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黒薔薇の騎士団  作者: すずしろ
E-3 機巧と魔道の帝国
26/77

初めての異世界へー1

というわけで連続投稿です。

ようやく、三章に突入、本格的な異世界編です。


 「お姉ちゃん、何、この格好……?」

 明日香が、殺意の籠った声で梓に問いただす。

 「え?ナース服だけど?」

 梓は当たり前のことを答えるように即答する。

 明日香が着ているのはナース服だ。………なのだが、明日香の服のサイズより少し大きめで、袖の部分から手が出ていない───萌え袖状態だった。

 「じゃあ、何でこんなに大きいのよ…手が出ないじゃん…」

 「それがいいんでしょ!」

 妙に力の入った返答に、明日香は何故かたじろいでしまう。

 本来の目的を思い出したのか、明日香は「そんな事より!」と声を荒げて。

 「アリシアとマルモが呼んでるから、来てって言ってたから!早く来て!あと、早く私の服代わりだして!」

 明日香が、ナース服を着ているのは単純にその服以外なかったからだ。

 ───因みに、明日香の部屋には梓がむやみに夜這いに来ないように、かなり強固な魔法をかけていたのだが、何故か今日の朝、服を確認したらクローゼットの中に今着ているナース服しかなかったのだ。

 しかも、スカートはタイトスカートではなく、ミニスカートで、しかもかなり短い。少し風が吹けば中に穿いている下着が見えてしまう程に短いのだ。

 「何でよ~ノーパン超ミニ萌え袖ロリナース何てこの世界に貴重な存在をどうして崩さなくちゃいけないの~?」

 梓がなぜ明日香が着替えなくてはいけないのかと真剣に考えていると。

 「…………これから、お姉ちゃんの隣で絶対寝ないから……もし私が、そんな気になっても絶対一人で寝るから」

 「ま、待ちなさい!着替え持ってくるから、それだけはやめて!そんなことしたら私は一人で明日香との夜の遊びを想像しなくちゃいけなくなるじゃない!つまり一人エ───」

 「言わせないよ?早く持ってきてくれないと本当に寝ないからね?」

 明日香の絶対零度のような命令口調に、梓は軍隊さながらの速さで明日香の着替えを部屋から取ってくる、というより、転送してくる。

 「こ、これでご容赦ください!」

 梓が手の上においているのは淡い桃色のフリルワンピースとフレアスカートだった。

 流石に明日香もまともなチョイスなので。

 「それなら良いよ。お姉ちゃん、早く行こ?二人とも待ってるよ」


 明日香はとりあえず部屋に戻って着替え、二人の待っている大食堂へと向かう。

 「来たわね、二人とも」

 マルモとアリシアは隣り合うように座っていた。

 明日香達も二人と同じように、隣に座り話を始めようとすると。

 「むふふ~明日香の隣~♪」

 「……お姉ちゃん、離れよっか」

 「ご、ごめんなさい…」

 明日香達のやり取りを見ながら微苦笑して。

 「……そろそろいいかしら?」

 完全に明日香の意識の外にいた、マルモに話しかけられ。

 「ひゃあ!?ご、ごめんなさい!もう大丈夫です!」

 「なら良いんだけど…話は異世界に行くことよ」

 その一言で、二人の空気が変わる。

 何より、二人はまだここ以外の異世界へ行ったことがないのだ。

 「や、やっと異世界に行けるんだね……」

 「いや、ここも十分異世界ですよ?」

 アリシアがつっこむが、二人は目を輝かせて、話を聞いていない。

 「それで、どうやって行くんですか?」

 「意外と簡単に行けるわよ?」

 マルモが箱の中から、白い小さな立方体を取り出した。

 頂点部分には、鍵穴のようなものがついている。マルモは、それを明日香に投げて渡す。少し危なげがなかったが、キャッチしてポンポンと投げながら、その立方体を見ている。

 「これ何?」

 「それが、異世界への扉よ」

 流石に、その発想はなかったのか、明日香達も「え!?」という表情で手の中の立方体を見つめている。

 「こ、こんな小さいのが異世界に行く扉なの……」

 「何か、もっと大きい、まともな扉を想像していたから、ちょっと拍子抜けね……」


 二人ともが反応は違えど、驚いているのをマルモ達が見ていると。

 もう一人のギルドメンバー──藤宮凜が入ってくる。

 「ふぁ…もう皆集まってたんですか……」

 いつもは、ポニーテールの黒髪と、伊達眼鏡が合わさりいかにも賢そうな雰囲気を出しているのだが、今はポニーテールではなく下しており、眼鏡も外していてどちらかというと、気弱な少女のような雰囲気を出している。

 あくびをして、涙の出た黒い瞳を着崩した白衣で拭いて。

 「さて……私は明日香さんたちに異世界へ行く方法とその他いろいろを伝えればいいんですよね?」

 いつもの理知的な目に変わると、白衣を着なおして。

 「「お願いします!」」

 二人が声を合わせて、挨拶する。

 「まぁ、そんなに多くもないので別にどっちでもいいんですけどね。それでも、教えておくことに越したことはありませんし…まず一つ目、異世界へ行く方法はそこの箱───私は『跳び箱』って呼んでますけど、そこに鍵を差し込むんです」

 凜の説明を聞いているがその肝心の跳び箱に差し込む鍵の心当たりがないのだ。

 「でも、鍵ってどんな鍵なの…?」

 「何言ってるんですか、自分たちが持っているじゃないですか」

 ほら、と指差す先にあったのは、オルディアから受け取った二人の母親──つまり、翠が明日香達に送ったブローチだった。

 「このブローチがどうかしたの?」

 「そのブローチは黒銀石って素材でできてるのよ特徴は魔力を流すことで形状が変わるの。んで、そのブローチって二つで一つなのよ貴女達みたいに」

 凜の説明を聞いて、理解したようで、二人はブローチを合わせて。

 「じゃあ、いっせーのでやろっか」

 「いいわよ、せーのっ!」

 二人が同時に魔力を流すと、ブローチの形が変わり、丁度跳び箱の鍵穴に入りそうな形に変わる。

 「お~、ほんとに変わった!じゃあ、早速~♪」

 明日香は形の変わったブローチ──漆黒色の鍵を跳び箱に差し込もうとすると、凜が止める。

 「ま、待ってください!まだ言ってないことがあるんですよ!二つ目は異世界についたら、すぐにそこの世界の一般的な常識を魔法で覚えてもらいます」

 「え~なんでそんな事しなくちゃいけないの?」

 「それは、異世界の中でも異世界人の事をよく思わない世界もあるんですよ。考えてみてください、たとえば自分たちの世界では、明らかにマナー違反な行為を異世界人は知らずに行うんですよ?しかも、相手は異世界人だからって言い訳が使えるんですよ?少なくとも私は怒りますよ」

 確かに、凜の言っている事には筋が通っていたし説得力もあった。

 「確かに…自分が鍵かけているのに無理やり入ってもらわれたら、確かに迷惑だもんね~」

 と、梓の方向を向きながら明日香が言っていると、梓は対称的に明後日の方向を向いていた。

 「そういうわけで、行ってもいいですけど、ちゃんと魔法で常識部分は覚えていておいてくださいね!」

 そう言うと、凜は食堂を出て行った。


 「じゃあ、気を取り直していきましょうか!」

 明日香が元気いっぱいにそう声を上げると、アリシアとマルモも準備を始める。

 といっても、二人とも服を着替えるだけなのだが。

 今の服装は、マルモはクールそうな見た目と反して水玉模様のかわいらしいパジャマだった。

 アリシアは薄紫色のネグリジェだったので、二人は梓が使ったような、転移魔法を使っていつもの服を取り出していた。

 アリシアは赤と白を基調とした軍服のような服に、マルモは白と銀のローブのような服に着替える。

 「準備完了よ。さぁ、行きましょうか」

 明日香は、箱の中に鍵を差し込む。

 すると、箱を中心に光が溢れる。


 刹那、明日香達四人は空に放り出されていた。

 「うわぁぁぁぁぁっっっっっ!!?」

 明日香が、叫びながら自由落下していくところを、梓は素早く魔法を組み。

 「待ってて明日香!『ウインドヴェール』!」

 明日香の周りに気流が発生し、落下速度を遅らせる。

 危機一髪、地面に追突することを回避し、何とか地面に降り立った四人は改めて辺りを見回して。

 「…なんか、久しぶりね…こんな風景を見るのは」

 「そうだね、いつぶりだろう?」

 そういう二人の目の前には、大量のビル群──コンクリートジャングルが広がっていた。

 「さて、二人とも、さっさと記憶にこの世界のことを追加するわよ」

 マルモは即座に銃を抜いて、何かの玉を込めている。

 「あ、あの…まさか、どこかの能力者さんみたいに銃弾を額に打ち込んで記憶に追加するつもりですか……?」

 マルモはにっこり笑って。

 「よく分かったわね、その通りよ」

 そう言って、二人が反応する前にクイックドロウの要領で、二人の額を正確に打ち抜く。

 打ち抜かれて、二人は「っ~~~!」と地面の上を転げまわっていた。

 「痛いじゃない!てか、こんな風にする必要本当にあるの!?」

 こうやることが、謎のようでマルモにもはや半ギレで、聞くと。

 「……あるわよ、あるからやってるんじゃない………………こうしたかったから、何て言えないわね…………」

 「ちょっと待って!今小声で『こうしたかった』って言わなかった!?」

 二人がマルモを言及していると、二つ先くらいのビルの所からだろうか、悲鳴が聞こえた。

 明日香は真っ先に反応して、すでにその方向へ走り出している。

 「異世界初仕事よ!『顕現コール緋焔・闢零』!」

 虚空から、紅い鞘と蒼い鞘を持つ二つの剣が明日香の手に現れ、それを宙に投げながら、もう一つの魔法を唱え。

 「『解除デザイア』!」

 すると、剣は姿を変え、緋色の髪と蒼色の髪の二人の少女に変わった。

 「命令を、お嬢様」

 緋色髪の少女──緋焔が明日香に命令を求める。

 明日香は、緋焔だけではなく闢零にも指示を同時に出す。

 「声からして多分女の人…闢零は、女の人の所へ、緋焔は私と一緒に襲った人を捕まえるわよ!」

 「りょ、了解、です…!」

 「分かりました」

 指示が伝わる頃にはもう、悲鳴が上がった場所の近くまで来ていた。

 辺りには人気の無いビル群ばかりだったが、その中に倒れている女性を見つける。

 17,8歳くらいの少女だろうか、身なりはそれなりにいい服を着ているし、銀色にも水色にも見えそうな美しい長い髪が育ちの良さを表していた。

 「だ、大丈夫、ですか…?」

 闢零が恐る恐る聞いてみると、「うぅ~」と、うなり声を上げながら起き上がる。

 「わ、私は大丈夫だよ~それより、私のバッグが盗られちゃったの~」

 「そ、それなら今、お嬢様が、取り返しに行ってくれて、ますからだい、じょうぶです…!」

 闢零が、胸の前で、腕を曲げて少女にそう言うと、その少女もくすっ、と笑い。

 「そう?それじゃあ、期待して待ってるわ~♪」


 「了解よ闢零!」

 闢零からの遠話で確認し、バッグを盗った人間を探していると、男には到底似合わないであろう、白色の細かい細工のしてあるバッグを持った男が走っていた。

 「見つけた!緋焔!」

 緋焔は魔法で、一瞬だけ身体機能にブーストをかけると、一瞬で男の目の前に立ちはだかる。

 「何だ!?てめぇ──」

 それ以上は何も言わなかった、否、言えなかった。

 男が立ち止まった刹那に、明日香が後ろから足払いをかけ、追撃とばかりにそのどてっ腹に十分に加減した踵落しをお見舞いしたからだ。

 たった一発で沈黙した、男からバッグを取り返し、闢零の所へ戻ろうとすると。

 「待ちなさい、この泥棒!」

 と言う声が後ろから聞こえた。


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