自由行動~明日香達の場合~
と言うわけで分割投稿一回目です。
「さ~てこれからどうしよ?言ったはいいけど…実はそこまでやる事決まってないんだよね…」
明日香は苦笑しながら、次に何をしようかと考えていると。
梓が、じゃあ、といった様子で提案する。
「とりあえず私達二つに別れましょうよ。その方が色々と都合の良いことがあると思うし」
梓の提案が珍しくまともなものに聞こえ若干驚いたが、その意図に気づく。
「そうね、じゃあ私とアリシア、お姉ちゃんとマルモの二つの班に分かれましょ♪」
「え…!?そ、そんなことしたら…!」
「そんなことしたら?」
明日香は笑顔で、梓に問いただすと、梓ははぅぅ……、と言葉に詰まる。
梓は班に分かれるときに、明日香と二人で分かれる気だったのだろう。
だから明日香は先手を取って、自分と梓を別々の班にしたのだ。
「じゃ、そういうわけだからお姉ちゃんも楽しんでね♡」
「やっとお姉ちゃんから離れられた~」
明日香は大きく伸びをしながらそんな事を言う。
梓がそこにいたら卒倒しそうな台詞だったが、その梓は明日香と別の班に分かれてから、ヤケになったようで、「図書館に行くわよ!」と叫んで、マルモ達を無理やり連れて行った。
「あ、何かあそこでやってる~」
明日香が指差した先には、男たちが戦っている現場があった。
恐らくストリートファイトの類だろうが、明日香は楽しそうな表情で。
「顕現♪緋焔・闢零」
明日香は二人の剣の少女を呼び出すと、心底嬉しそうに。
「ちょっと私あの中に混ざってくるね~♪」
そう言って突撃していった。
「ねえ、私もま~ぜて♪」
「んだテメェ!?」
一人の男が、明日香の声に威圧的に反応する。
「ここはお前みたいなガキが来るところじゃねえんだよ。とっとと帰んな」
「ふふ~♪意外と優しいんだね~」
明日香の言葉が意外な威力を生み出したのか、その男は柄にもなく照れていた。
「何か話がそれちゃった…とりあえず、私もその中に混ぜてよ~」
明日香のその言葉にその場にいた男全員が笑い出す。
──こんなガキが俺らと戦うってよ!──せいぜい可愛がってやれよ──よく見たら結構可愛いんじゃねえの?──お前こんなチビガキが好きなのかよ!?──
などと、好き勝手笑っていた男たちには、明日香の空気が変わったことに気付く事が出来なかった。
「面倒臭いし、皆まとめてかかって来てよ、グダグダ面倒」
明日香の言葉が男たちの怒髪天を突いた。
「チョーシにノッてんじゃねぇぞ!!」
男たちは明日香が一回り以上小さいいことなどまるで気にせずに、ナイフなどの武器を使ってくるが。
一瞬の内に、男たちの武器を蹴り上げて飛ばし、そのまま脇腹に回し蹴りをお見舞いする。
反応できない残りの男たちも掌底などを叩き込んで沈黙させ、男たち全員が沈黙するまで数十秒程の出来事だった。
「皆おっそーい!」
明日香は倒れた男たちに決め台詞(?)を決めている。
「全く…無茶しないで下さいよ…私達ヒヤヒヤしたんですから…」
緋焔の呆れた声を聞きながら、明日香はむ~っ、とハムスターのように頬を膨らませて、反論する。
「そんなこと言うけど、ほんとに私が危ない時なら二人とも私を守りに来てくれるじゃない?」
「それとこれとは話が別です!」
緋焔に慈悲無く突っぱねられ、明日香は「け~ち~!」と怒っていたが、闢零は嬉しそうに笑っていた。
「んじゃ、どうしよ?そろそろやることも無いし、大通りに出てみようよ皆」
明日香の提案に、全員賛成のようで、誰も異議を唱える人間はいなかった。
「おぉ~!すご~い!」
裏通りから、大通りにでるとまるで、別世界に来たように活気が、人が溢れていた。
周りの店にあるのは、魔法用の道具から、機材まで様々なものを取り扱っていて。周りを見渡していると、明日香の目に気になるものが映り込む。
「じゅーどーの実技体験?なんか楽しそうね」
ひらがなで「じゅーどー」と可愛らしく書かれた道場の看板の下には「実技体験行っています!」という文字がやはり可愛らしく書かれていた。
「柔道って確か東方の方で伝わっている格闘技の一つですよね…」
アリシアがボソッと呟くと、明日香は「いいんじゃない?」と言って、緋焔達を連れて中に入って行った。
「意外と中は綺麗なんだね」
明日香が素直な感想を漏らす。
確かに、道場の中は綺麗に整頓されており、道場の中とは思えなかった。
中の廊下を進んでいると、大きな部屋──恐らく武道場だろう。緋焔が中の気配を探っていると。
「どうします?一応人の気配を観ましたが、敵と思しき気配はありませんでしたし問題ありませんよね?」
「そうね、もし居たら速攻で倒せばいいし」
そう言って明日香は扉を開く。
そこの中にいたのは───
「………お姉ちゃん、何でここにいるの……」
「それは、私は明日香のお姉ちゃんだから妹のいる場所にいるのは当たりま──」
そんな事を言っていたので、明日香は憎しみと憎悪を込めた視線で見つめると。
梓は腕を振りながら慌てて否定する。
「うそうそ!そんな事無いって!私は単純に近接戦闘が苦手だから柔道なら何とか補えると思って……」
明日香は訝しげな視線を送るが、少なくとも今は嘘をついていない気がするので許すことにした。
「まあ、今回は許すけど…次はないからね」
これでこのセリフも何回目だろうと思いつつ、梓に気になることを聞く。
「で、教えてくれる人って何処にいるのお姉ちゃん?」
「いや…それが、私が来たときも誰もいなかったし…何処にいるんだろうね?」
梓も頬をポリポリとかきながら困った表情を作る。う~ん、と明日香が首をかしげていると。
ドタバタという音がこちらに近づいてきていた。何事かと思って廊下を明日香がのぞこうと──
「うっわ!?ど、どいてどいてっ!!」
柔道着を着た少女が突撃してきて、すんでの所で、体をひねって回避した。
因みに突撃してきた少女の方は廊下をヘッドスライディングさながらの動きで滑って行った。
「痛った~ご、ごめんね…大丈夫…?」
「う、うん大丈夫…だけど…貴女は大丈夫なの…?」
少女はあはは……、と、苦笑しながら戻ってくる。
明日香達と同じ黒い髪をポニーテールでまとめた、快活そうな雰囲気を出している少女だった。
「来てくれた貴女達にはすっごい悪いんだけど、体験って実は一時間後なのよ…ごめんね…」
そのことを聞いて、明日香達はどうしようと考える。
何せ、明日香達はここに衝動的に入ったので、行けなかった時のことなど微塵も考えていなかったのだ。
「あうぅ…どうしよ、この後の事ぜんっぜん考えてないよ……」
「そ、それならここで時間つぶしても構わないよ?」
少女が申し訳なさそうに提案してくる。
明日香達にとっては願ってもいない申し出なので快く受け入れることにした。
「ごめんね…とりあえずお茶でも飲む…?」
少女の家、というよりも道場の二階に上がった明日香達は、小さな部屋に上がりこんでいた。
「あ、ありがと…私は御影明日香、えっと…ごめんなさい、勝手に上がっちゃって私知らなかったから…」
「こっちこそごめんね、何も書いてなかったから解らないよね…私は巨鳥 椎名よろしくね明日香ちゃん」
二人で握手を交わす。なんとなく相性が良いのか二人で笑いあう。
「えへへ~なんかこうしてると姉妹みたいだよね~明日香ちゃん、膝の上に座ってもらって良い?」
椎名のお願いを梓は聞きながら、
(明日香が私以外にそんな事するはずないもんね~それに私もそんな事してないし)
梓の思いとは裏腹に、明日香は笑顔で。
「うん、いいよ♪」
明日香は椎名の膝の上にちょこんと座る。
確かに、同じ黒髪で身長差もある二人だと本当の姉妹に見えなくもない。ちなみに本当の姉の梓はというと。
(にゃあぁぁぁぁっっっっっ!!??な、何で私にはしてくれないのにあの子にはしてくれるの!?こんなの絶対おかしいよ!)
明日香が椎名の膝に座っているのを見て発狂していた。
「ふふ~こうしてると本当の妹みたいだね椎名『お姉ちゃん』♪」
梓にはその一言がどんな武器よりも強力な一撃だった。全ての魔力を解き放って使う魔法や擬似的にずっと味方のターンが続く特技なんて目ではない。
「ウ、ウゴゴ…姉とはいったい…」
無に飲み込まれた暗黒魔導士のような台詞を吐きながら、明日香と椎名の様子を見ている。
梓のその嫉妬の籠った視線は、椎名と明日香のほんわかした雰囲気の空気に包まれた空間に阻まれていた。
「うえ~ん!どうせ、私はダメなお姉ちゃんだよ~!」
「ちょっ!?お姉ちゃんどうしたの!?」
梓は涙をこぼしながら、ダッシュで外の方へ走って行った。
全く状況を理解できない明日香と椎名は緋焔達の方を見て状況説明をお願いしたいが。
「ねえ、ひ、緋焔…お姉ちゃん一体どうしちゃったの…?」
「わ、私にも解らないです……」
そんなこんなのうちに一時間が経ち、この道場に通っている生徒たちだろうか、数十人の女の子たちがこの道場に入ってくることを上の窓から見ていた。
先ほど全力ダッシュで逃げた梓も戻ってきていて。
「さて、今度こそ始めましょうか!皆も下の武道場に来てね♪」
椎名は手を振って下に降りて行った。
明日香達も、用意をして下りようとするがその前に。
「緋焔達も一緒に実践体験するの?」
「いえ、私たちは心配ありません。自分の身程度どうにかなりますよ」
緋焔はそう言うと、闢零と共に剣の姿へと戻る。
(ちょっと剣の姿に戻って休んでおきますね)
(わ、私も…休ませて、もらいますっ…!)
(そうなの?お休み、また何かあったら呼ぶね)
明日香は二人を『箱』の中に入れると、明日香も階段を下りて武道場に向かった。
「それじゃあ、始めようかいつもの通り教えるのは私、巨鳥 椎名が教えるわ」
明日香達の後、正確な時間に来た生徒たちは、揃って椎名に『お願いしますっ!』と声を合わせて挨拶していた。
どの子も年は13、4歳くらいで、どの子も体育会系の雰囲気を出していた。
「さて…今日は一日だけ体験入学の子たちが来てるから、簡単な…気がする寝技を教えるわよ!」
気がする、と言われたことに若干明日香達はあれ…?、と感じたが、明日香達の技量ならば恐らくどうにかできるだろう。
「じゃあ、とりあえず最初は上四方固め位でもやってみましょうか……って、私また柔道着に着替えてって言うの忘れたわね…というわけで皆着替えてきて~あ、明日香ちゃん達のはこっちで用意するわ…あれ?さっきまでいた赤と青い髪の女の子どこ行ったの?」
「え?ああ緋焔と闢零なら二人で買い物に行ったよ、二人は私についてきてくれただけだし…因みに、髪が赤いほうが緋焔で青いほうが闢零ね」
「そうなの…ところで二人は姉妹なの?全然性格とかは違うけど、所々似ていたところはあったし……」
「あ、うんそうだよ緋焔がお姉ちゃん、闢零が妹ね」
「そんな事より、柔道着の着替えだったわねあっちの部屋に古い柔道着があるから着替えてきてもらえるかしら?」
明日香は、は~い、と軽く返事をすると、武道場の奥の部屋へと梓と入って行った。
「けほっ、けほっ!ここ埃だらけ…」
扉を開けた途端に、明日香達を大量の埃が出迎えた。
「ん~と…あ、あったこれね」
明日香が見つけたのは少し色あせた柔道着だった。
服がはだけないようにボタンが胸の部分についていて中々親切な作りになっていた。
「へぇ…意外と女の子に配慮しているんだ…お姉ちゃん、あれ?どこ行ったの?」
明日香がきょろきょろと周りを見回しているが、梓の姿はどこにもない。
明日香はため息を一つつくと二人分の道着を持って、扉を開けようとしたが、
「……あれ?扉、開かない……?」
どうでしたか?出来るだけ自然な感じに切らせてもらいましたが何か不自然な点があったらご意見よろしくお願いしますm(_ _)m




