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白骨少女が逝くVRMMO記  作者:
鬼の里
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運命(さだめ)

ご高覧いただきありがとうございます。


大晦日ですね。蕎麦食べましたか?

「でっか…」


 私は今、世界樹があるらしい大森林と呼ばれる場所に少し足を踏み入れようとしていた。

 大森林というくらいだから大きい森なんだろうな、程度の認識で来たけどいざ目にしてみれば私の予想を大幅に裏切るようなものだった。マップを頼りに進むと、大森林に差し掛かるあたりで切り立った崖が展開されていて、底は真っ暗でよく見えない。というか崖と言うか窪みに近い気もする。

 そうそう、これはついこの間知ったたことなんだけど、ダンジョンとか街の中で物じゃなく空間に対して『鑑定』を使うと、その場所に対する鑑定結果が出るらしい。


「こう…かな」


 試しに崖の先の真っ暗でよく見えない空間に『看破』を使用してみる。


◇◆◇◆◇


大森林


かつては地表に存在していたが、今は地下深くに押し込められている森。

森の中央にはあらゆる世界へ繋がる大いなる樹が存在している。

樹の根元には隻眼の賢者が住むと言われている。


◇◆◇◆◇


 さすがに推奨レベルなんかの情報はないみたい。まあ見えたところで私には意味ないんだけども。


「かなり向こうの方にうっすら見えるけど…あれが世界樹ってやつなのかな」


 巨大な窪みの先の方にうっすらと1本の柱のようなものが見える。あそこまで行くのはいいとして、どうやって行こうか。まあ手っ取り早いのは『魔装』を使って飛んでいくことだけど…


「君たち、ちょっとの間私の体につかまってられる?」


 ワンちゃんズにそう言ってかつてヴィオがそうしていたように、外套の内側でお腹側と背中の翼よ翼の間にしがみついてもらう。よし、これなら行けそうかも。あぁ、この重みが懐かしく感じる。ヴィオ元気にしてるかな。

 感傷に浸るのもそこそこに、『魔装』を発動して見た目は骨組みだけの翼をはためかせて底に見えない崖から飛び立った。


「…っ!?なに!?」


 飛び立った瞬間に、頭の中に雑音が響き渡る。例えるなら砂嵐状態のテレビが一番近いだろうか。滞空状態をを維持できなくなり、頭から落下していく。体にしがみついたままのワンちゃんにはどうにか生き残ってほしくて、背中にいたワンちゃんを引き寄せて2匹とも抱きしめた状態になった。

 頭の中でごうごうと響く雑音の中に、聞き覚えのある声が聞こえた気がした。


―――ザザ、ザザザザ―――


《…………プレイヤー「ディラ」の大森林への進入を確認》

《想定を下回る能力値を確認》

《現時点での目標の達成が困難と判断》

《「豁サ繧貞昇繧」による存在進化の許可を申請》

《…………》

《「驕句多繧貞昇繧」による却下を確認》

《プレイヤー「ディラ」による、個体「スコル」「ハティ」の成長が不可欠と判断》

《プレイヤー「ディラ」の目的を確認》

《繧ヲ繝ォ繧コの泉にて、「豁サ繧貞昇繧」の化身(アバター)へ指示》

《「繧ィ繝?繝悶Λ」の干渉を確認》

《プレイヤー「ディラ」へのこれ以上の干渉は危険と判断》

《………………………………………》

《ご武運を、私の愛し子》


―――ザザザザザザ―――ザザ―――


《称号『死を織りなす者』を取得しました》

《称号『宿命の反逆者』を取得しました》

《称号『棺離寫のお気に入り』が、称号『運命神の愛し子』へ変化しました》


・・・


 目を開けると、木張りの天井が視界に広がっていた。最後に使った宿屋かと思ったけど、どうやらそうではないようだ。


「ここは…」


 体に布団がかけられていて、自分がベッドの上にいたことを今理解する。


「そうだ、ワンちゃんは…」


 上半身を持ち上げて座位の体勢を取ると、自分の体にかかる真っ白の布団の上に2匹の小さなワンちゃんが寝ているのが目に入った。2匹とも目立った外傷もなく、スヤスヤと若干うるさめの寝息を立てながら眠っていた。あぁ、よかった。私のせいでワンちゃんズが死ぬなんてことにならなくて。

 ホッと胸をなでおろすと、扉が開いて1人の女性が入ってきた。


「起きていたんですね」


「えっと、私、助けてもらった…んですよね」


「構いませんよ。これもまた運命(さだめ)なのですから。私はそれに従ったまでです」


「定め?」


「ええ、あなたがこの森にやってきたこと、災厄の種を連れていること、我が主の干渉を受けたこと、それによって気を失い私の元へやってきたこと、全て運命(さだめ)なのです」


「え、なんで…」


 見ず知らずの初対面の人に私の行動を知り尽くされていて寒気がした。本当に寒いわけではないけど思わず自分で自分の体を抱きしめると、違和感に気付いた。


「あれ、外套が…え、じゃあ、顔が…」


 天目さんたちにも見せたことのない素顔が晒されていることに気付き、布団に潜り込む。


「大丈夫ですよ。少なくとも私は忌避したり致しません。あなたが地獄の女王の手を借りてそうなったこともまた運命(さだめ)なのですから」


 しばらく前のことですらこの人には知られていた。


「あなたはいったい…」


「私のことはノルニルとお呼びください。そして私が何者なのか、何故ディラさんのことを知っているのかという話ですが…」


 ノルニルと名乗った女性は眉間に皺を寄せて腕を組み、思案する様子を見せた。


「少し話が長くなりますが、聞いていかれますか?」


 これがただの1イベントではないことを確信した私は、ゆっくりと首を縦に振った。


・・・


『死を織りなす者』

効果:属性『死』に関するスキル効果、熟練度の上昇率増大

条件:???


死とは過去。死とは既に過ぎ去ったもの。喜べ、汝は未来を恐れることはない



『宿命の反逆者』

効果:特定の種族に与えるダメージが増加(極大)

条件:???


反旗を翻すのだ。定められた未来に我々が屈することはない



『運命神の愛し子』

効果:一部NPCからの好感度上昇(極大)、一部機能の制限

条件:???


世界を管理する3柱の神のうちの1つに見初められし者の証。

理菜さん、モテモテです。


来年の初投稿に関してですが、1/5(水)投稿にいたします。

三が日は予定が詰まっているので、1日空けた後の5日ということで。

それでは皆様、5日後にお会いいたしましょう。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 素顔は天目達に晒してませんてした?
[一言] 隻眼の賢者ってオーディン様じゃないですか、ヤダー ディラを助けたノルニルは3姉妹のどの子なのだろう? 称号から考えると長女かな?
[一言] 明けましておめでとうございます。 ノルニルはウルズの泉の女神ノルンの複数形だから運命の三女神の合体した存在? それともウルド・ヴェルダンディ・スクルドのどれか一人の化身がそう名乗ってるだけ…
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