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美少女アバターで召喚獣やってます  作者: バッド
4章 混沌の始まり

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54話 マナ的な木を隠すには森の中論

 『南千住ダンジョン』。忘れられたら困りますが、私がこの世界に来て初めて訪れたダンジョンです。そして、初めて魂を食べた場所でもあります。


 あれから『南千住ダンジョン』がどうなったかというと一ヶ月で魔物は全滅、リポップしなくなりました。そのため、ハンターたちは潮が引くように離れていき過疎化しました。これで廃棄ダンジョンが一つ生まれましたとさ、チャンチャン。


 その『南千住ダンジョン』。管理するにも費用がかかり、どうするかと思っていた都に対して太っ腹に買い上げた者がいます。


 それはひょっこりと現れた投資会社『セム投資会社』。十年前に設立した投資会社は最近になって大口のスポンサーをバックにつけたようで、この土地を買い占めたのです。


 ……電子上だけですけど。本当は一ヶ月前に設立したんですけどね。そして、南千住ダンジョンをただいま絶賛開発中。


「ふむ……。居住区はまだまだ手を付けたばかりなのだね。まぁ、住人も揃わぬ今は急がなくても良いか」


「じ、人工太陽と空気創造、温度管理はもちもちもち、バンカーミサイルや魔法でも破壊されないように壁を強化してましゅので」


 リムジンのふかふか椅子に座った鍵音は蘇我当主からの問いに、プルプル震えて口を噛み噛み答えていた。蘇我当主は手元にあるタブレットに表示された資料を熱心に読んでおり、鍵音はその内容をきっちりと覚えていたため、どもる以外はしっかりと答えられている。さすがは記憶力が神がかった良さのマスターです。


「そうだな。モンスターピードはまだ始まったばかり。まずは魔物の駆逐を先行したほうが良い。今日の新型魔導強化服には期待してる」


「ははははは、ひゃいっ。今は量産ラインがようやくできて、月産10機となってまふっ」


 重々しい口調で貫禄のある蘇我当主に、ペコペコするしかない鍵音。時折、私を見てきますが、きっと私って頭良いでしょ? とのアピールに違いありません。涙目で唇をプルプルさせてるのは、きっと鍵音流ドヤ顔なのでしょう。


 そして、猫の目でじーっと鍵音を見つめる一対の瞳。ルカが何のことなのかなと、聞きたくてウズウズしてますが空気を読んで黙ってました。


 『南千住ダンジョン』改め、『方舟』。その土地に着く2時間、蘇我当主からの問いに、鍵音はなんとか答えるのでした。


 なにせ、さっきまでやっていたゲームです。答えられますよね。


           ◇


「おぉ、これが新型魔導強化服かね? 見た目は立派なものだ」


 『方舟』に到着し、蘇我当主は他の待っていたスポンサーと共に新型魔導強化服を見て感心していた。


 ずらりと並んだ魔導強化服は、細身のフォルムで大きさは3メートルはある。人が乗り込む前なので後部が開いたままだ。武装はガトリングガン、砲型魔法杖に大型マジックナイフ。スラスターが全身の各所に搭載され、ウイングバインダーが後部に搭載、大型バーニアによる急加速が可能となっている。


 名前はYK02『子狐』だ。


「全ての動力は従来の魔導エンジンよりも遥かに馬力のある新型魔導エンジンにより賄われています。その出力はCランク。そして操作するパイロット能力の最低値はFランクです」


 あまりの緊張から気絶した鍵音に代わり、仕方ないので私が説明します。これはこの世界のシステムを多少改良した魔導強化服だ。マナの世界の魔導強化服とは根本的にシステム仕様が違うので見られても構わない。ほんの30年ほど技術レベルを上げただけだ。


「……FランクでCランク並みの戦闘力を出せると? 話には聞いていたが俄には信じられん。そんな事が可能なのかね?」


 スポンサーの一人が疑問を目に乗せて尋ねてくる。


「はい。モンスターピードが多発するようになった昨今。圧倒的に足りないのがハンターの数です。現在の魔物の構成はD、Eランクがメインですが、その数はハンターの数百倍。継戦能力を魔物側に大幅に上回られています。Eランクでも、一般人は倒せないですし、敵の中には魔法を使う者もいる。従来の火器でも倒せません」


「その通りだ。敵の数は多いし、しかも発生場所は多岐に渡る。もう各地では放棄した地域も出ているほどだ。早急に兵を揃える必要があるが、ほとんどの人間は覚醒してもFランクだからな」


「そうです。ですが反対にいうと、Fランクなら数を揃えることができる、という意味です。この強化服は魔力の発露だけできれば操作可能です。なので、大幅に兵力を揃えることが可能です」


「それが本当ならばたいしたものだが……」


「お疑いも分かります。なので、実際にこの強化服のお力を見せましょう。壁面のモニターをご覧ください。既にモンスターピードの発生している一つのダンジョンに向かわせております」


 パチンと指を鳴らすと、モニターに戦場が映し出される。ふふふ、これからが見ものです。


 皆様、どうか驚いてくださいね。


          ◇


 山梨方面から都内に進むモンスターたち。幾つかのダンジョンから突然出現した魔物の数は1万匹はいる。既に避難の終えた地域にて、国道を塞ぐように設置した魔法の付与されたバリケードを盾にハンターたちが懸命になって戦闘をしていた。


「クソっ、倒しても倒しても敵が現れるぞ! もう体力も限界だ!」


「こっちも魔力切れよ! こいつらなんか魔力さえあれば簡単に倒せるのに!」


「バリケードがもう限界だ……崩れるぞ」


 半透明の青いシールドを展開しているバリケードはホブゴブリンたちの執拗な攻撃により放電を始めて、ギシギシと嫌な音を立てている。


 ハンターたちは剣を振るい、魔法を放つがいかんせん敵が多すぎて対応に限界を見せていた。剣や鎧は返り血で真っ青で、滝のように汗をかき、吐く息は荒い。


 ハンターたちの数はCランクが5人ほど。Dランクが20人ほどだ。その数で1万匹もの魔物を抑えていることが奇跡ともいえよう。しかし、それも限界が来ていた。防衛線が崩壊されるのも時間の問題。ここを突破されれば、都内まで敵は侵攻するだろう。


「クソっ! 高ランクのハンターたちはどうしたんだ? なんで来ないんだよ!」


「もっとランクの高い魔物がいるダンジョンを攻略中らしい。放置しておくと高ランクの魔物のモンスターピードが起こるかもとの話だ」


「なんでまたこんなに急にモンスターピードが!?」


 ハンターたちは高ランクのハンターたちが来ない理由に理性は納得はするが、感情は限界であった。もはや剣を振るう力もなくなりそうだ。


「バリケードが壊れるぞぉぉ!」


 ハンターの一人が恐怖の叫びをあげる。その声に振り向くハンターたちも絶望に顔を引きつらせる。放電していたシールドが消えていき、バリケードが倒される。


「きゃあっ、いやぁぁ〜!」


 ハンターの女性がホブゴブリンにのしかかられて、棍棒を振り下ろされようとしていた。既に魔力が尽きており、抵抗の余力はない。他のハンターたちも同様で、仲間を助けるどころか、自分の身を守ることも難しい。


 このままではハンターたちは哀れ魔物たちの波に流されて命を失ったであろう。

 

 だが、ホブゴブリンはいつまでも棍棒を振り下ろさなかった。なぜなのかと不思議に思う女性が恐る恐る目を開き、ギョッと目を見張る。


 ホブゴブリンの頭は吹き飛んでおり、血を噴き出しながらゆっくりと倒れる。


「え? どうしたの、なにこれ、誰が助けて━━」


 仲間の誰が助けてくれたのかと、周囲を見渡して、驚きに声を失う。


 ドドドドドドと、激しい銃声が響き、空から幾つもの火球が飛来してくる。火球はバリケード付近の敵を吹き飛ばし、銃弾が豪雨のように降り注ぎ、魔物を次々と倒していっていた。


「ま、魔導強化服? 助けが来てくれたの?」 


 空から降り立ったのは細身のフォルムをした魔導強化服だった。ガトリングガンを撃ち続けて、肩に搭載されている砲肩魔法杖から火球を放っている。


 その力は圧倒的で、ガトリングガンの銃弾の前に、敵は刈られる稲のように次々と倒れていく。


「ここは私たちが対応します。お疲れ様でちた。後方に下がってアイスでも食べててください」


「は、はい、ありがとうございます」


 本当ならば効果の薄いはずの銃弾が魔物たちを駆逐していくのを見ながら、差し出された手を掴んで立ち上がると、女性は礼をいう。その様子を見て、大丈夫だと思った強化服を着たハンターは頷くと、後部バーニアから炎を吹かせて、敵へと突撃していく。


 地面ギリギリを飛びながら子狐はガトリングガンの引き金を引き続ける。終わらない銃弾の嵐は国道にひしめく魔物たちを倒していく。


 魔物たちもやられてばかりではなく、魔法を放つ敵もいる。炎の弾や、魔力の矢が子狐たちを倒さんと飛来するが、子狐は片手を上げるとマジックシールドを展開。全てを受け止めて弾く。


「アルファ部隊、お箸を持つ手の方向に展開。敵を攻撃せよ。ベータはお茶碗を持つ方向ね。サードは後方で魔法攻撃。敵の集団を吹き飛ばせ」


「三番目の名前はチャーリーだよ」


「駄目だよ、ち~ちゃん、お馬鹿だからわからないんだよ」


 子狐たちは軽口を叩くが、その動きは連携の取れたもので、狩りをする狼のように魔物たちの周りを囲み、容赦なく倒していく。元より質より量の敵の集団だ。強い魔物は存在しておらず、高速で飛行する子狐たちを追いかけることもできずに、抵抗することもできずに倒れていく。


 国道に銃声が響き渡る。爆発音と共に敵が炎にのまれていく。魔物たちの中には逃げようとするものも出てくるが、一匹も逃すことなく子狐たちは敵を倒していき━━全てを殲滅したのは1時間が経過する頃であった。


「やった! やったぞ! 彼らは高ランクのハンターたちか?」


「どこのクランなんだ?」


「連絡先を聞かなくちゃ!」


 後方に退避していたハンターたちが喝采する。新たなる戦士たちに。


          ◇


「ドドドド」


「どうでしょうか? これこそ人類を救う力。新たなる兵器。YK02子狐です。コストは従来のCランクハンターの十倍はかかりますが、現在の状況を鑑みますと、この強化服を配備する必要はあると思います」


 1時間のうちに復活した鍵音が説明をする。訳したのはルカさんです。 

 

 蘇我当主を始めとするスポンサーたちは言葉を失っていた。予想をはるかに超える能力を見せつけられたためだ。


「すすすすす」


「発注があれば生産ラインを増やしていきます。月産100機を目指したいと思います。ご満足していただけたでしょうか?」


 ニコリとルカさんが微笑み、スポンサーたちを見渡す。


 もちろん、スポンサーたちは目の色を変えて競い合い、魔導強化服の注文をしてくるのであった。

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