[職種:商人]

[称号:無し]

[戦巧者:9(15迄)] 

[政巧者:32(59迄)]

[稀代者:肆]

[風雲氣:伍]  

[天運氣:伍]


~武適正~

 歩士術:弐

 騎士術:壱

 弓士術:参

 銃士術:壱

 船士術:壱

 築士術:陸

 策士術:伍

 忍士術:壱


〜装備〜

 主武器:無し

 副武器:無し

 頭:無し

 顔:無し

 胴:木綿の小袖(弐等級)

 腕:無し

 腰:木綿の袴(弐等級)

 脚:木綿の足袋(弐等級)

 騎乗:無し

 其他:無し



 元々は小西家の番頭をしていたが、行長が生まれた以降は、隆佐の命令で行長に仕えている。

 いつも眠そうな顔をしているが、寝不足ではない。

 将来の夢は、独立して小さくても良いから自分の店を持つこと。

 

―――――――――――――――――


[名前:多羅尾光雅(たらお みつのり)]

[年齢:12]

[状態:良好]

[職種:忍之者見習い]

[称号:無し]

[戦巧者:9(33迄)] 

[政巧者:13(53迄)]

[稀代者:肆]

[風雲氣:参] 

[天運氣:肆]


~武適正~

 歩士術:肆

 騎士術:壱

 弓士術:参

 銃士術:壱

 船士術:参

 築士術:弐

 策士術:参

 忍士術:漆


〜装備〜

 主武器:無し

 副武器:無し

 頭:無し

 顔:無し

 胴:木綿の小袖(弐等級)

 腕:無し

 腰:木綿の袴(弐等級)

 脚:木綿の足袋(弐等級)

 騎乗:無し

 其他:無し



 奈々の弟。

 顔はまん丸だが、奈々に似てキラキラした目をしている。

 小太り体型を気にしていて、痩せるためにいつも走っていたが、残念ながら体型は変わらなかった。

 ただ、継続は力なり!

 走ることが得意になった。

 相当の移動力があるため、今では足を使った諜報活動が天職。

 

――――――――――――――――――



次回も、第三次スカウトを進めていきます。

お楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[一言] 小西行長君ってびっくりするほど戦術戦略が駄目だから加藤清正や島津義弘等朝鮮出兵した大名諸将にガチ切れされた有名な逸話と自己保身の為に朝鮮李王朝の秀吉天下人に対する対応を嘘付きまくり停戦交渉を…
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