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白骨少女が逝くVRMMO記  作者:
死者の国
33/96

因果応報

ご高覧いただきありがとうございます。


「え・・・?これ・・・わたし・・・え・・・?」


 なんだこれは。姿見に映るその姿は異形の化け物としか言い表すことのできないものだった。リアルと変わらないそのままの私の体に、黒い骨のような物質で構成されている尻尾と角と翼。ここまではまだ許容範囲内だ。近くで見なければそういう類の竜人に見えなくもないから。ただ問題はこの顔。こっちもリアルと何も変わらない顔・・・なんだけど、右の頬から首にかけての肉が一切ない。中学生の頃に見た人体模型の顔と何ら変わりない骨が露出されていた。

 これには流石の私もショックを受けざるを得なかった。ちゃんとキャラクリしておくんだった。ゲーム内アバターだったら多少の衝撃くらいで済んだんだろうけど、紛れもない私の姿でこの状態はちょっとキツイ。


『まあ、見ての通りよ。儀式がまだ終わってないときに私と話してて首を思いっきり振ったでしょう?その時に首から右頬の部分の魔力が剥がれちゃったのよ。いくらディラの自業自得とはいえ説明不足だった私にも責任はあるわね』


「そ、そんなことないです。お姉さんの言った通り全部私の自業自得なので・・・それに、お姉さんにはこうして儀式をして頂いたし、感謝することはあっても恨むことなんてあり得ません!」


 そういうことならお姉さんに謝られる筋合いはない。完全に私の責任でしかない。でもこの見た目はないよねえ・・・若干しょんぼりしながら、すっかり人間のものに戻った手で頬と首筋を撫でる。肉の部分と明らかに段差ができていて、柔らかい頬の肉はなく硬い骨がそこにはあった。左側からの横顔はただの角の生えた人間なんだけど、右側がやばい。蘇生に失敗した半アンデッドみたいになってる。というかこれ実質ゾンビでは?

 そういえば、お姉さんに儀式を施されてから何もメッセージウィンドウが出てないけど、種族の変化とかはない感じかな。


◇◆◇◆◇


称号:セットなし


名前:ディラ

種族:呪狂(カースドインセイン)竜骸(ワイバーンスケルトン)

職業:‐

所持金:10000ギル


Lv:‐

HP:320/320

MP:8900/8900

SP:88


装備:瘴石英の細剣、聖穢の外套、瘴気の編み上げ靴、蜀・逡後?鬥夜」セ繧


スキル:「闇魔法Ⅱ」「錬成」「瘴気」「念話(邪)」「看破」「吸魔」「竜の因子」「詠唱破棄」「細剣術・流麗」「細剣術・猛撃」「呪法」「魔装」


パッシブスキル:「冥王の加護」「呪狂竜」


取得称号:『管理繝ウのお気に入り』『艱難辛苦を求めし狂人』『最速の異界人』『邪王龍の友』『超オーバーキル』『弱点克服への近道(聖)』『暗愚の屍』『卑劣』『冥王の友』『呪いと狂気の二重苦』『物好き』


アイテム:存在進化のスクロール、聖水×9、瘴気に染まりし錆びた長剣、英華の宝玉、回復のポーション・魔除×3


◇◆◇◆◇


 これといって目立った変化はなさそう。やっぱりあくまでも骨のまんまらしい。前までどんな見た目だったのか知らないけど、この見た目じゃしょうがないのかもしれない。

 よく見ると、『弱点克服への一歩(聖)』という称号が『弱点克服への近道(聖)』という称号に変わってた。ああ、これが拷問もといお姉さんの実験中にゲットした称号ね。名前的に変化前の称号の上位互換かな?


◇◆◇◆◇


『弱点克服への近道(聖)』

効果:聖属性ダメージを軽減する(小)

条件:短時間で一定以上の弱点属性のダメージを受ける


君の性癖を否定するわけではないが、そういうことは人の目につかないところで頼むぞ。


◇◆◇◆◇


 誰がドMだ!なんか最近ゲットする称号のフレーバーテキストが失礼なものが多い気がする。『卑劣』は割と有用な効果持ってるからいいんだけど、『物好き』に関しては完全なお遊び称号だし。なんかこう、もっとカッコいい称号とか欲しいなあ。私の語彙力では到底言い表すことができないから何とも言えないけど。


『自分のことでいっぱいいっぱいになるのも仕方のない状況だけれど、自分の子どもを放っておくなんてひどい親がいたものね。ねえヴィオ?』


「別に育児放棄してるわけじゃないです!ヴィオごめんね、わかる?ママだよー」


「キュ?」


「ほら私だよ、ディラだよディラ。見た目が変わりすぎたから違和感すごいと思うけど、紛れもないヴィオのママだよ!」


 そう言って両腕を広げて万全のお迎え体勢を取ると、ヴィオは訝しげな表情をしながら私に向かって飛んできて、めいっぱいに広げている両腕をスルーして私の頭の上に乗った。え?そっち?


「キュウ!キュキュウ!」


 そうするとヴィオは私の頭の上で楽しそうな声を上げて、復活したての髪の毛をくしゃくしゃにしてきた。まあなんにせよヴィオに私だと認識してもらえたみたいで何よりだ。

 そしてヴィオなんだけど、私の思っていた通りの見た目をしていた。30センチくらいの体に黒寄りの紫色の鱗、そしてまん丸の瞳。ほんとに創作でよくある『幼いドラゴン』って感じの見た目をしている。


「かわいいねえ、ほんとにかわいい」


 魔力だけ見えてる状態でもめちゃくちゃかわいかったのに、いざ姿が見えてしまうとどうなるか。そう、私の頬の筋肉がだらしないことになってしまうのだ。そしてその様子をお姉さんにじっくりと見られていたようで、視界の端でニヤニヤと趣味の悪い笑みを浮かべるお姉さんが見えた。


「なんですか、気味の悪い笑い方して・・・」


『あら失礼ね、私はただ幸せそうに笑う方がディラに似合ってると思っただけよ』


「・・・本当ですか?何か怖いこと考えてませんよね」


『誓って本当よ。ねえビュート?』


「ええ、楽しそうに微笑むディラ様は非常にお可愛らしいものでした」


 そう言ってお姉さんの隣に音もなく現れたのは白髭を蓄えた少し細身のお爺さんだった。


「え、その声って・・・」


「私ももう一度自己紹介した方がよさそうですね。私はお嬢様の専属執事を務めております、ビュートと申します。こんな爺で落胆しましたか?」


「い、いえ、全然そんなことなくって。むしろイメージ通りだったのでびっくりしちゃって」


 ビュートさんも概ね想像通りの見た目をしてはいたんだけど、思っていたよりも顔がいい。イケオジってやつだ。別に枯れ専なわけじゃないんだけど、こんな人がリアルにいたら惚れる自信しかない。


『ディラも落ち着いたことだし、部屋に戻りましょうか。こんな陰気臭いところにずっといたらキノコが生えてしまうもの』


 そう言って階段の方に向かうお姉さんについていく。階段の靄は目が復活しても相変わらずだった。別に魔力とかじゃなくて視覚を阻害するような場所なのかな。


「そういえば、儀式の話で有耶無耶になってましたけど、世界樹の根はどこで渡せばいいですか?さすがにこのまま依頼の品を渡さないのは寝覚めが悪いというか・・・」


『そうねえ、じゃあ私の部屋に戻ったら出してもらおうかしら』


「え、お姉さんの部屋ってこの階段が出てきた部屋ですよね。流石に広さが足りないと思うんですけど」


『大丈夫よ』


 よくわからないけど大丈夫らしい。そんなことを言ってる間に階段が終わってお姉さんの部屋に出る。前に見た時もすごかったけど、こうして肉眼で見るとまるで違う世界にいるみたいだ。お姉さんの部屋には、どれほどの価値があるのか想像もつかないようなよくわからない魔道具や本がそこら中にあった。シャンデリアもちゃんと金属だった。骨じゃないようです。


『じゃあ()()()わね』


 お姉さんがそう言って手をパンパンと叩くと、部屋の壁や天井が消えて周りに先を見通せないほどの地平線が広がっていた。え?さっきまでただのちょっとした広めの部屋だったよね?どういうこと?こんなことをしたら城下町まで覆いつくされるんじゃあ・・・


『別に大したことじゃないわよ。私の部屋の中の空間を少し捻じ曲げて広くしただけよ。だから外から見たら何も変わってないし、害もないわ』


 なるほど、何もわからないことがわかった。無理に考えてはいけないやつだね。なんたってファンタジー世界だもの。あまりの衝撃に呆けていると、お姉さんが促すような仕草をしたからインベントリから世界樹の根を取り出す。


『あー・・・本当にフヴェルゲルミルの上まで生えてきているのを抉り取ったのね。私がお願いしたのは枝だし、これだけ貰っておくわね』


 お姉さんは指から魔力の刃みたいなものを出すと、世界樹の根に向かって軽く振った。すると、世界樹の根の端っこの部分が綺麗に切り取られていた。私たちのサイズからするとかなりの大きさだけど、世界樹の根全体から見ると1/100にも満たないような量だ。


「え、それだけでいいんですか?」


『これでも貰いすぎなくらいよ。それに世界樹の根はヴィオの主食でしょう?それならディラが多く持っている方がいいわ』


《特殊依頼『氷獄に伸びる根』を達成しました》


 だそうだ。なんだか釈然としないけどそういうことにしておこう。依頼も達成されたみたいだし。

 私が世界樹の根をインベントリにしまうと、部屋のサイズが元に戻った。十分な広さの部屋のはずなのに狭く感じる。


『せっかく肉眼になったのだからしばらく拠点になるここ(ヘルヘイム)でも見回ってきたらどうかしら?人族の町とさほど変わりはないわよ』


 確かに、お世話になる町の確認くらいはしておいた方がいいかもしれない。それにお姉さんの机の上に大量の書類の山が見えるからお姉さんも忙しいんだろうね。


「そうですね、お姉さんの国を見させてもらいます」


『じゃあビュート、城の出口まで送ってあげて』


「承知いたしました。ではディラ様、こちらへ」


 ビュートさんに連れられてお城の中を歩いていく。


 ・・・あれ?そういえば、お姉さんはなんでヴィオの食べるものを知ってたんだろう。私が肉付けされてる間一緒にいたっぽいからそれくらい打ち解けてるのかな?

肉付け終わり&依頼完遂回です。

自分の姿を見た理菜はかなりショックを受けていましたが、ヴィオのおかげで持ち直しました。やはり人生において癒しは必要なのです。

しかし、アバター設定なしがここで牙を剥くとは理菜も思っていなかったでしょう。でもこれはAIは悪くないですからね、気の毒ですが理菜が悪いです。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 今の見た目って、黒髪黒目の日本人の女性に竜の骨の角、しっぽ、翼がついてて、顔の右頬辺りから首の右側あたりが骨露出であっていますか?
[一言] この儀式って一回こっきりなのかな? 欠けてる部分をもう一回埋めればいいだけな気もするんだけどそれは出来ないのだろうか。
[気になる点] 小説の展開の都合上仕方ないのだろうなとは思うんだけれども、これがリアル側世界だったり異世界の話ならお姉さんの説明不足な所はあっても自業自得の範囲内で済むかもしれませんが、 ゲーム内の話…
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