呪いの屍
ご高覧いただきありがとうございます。
《存在進化『???』の解放 823/1500》
《存在進化『???』の解放条件をすべて満たしました》
《存在進化『???』が解放されました》
《・・・》
《存在進化『???』の解放 823/1000》
《存在進化『???』の解放条件をすべて満たしました》
《存在進化『???』が解放されました》
《解放された進化先が複数存在します》
《進化先を選択してください》
▶『骸骨騎士』
▷『???』
▷『???』
《一定時間回答が得られない場合、解放された存在進化先からランダムで選ばれます》
えーっと、いったん状況を整理しよう。まず私はヴィオのご飯を探してここまで来た。それで、ヴィオが空にある大きい根っこを自分で落としてそれを食べて、それがお姉さんから探すように頼まれた根っこだった。そして私がスリップダメージで死にそうになって蜜酒を使って回復した。で、その蜜酒のデメリットで最大HPがめちゃくちゃ下がった。・・・そして進化アナウンスが来た。
「どういうことだってばよ」
とにかく、このままここにいたらスリップダメージが入りまくるからまずはこのエリアから出よう。そうしないと進化どころじゃないからね。
「ヴィオ!行くよ!」
「キュ!」
湖のほとりで花と戯れていたヴィオを呼んで走り出す。
このメッセージを見るに、突然私の進化先が2つ解放されてその選択肢から選ばないとゲーム側が勝手に決めてしまうということなんだろう。それは別に構わないんだけど、如何せん場所が悪すぎる。このエリアから出るのに1分はかかるけど、前に進化したときはそんなに待ってくれなかった。
急いで茂みの中を駆ける。途中で頭に枝がぶつかったり根っこに躓いたりするけどお構いなしに走る。もうちょっと、もうちょっとで茂みを抜ける。
《一定時間回答がされませんでした》
《よって、存在進化先をランダムに決定します》
頭の中でアナウンスが流れると同時に茂みを抜けた。
「こんな時に・・・!」
茂みを抜けた先には、なんと氷熊が私を待ち伏せするかのように立ちふさがっていた。この時間がないときにピンポイントで現れるとか誰かに仕組まれてるんじゃないだろうか。
《『???』へ存在進化します》
《プレイヤー『ディラ』の存在進化を開始します》
あ、もう駄目だ。私は今から動けなくなる。全身から力が抜けてその場にへたり込んでしまう。
「ヴィオ、私を守って・・・」
「キュ!」
私の体が黒い靄に包まれていく。あの時と同じだ。何もできなくなる前にヴィオに目の前の熊さんを任せて、黒い靄に体を預ける。あ、なんだかふわふわしてきた。
そして意識が暗闇に落ちていった。
《プレイヤー『ディラ』が隠し種族、『呪狂竜骸』へと存在進化します》
《これらは、世界の声として全プレイヤーへと発信されます》
《『繧ィ繝ォ繝■?繧ケ』の意志により、世界の声は秘匿されました》
《プレイヤー『ディラ』に存在進化の恩恵として、パッシブスキル『呪狂竜』が与えられます》
《プレイヤー『ディラ』に存在進化の恩恵として、スキル『呪法』が与えられます》
《プレイヤー『ディラ』に存在進化の恩恵として、スキル『魔装』が与えられます》
《称号『呪いと狂気の二重苦』を取得しました》
《称号『物好き』を取得しました》
《『繧ィ繝ォ繝■?繧ケ』の意志により、レベルシステムは解放されませんでした》
《プレイヤー『ディラ』の進化を終了します》
《・・・》
《アーゲリア大陸西方にて、未知の種族『呪狂竜骸』が誕生しました》
《『呪狂竜骸』が災害級生物に定められました》
《この世界の声は全プレイヤー、神職NPCに通達済みです》
『むう・・・知られてしもうたか。もう少し隠しておきたかったのじゃが・・・』
『まあよいじゃろう。我が国に攻め入ろうとする馬鹿者なぞおらんしな。しっかり育つんじゃぞ、ディラ』
・・・
「んぅ・・・」
目が覚めると、大きな木にもたれかかっていた。私が進化する前にいた熊さんもいない。ヴィオがやってくれたのかな。あれ、そういえばヴィオがいない。
「ヴィオー?」
「キュウ!」
ヴィオを呼んでみると、上の方から声がした。上?
空を見上げると、ヴィオが小さな翼を頑張って羽ばたかせながら私の元に戻ってきていた。
「もしかして周りを警戒してくれてたの?」
「キュ!」
ヴィオが首を振って空の上を指し示した。そこにはさっきヴィオが抉り取った世界樹と邪界樹の根っこが。ああ、お腹減ってたのかな。そうだよね、私がインベントリにしまっちゃったからヴィオは食べられないもんね。
というか私をほったらかしてご飯食べてたんだねヴィオ。いや私が頼んだのは私を守ることだけだったからいいんだけどさ。まあ生まれたてだし、私が母親としていろいろ教えていこう。
「キュウ~?」
ヴィオが私の後頭部に回り込んで角をつついてきた。こらこらくすぐったいぞ。・・・うん?
角のある部分をまさぐると明らかに前よりも立派な出っ張りがあった。そういえばまだ体がどうなったかチェックしてなかった。外套に少し積もった雪を払って立ち上がって見える範囲を観察する。
うーん、目立った変化は角と尻尾くらいかな。角はちっちゃい三角錐みたいなのが耳の後ろに生えてただけだったのが、そこそこ大きくなってる。15センチくらいかな。尻尾は元々膝くらいまでの高さだったのに普通に歩くと地面についてズルズルと引きずってしまう。ちょっと不便かも。
スリップダメージエリアも抜けたし外套を脱いで背筋を伸ばす。ポキポキと背骨が鳴る感覚がある。この状態で背骨伸ばしても大丈夫なんだろうか。命に直結してそう。そのままストレッチの要領で上半身を左右に振っていると、妙な抵抗を感じた。なんか空気が重い、物理的に。
まさかと思ってちょっと感覚を背中に集中させると、人間ではありえないものが私の背中にくっついて、いや、生えていた。
「羽、だねこれは・・・」
羽が生えていた。まあ角と尻尾があるし、このまま竜として正統進化していけばそんな未来もあるかもね~くらいに考えていたものがこんなにも早くやってくるとは。飛べるとか思ってないよ。私は骨だってわかってるもん。風を受ける翼膜なんてどこにもない、あるのは骨組みだけ。・・・悔しくないし。
しかし、羽かあ。いよいよ人間復帰は難しいのかもしれない。これまでは惜しみなくこの骨のボディをさらけ出してきたけど外套は標準装備にした方がいいかもね。
さて、気を取り直して今度はステータスを見ていこう。進化前にHPが3桁になってたけど、進化で戻ってるといいな。
◇◆◇◆◇
称号:セットなし
名前:ディラ
種族:呪狂竜骸
職業:‐
所持金:10000ギル
Lv:‐
HP:320/320
MP:8900/8900
SP:88
装備:瘴石英の細剣、瘴気の編み上げ靴、蜀・逡後?鬥夜」セ繧
スキル:「闇魔法Ⅱ」「錬成」「瘴気」「念話(邪)」「看破」「吸魔」「竜の因子」「詠唱破棄」「細剣術・流麗」「細剣術・猛撃」「呪法」「魔装」
パッシブスキル:「冥王の加護」「呪狂竜」
取得称号:『管理繝ウのお気に入り』『艱難辛苦を求めし狂人』『最速の異界人』『邪王龍の友』『超オーバーキル』『弱点克服への一歩(聖)』『暗愚の屍』『卑劣』『冥王の友』『呪いと狂気の二重苦』『物好き』
アイテム:存在進化のスクロール、聖水×9、瘴気に染まりし錆びた長剣、英華の宝玉、回復のポーション・魔除×3
◇◆◇◆◇
というわけで2度目の進化回でした。
進化はしたもののHPが・・・という感じですね。どこまで減るんでしょうか。
そしてついに翼が生えました!理菜は飛べないと思っているようですが、どこかに飛行する骨がいた気がします。投稿者の気のせいでしょうか?
呪狂竜骸という種族は決まっていたんですが、この話を投稿する直前まで読み方を悩んでました。結果的に書いたままではありますが、まあいい感じに収まったのではないかと思います。




