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第九十五話 レイvsガンスロット



 レイとガンスロットは岩で出来たコロシアムの中で相対する。

 ゼロ達は観戦席でその戦いを見守り、ミディはワクワクしながら戦いの開始を待つ。









 これから戦いをする二人だが、まだ戦いは始まらずに会話をしていた。




「お前は強いのはわかる。だが、俺には勝てない」

「……だから?」

「降参しろ。俺はゼロにしか興味はないからな」


 ガンスロットはレイに降参を促していた。戦わなくても、結果はわかっていると言うように…………






「……ふーん、私がメイガス王国を消したと言っても?」

「なに……?」


 レイはいつも通りに無表情でメイガス王国を消したのは自分だと教えた。

 ガンスロットは街を消したゼロが許せないと思い、決闘を挑んできたのだ。

 だが、急に目の前の少女が自分がメイガス王国を消したと言ってきたので少々は動揺してしまったのだ。

 ガンスロットにとってはメイガス王国は初めて冒険者になった場所であり、街の人からも良くしてくれた場所でもあり、ガムロとミテラと出会った大切な思い出が残っているのだ…………




「……私はあの街をゴミのように消してあげたのよ……? 生き残った者はいないし、女子供でも何も未来を残さずに塵になったのよ? ふふっ…………」

「き、貴様……」


 ガンスロットに、挑発のように無表情から少し暗い笑みを浮かべてメイガス王国をどうしたのか話してあげた。

 案の定に、ガンスロットは怒りを押さえられず、覇気と殺気がレイに全て向かう。




「……それでも、降参しろと言うの……?」

「……いや、前言撤回させてもらおう。お前もゼロと共に消えてもらうっ!」

「ふふっ……、そうこなくてはね……」


 レイは『禁咒王グリモア』の象徴である魔導書を手元に発現する。






「……先手はもらうよ……。”天涯隕石メテオ”!!」






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 レイが魔導書を発現した時、観戦席では…………




「おい、好きにやれと言ったが、こっちまで巻き込んでいいと言ってないだろうが…………ミディ!」

「なんじゃ?」

「すぐにここを結界で守った方がいいぞ。アイツは見境がないからな」

「へ? どういう…………」




 ことだ? まで続かなかった。

 上空から隕石が無差別に落ちてきたからだ。もちろん、ゼロがいる観戦席にも範囲に入っていた。




「っ!? ノエル!!」

「は、はい!!」


 ノエルと呼ばれた少女は急いで観戦席にも『拒絶者コバムモノ』での結界を張ったのだった。

 無差別に落ちる隕石がノエルの結界に当たるが衝撃もなく、通り抜けたのだった。

 この結界はコロシアムの周りに張った物と違って、拒絶されているゆえに、すり抜けるのだ。

 コロシアムの周りに張った物は拒絶によって弾く結界であり、外にダメージが行かないようになっている…………




「危ないな!? アイツは主であるはずの、ゼロがいる場所までも攻撃しちゃってんの!?」

「巻き込んでスマンな。アイツは戦いになると周りの被害は考えないからな……」


 良く言えば、敵に集中して戦いを楽しめているということだ。

 悪く言えば、ワンマンなタイプで周りの被害は気にしない。




(お前はな……、それだから、前のオンラインゲームではパーティを組めなかったんだぞ?)

『……別に、私達に着いていけない者が周りにいても……、邪魔なだけ……』

(確かに、俺しかお前に着いていけなかったしな)


 前のことを思い出して苦笑するゼロ。




(まぁいい、こっちは結界があるから気にしなくてもいい。全力で楽しんでこい!)

『……うんっ!』




 ゼロはレイを止めはしない。思うように戦えと応援する。

 その無差別に落ちている隕石だが、大部分は敵に向かっていて、ガンスロットが何もしなかったらこの技で終わってしまうだろう。

 だが…………




「凄まじい魔力だな! だが、私には届かない!!」


 ガンスロットは腰に架けていた剣を抜き、向かって来る隕石を一線した。

 隕石は半分に切り裂かれ、ガンスロットの左右に落ちていく。続いて、同じように隕石を切り裂いていく。




「はぁっ! ふっ!」


 レイが発現した”天涯隕石メテオ”は、土魔法が主体で凄まじい威力を持つのだが、簡単に切り裂かれていく。

 レイはもう隕石を落としても無駄だと思い、技を止めたのだった。




「もう終わりか?」

「……その剣はただの剣じゃないね……?」

「ほぅ、見抜いたか。そうだ、魔王さえも殺した剣でもあり、”冥王剣グンニグル”と呼ぶ魔剣だ」

「……魔剣……ねぇ」


 ガンスロットの持つ剣は、魔剣であり、特別な能力が付加されていて、隕石を斬るときも特別な能力があったから、簡単に斬れたのだ。

 レイは斬られた隕石の断面を見る。


 そこには、ボロボロになった断面があっただけで、特別に何かされたようには見えないが…………




「その断面、おかしい……。剣速、剣のブレ、剣の扱い方を見れば、貴方は剣に長けていることはわかる。なら、綺麗に斬れていないのはおかしいのよ……」


 レイが言った通りに、ガンスロットは長年、剣を使ってきているから、剣の腕は高いのに、断面が綺麗に斬れていないことに違和感を感じたのだ。さらにレイが生み出した隕石があっさり斬られるのも、ガンスロットが斬る以外に何かしていると感じたのだ。




「……魔剣の能力は、魔力を消す……?」

「まさか、これだけで言い当てるなんて、お前は何者なんだよ?」

「私はゼロの妹だよ……、それだけ」


 次の魔法を準備するレイ。

 何故、魔剣の能力を言い当てられたのかは、推測でしかなかったがガンスロット本人が正解だと言っていたので当たったのがわかったに過ぎない。

 ガンスロットの魔剣は魔力を消すことが出来る。隕石は土に魔力を混ぜて攻撃する技であり、斬った所をただの土に変えたから簡単に斬れたのだ。

 断面がボロボロなのは、ただの土に変えられたから、柔らかくなっていて零れているからだ。


 つまり、魔力を使った攻撃は剣に触れたら消えてしまうため、ガンスロットにはあまり魔法が効かないのだ。

 だが、レイには対処法を思い付いてある。




「また魔法か? 残念ながら、無駄になると思うがな」

「……なら、試してみる? ”雷衝雲砲ネオンブリーチ”!!」




 今度の魔法は本物の雷を使って攻撃する技だ。結界の中だから雲は見えないはずなのに、上には雷雲が集まっていた。




「……さっきの隕石は魔力から作っていたけど、本物の雷ならどう……?」




 その雲を作り出したのはレイであり、魔力で出来た雲ではない。

 雲はここにあった水分を集め、凍らせて、小さな小さな氷と氷の衝突で雷を生み出す。

 それらの動作をレイの魔力が手助けしただけで、その雷には魔力は含まれない。

 さらに、魔力は敵への電気の通り道を作るだけで、混ぜ合わせない。

 そうすると、純粋な雷がガンスロットに落ちていくのだ…………




 と、音を置き去りにして落ちていく雷、剣で切り裂こうとしても、触れたら高圧電力で黒焦げになるガンスロットの姿を見ることになるだろう……………………………が、そうならなかった。




「これだったら剣で触れないな。だったら…………、触れないで斬ればいいだけだ!! 王者能力キングダムスキル武蓮王マナエスト』発動!!」


 ガンスロットもゼロやレイと同様に王者能力を持っており、言葉通りに、触れずに雷を斬って霧散させていた。




「……やっぱり、持っていた。簡単に霧散させちゃうとはね……」

「あまり悔しそうには見えないが?」

「……ふふっ、当たり前じゃない。強い方が私は嬉しいのよ」


 材料としては、強い程に良い質なのだから、ガンスロットが王者能力を持つ程の強者であることに喜んでいた。






 レイはさらに別の技を使おうと魔導書をパラパラと開いていく…………







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