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消えた物語

作者: たかさば
掲載日:2021/01/06

物語が、消えた。


昼過ぎから、書き上げて完成した物語が、消えた。


3000文字前後の、物語が、消えた。


綺麗さっぱり、物語が、消えた。


私は、少々おかしな物語の書き方を、しているのだ。

私は、少々おかしな方法で、物語を公開しているのだ。

私は、少々おかしな手順を踏んで、物語を保存しているのだ。


それが幸いし、物語が、消えてしまった。


私は、ワードで書いた物語を、メールで自分宛に送信し、スマホから投稿をしている。


メールで送ることで、作品の保存をかねているのだ。

ワードでは、物語を保存していないのだ。

投稿はスマホからと決めているのだ。


なぜだかこのやり方で、落ち着いているのだ。

なぜだかこのやり方が、しっくり来るのだ。


もう、いまさら変えることのできない、強迫観念のようなものが私に取り付いているのだ。

もう、いまさら変えることができない、学習能力の低さが私を雁字搦めにしているのだ。


午後三時、私はいつものように、書き上げた物語を、自分に送信した。


いつもであれば、送信されたメールを確認してからパソコンの電源を切るのだが。

今日は、たまたま、メールを確認する時に来客があった。

来客の対応をしているうちに、メールのことをすっかり失念し、私はパソコンの電源を、切った。


時間に追われていた事も、幸いしてしまったのだ。

やけに頼まれ事をされ、断ることもできず奔走していた事も、幸いしてしまったのだ。


夕方、少し自分の時間が持てたので、送っておいた物語を投稿しようと、メールを開いた。


・・・どこにも、メールは、届いていない。


おかしい、そんなはずは。

おかしい、メールの不具合か?

おかしい、確かに私はメールを送ったはず。


いや待てよ。


そういえば私はメール送信の確認をしていない。

そういえば私はメール到着の確認をしていない。


自分の詰めの甘さに、愕然とした。

自分の確認能力のなさに、失望した。


しかし、後悔したところで、消えてしまった物語は、もうどこにも存在していないのだ。


もう一度、物語を書かねば、なるまい。

もう一度、物語を書かねば、なるまいと。


・・・確かに書き上げたはずの、私の、物語。


一度書き上げたという充足感は、同じ物語を再び書かせてはくれなかった。

一度書き上げたという疲労感は、同じ物語を再び思い出させてはくれなかった。


小気味良いフレーズが思い出せない。

気持ちの良い言葉のキレが思い出せない。

しっくりまとまる物語のラストが思い出せない。

そもそも物語の流れが思い出せない。


・・・言い訳をするならば。


私は、私の物語の、読者なのだ。

私は、私の物語の、愛読者なのだ。

私は、私の物語の、大ファンなのだ。


書き上げた物語は、私が読みたい物語なのだ。

書き上げた物語は、私が読むことを楽しみにしているのだ。

書き上げた物語は、私が楽しみたいと思っているのだ。


書き上げた後は、読んで楽しむものだと思っているのだ。


書き上げたあとは、書いたことを忘れて、物語と対面しようと、思っているのかもしれない。


書き上げたあとは、書いたことを忘れて、物語と対面しようと、思っていたのか、私は。


だから、こんなにも、私は私の書いた物語を思い出すことが、できないのか。


なんだ、そうだったのか。


やけにしっくりと来てしまった私は、消えてしまった物語を追うことをやめた。




・・・消えてしまった物語を追うことをやめた私に、新しい物語が降りてきたので。




私は、この、物語を、書くことが、できた。

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― 新着の感想 ―
[一言] おおっ……。 いやいや、保存しましょうよ。ワードで書いたなら保存しましょうよ。 まぁ、パソコンを誰かに見られた時のリスクはありますけどね……。
[良い点] おうふ悲しい そしておめでとう新しい物語 [気になる点] メール送信いいですね。 いいと思います。 …… 普通に保存してもいい気がしますけど [一言] 消えた物語は消化され、別の形で出て…
2021/01/06 20:22 退会済み
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