マルモの魔法教室ー1
今回は連続投稿説明パートになります
明日香が森のなかを探検している頃、梓は魔法の基礎を教わっていた。
「マルモ、魔法の修行ってどうするの?」
梓の頭になかでは、小説でもよくある繰り返して練習する至って普通の修行方法だが、マルモは。
「まず、貴女には魔法の基礎を教えるわ。修行はそのあと良い?」
と、梓の質問をスルーして話す。梓もそれなりに理にかなっていると感じたのか首を振る。
「まず、魔法は火、水、土、風、光、闇、無の7つの属性に分かれているの」
マルモは地面に時計回りで火、風、水、土の順に書き、その横に光と闇を書く。
「あれ?無属性は何処にも書かれてないけど良いの?」
「無属性は言葉の通りどの属性でもない魔法になるから、書く必要がないのよ。あえて言うなら6属性以外の全ての魔法ねここまで理解出来たかしら?」
この位ならば、ファンタジー物の小説が好きな梓にとって朝飯前だ。「これくらい余裕よ」とマルモにドヤ顔でかえすと。
「なら、良かった。じゃあ次のステップね、魔法が存在しない異世界でも魔力は存在していると思う?」
「え?無いんじゃないの?」
「正解は魔力はどんな異世界にも存在するし、どの世界の人間も魔力を持っているわ」
前の世界を考えてみなさいと言われて、思い出す。確かに魔法はあの世界には存在しないものだったが、梓は明日香を助けるために回復魔法を使っていた。
「じゃあ、何で私達は魔法を使えなかったの?」
「それぞれの世界でも魔力が存在する量が違うの。だから魔力が僅かしか存在しない世界は魔法を使えないってわけ」
貴女達が前にいた世界みたいにね。とマルモは言うが梓は。
「でも、あの時私回復魔法が使えたよ?」
梓の最もな質問にマルモはきちんと対応する。
「あの時は、あの世界とここを繋げていたからあの周辺だけ一時的に魔力が高くなっていたのよ」
だから魔法が使えるの。と言われ、大体の理屈は理解し頷く。
「飲み込みが早いことは嬉しいわね。じゃあどんどんいくわよ、人間が持てる魔力の属性は普通の人間が2属性、無属性と6属性のどれかね。たまに普通の人でも3つの属性を持っている人もいるけどね。因みに私は『能力視認』で人がどの属性を使えるか確認できるわ」
その話を聞いて、自分がどの属性を持っているのか気になる梓は。
「私はどの属性を持っているの?」
マルモはそれを聞かれると、少し苦笑いしながら。
「あー……貴女は7属性全てを使えるわ」
勿論そんな答えを考えていなかった梓は動揺する。
「え!?7属性全部!?普通の人は2属性か3属性って言ったじゃない!!」
梓の驚き納得するもので、魔法使いとして最初に聞いたときには自分も驚いたのでなにも言えない。
「貴女の母の翠が普通の人なわけ無いでしょ……貴女達を守るために世界を創り出すんだから」
「そういえばそうだったわね……何かごめんなさい……」
「いえ、別に良いのよ……普通はその反応だから」
二人(マルモは改めてだが)で翠の高すぎるスペックに驚きながら話を続ける。
「それに3属性以上使える人間も居ないことはないのよ?」
「へぇ~それってどんな人なの?」
「大体5属性位使えたら大魔導師とか呼ばれるわね。6属性で性質が光なら勇者、闇なら魔王って感じかな」
マルモが当然のように話しているが、聞き間違えでなければ6属性を扱えれば勇者や魔王クラスだと言っていたのだ。
「私と私のお母さん7属性使えるんだけど……」
梓が苦笑しながら聞いてみると。
「因みに私も7属性使えたりするわよ。まあ翠程ではないけど一国の軍隊ぐらいは軽く倒せるわ」
梓からしてみれば一人で軍隊を倒すと言う事が十分おかしいのだが、これ以上気にしても話が進まない気がして考えることをやめた。
「あ、じゃあ明日香の属性ってなにかわかるの?」
自分の属性が7属性なので明日香も7属性使えるのだろうと思い、聞いてみると。
「えっと……明日香の属性は私が視た時には一つだったのよね……」
「一つって無属性だけってこと!?」
先ほど、人には基本的に2つの属性を持っていると言ったばかりなのに、明日香には属性が1つしかないのだ。
マルモは自分の立てた仮説を梓に話す。
「多分、翠は魔法の才能を梓に、接近戦の才能を明日香に分け与えたんだと思うの……これから貴女達はきっと色々な場面で戦わなければならないと思うから、その時のために」
その仮説を聞いて、確かにそうかも…と納得する。
「でも、無属性魔法は使えるんだよね?」
「ええ、明日香は中でも強化魔法が一番得意だと思うわ。初歩の強化魔法はもう使えるみたいだし」
全く魔法が使えない訳ではないと安心した梓は次の質問を聞く。
「魔方陣や詠唱って意味があるの?」
梓とマルモが初めて戦った時、マルモは最後の魔法だけ魔方陣を作り上げて魔法を使った。それまでは無詠唱で撃ち合いをしていたのにも関わらずだ。
「うーん…必ずしも必要ってわけでもないのよ。勿論、強力な魔法なら詠唱か魔方陣を作ることが必要になってくるけど、そもそも詠唱も魔方陣もあまり変わらないのよ。どちらも魔法を作り上げるための補助だから、それを声で行うか魔方陣で行うかの違いよ」
「魔方陣と詠唱の違いって何なの?」
梓は違いがいまいち分からないので、マルモに聞いてみる。分からないことは聞くのが一番手っ取り早い。
「特に無いわ。まあメリット、デメリットが違う位よ。詠唱は口を封じられなければ出来るけど、詠唱に必要な言葉を覚えるのが大変よ」
特に使う魔法が多くなるとね。と付け加える。
「魔方陣は詠唱と違って口を封じられても使えるけど、魔法の規模や強さによって大きさが変わるし、魔方陣そのもの傷つけられると魔法が使えなくなるから一長一短ね」
「さて……ここまで理解できたなら魔法を実際に使いながら進めるけど良いわね?」
梓にしてみれば漸く魔法が使えるので願ってもないことだ。興奮していることを出来るだけ隠しながら頷く。
「魔法には大きく分けて攻撃魔法と補助魔法の2種類になっているわ。低級魔法位なら、素質がある人なら直ぐに使えるようになるくらい簡単なものだけどね」
そう言って自分の周りに6属性の低級魔法を浮かべる、するとマルモは。
「ここからは難度が上がるから覚悟して」
「全然問題ないわ、どんどん進めて下さい」
余裕の表情にマルモも「分かった」と、話を進める。
「次は複合属性の話よ。さっき私が書いた図があるでしょ?」
マルモはその図に、火と風の間に雷、風と水の間に空、といって感じで残りの2つには時、金と書き加えた。
「これは……?」
「この図が属性図の完成形。全部で11属性ある」
その図を見て、梓は隣り合った属性には複合属性があるが、火と水の様に隣り合っていない属性はどうなるのか気になり。
「じゃあ、土と風の属性や火と水の属性なら複合属性にはならないんですか?」
その質問を予測出来ていたのか、それはあとで話すわ。と流されてしまった。
「先ずは、複合属性がどんな風に出来ているのかを教えるわ」
ここからは難度が上がる。という言葉を思いだし、姿勢を整える。
「複合属性は例えば、雷属性なら火と風の属性を1・1で混ぜることで作り出すこと出来る。2つの属性を合わせているから当然威力も高くなるわ。あと、火属性と光属性とかだと複合属性じゃなくて、二重属性と名前が変わるから」
そんなわけだから一回やってみて。とかなりの無茶ぶりを要求されたが、ダメもとで火属性の魔力と風属性の魔力を同じくらいの比率で合わせる。すると、パチパチという音と共に小さな雷が発生した。
「……出来ちゃった……」
梓が驚いていると、見ていたマルモはやっぱりといった表情で。
「やっぱり翠の血の力が関わっているようね……もちろん、梓の才能も必要になるけど」
「私のお母さんの血の力?」
母親の血にそんな力があることなど知らない梓は、マルモのその言葉に反応する。
「ええ、今まで翠の血の力で分かっていたのは、教えて貰ったことでは『精神的な苦痛の軽減』と『その苦痛を別の感覚に変える』事だったんだけど……梓だけかどうかは分からないけど『魔力の増幅効果』もあるみたいね」
これなら……とマルモが一瞬恐ろしい笑み見せたが、きっと気のせいだと思って梓は雷魔法の維持に集中する。
「貴女にはまだまだ魔法を覚えてもらうからね……♪」
マルモの笑顔に梓は震えながら……はい……と言うしかなかった。
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