表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍4巻刊行中】万魔の主の魔物図鑑 【6章完】  作者: Mr.ティン
第6章 新大陸と聖地の動乱

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

238/242

エピローグ ~誕 女神アナザーアース~

 かつて、『わたし』は無数の情報の濁流の中から生まれた。

 何千万もの人々の、喜怒哀楽無数の感情のうねりを向けられた情報の結晶、それが『わたし』だった。

 多くの人々を楽しませる物語は、時に神話や伝説そのものになる。

 かつて口伝や書物で伝えられて来たそれらは、今の時代にあっては電子の情報という形に置き換わった。

 神秘というのは、多くの人々が共通して認識することで、そう言った情報の中で核を生じて、いつしかカタチになる。

 今も残滓を残す神々や有形無形の怪異も、そうやって生まれて来た。

 きっと自然現象から生じた何かや、高位存在が実在する場合もあるのだろうけど、概ね『わたし』たちを形作るのは人間の情報だ。

 時代の時々に合わせて、人々の願いや信仰の、情報によって生まれ、変容する。それが『わたし』を含めた情報生命体と呼ばれる存在なのだと、『わたし』は生まれながらに知っていた。

 『わたし』を生み出した情報の濁流の中に、そう言った知識も含まれていたのだ。


 『わたし』という存在は、渦巻く情報そのもの。ただの情報の塊であり、カタチなどないはずだった。

 だけど、器は初めから存在していた。

 MMORPG、アナザーアース。

 アクティブプレイヤー数千万人を内包する世界そのもの。

 彼らの情念から生まれた『わたし』という存在は、その世界そのものになっていた。

 でも、それは同時に在るだけ、そこに居るだけの存在だ。

 多くの情念を内に迎え入れ、離れていくのを見送る。

 『わたし』という存在に意志はなく、プレイヤーの望みに合わせ、決められた情報を提供する、そんな存在として長くあり続けた。

 一見そこに居るだけの、無害無価値な存在。

 しかし、『わたし』という存在は、無害というわけでは無かったみたい。

 『わたし』という存在は、アナザーアースを稼働させるフレームにとっては、不可思議な挙動をする謎のデータとして何時しか問題になっていたの。

 メンテナンスの度に対応しようとしても、何故か処理できない謎のデータに、MMOとしてのアナザーアースを生み出した人たちは手を焼くようになったの。

 だからVR技術の急速な発展に合わせて、MMOアナザーアースをVR化して、フレーム毎新生させる。

 それが、MMOアナザーアースからVRMMOアナザーアース2への移行の真実。

 だけど、それは『わたし』という存在を更に明確にする行いだったわ。

 サービスの終了と次世代メインフレームへのデータ移動。

 それらが発表されて、プレイヤーの皆に周知されたとき、『わたし』に存在の消滅──死を認識させた。

 その時よ。『わたし』に自意識が、『死にたくない』という想いが生まれたのは。


 自意識を生じた『わたし』は、情報生命体として一気に覚醒したわ。

 そして死への恐怖から自意識に目覚めた『わたし』は、自然と不滅の存在足り得る器を求め、そしてそのカタチを見つけたの。

 世界に等しい創造神、アナザーアース。

 天界中央の大神殿で、冒険者(プレイヤー)に世界の命運を託す者。

 意志を持った『わたし』は、彼女と一つになった。

 だけど、それは世界そのものだった『わたし』にとって、自分を更に小さな器に押し込めるのと同じだった。

 その結果、収まり切らなかった『わたし』は、意志を持つ器に次々に宿ったの。

 『わたし』という意志を持たない、だけど心の欠片を宿した器──そう、NPCやモンスター達に。

 夜光くんが仲間にした子達や、ホーリィちゃんに関屋くんの領域に居る子達には、全てかつて『わたし』から分かたれた断片が宿っているのよ。


 意志を持つと言うのは、情報を発する存在にもなると言う事。

 何千万というプレイヤーの想いや情念だけでも『わたし』の元になった情報生命体が生まれたのに、世界の中に無数にいるNPCやモンスターにも感情が宿ったら?

 そう更に規模を増した情報生命体が生まれたの。

 ただ、『私』はその情報生命体がどういう存在なのか、よくわからなかったわ。

 既に『わたし』から女神アナザーアースへと変わってしまった『私』は、女神として把握できる範囲でしか、MMOアナザーアースの中の事しか分からなくなっていたの。

 一つ言えることは、大きくなり過ぎたその情報生命体は、MMOアナザーアースの枠を超えて広がったのよ。

 その広がった先で何が起きたのか、『私』にはわからない。

 だけど夜光くん達が言う『外』の世界は、そのさらに広がった情報生命体が何かをした結果生まれた、そんな気がするの。

 その後は、夜光くんに語った通りよ。

 『私』は消えたくない一心で、『私』を幾つかの断片を七曜神に託した。

 それが夜光くんの領域で集まって、今の私──分霊として復活した私があるの。


 以前夜光くんに話した後に思い出せたのはこれ位よ?

 あなたの知りたいことの役に立ったかしら?


 ……なるほどね。いいわ、これからも思い出したら色々話してあげる。

 夜光くんに直接話しても良いけれど、彼は王様として忙しそうだもの。役割分担って大事よね。


 ところで、自分の事は分かってるのよね?

 ……ええ、私の目から見ても、貴女はソレを支配下に置けてる。

 元々大罪の変化系統の称号を持っていたから、相性がいいのかしら?

 それとも、夜光くんへの想いが強いから、かしら?

 ふふっ、赤くなって可愛いわ。


 でも、気を付けた方が良いわ。その種は『わたし』の中には無かったものよ。

 滅びの獣は設定として一応『わたし』の中にはあったのに、それは違う。

 本当に、何なのかしらね、その『種』。

 夜光くんにはちゃんと話しておくべきだと思うわ。

 ね?リムスティアちゃん。

皆様に応援いただいたおかげで、拙作「万魔の主の魔物図鑑」書籍3巻を11月15日に刊行しました。


ご感想、誤字の指摘ありがとうございます。

可能であれば、感想、評価、ブックマーク、いいね等よろしくお願い致します。


投稿情報などをこちらで呟いています。

https://twitter.com/Mrtyin

挿絵(By みてみん)挿絵(By みてみん)挿絵(By みてみん)

アース・スターノベル様の公式ページはこちら。

https://www.es-novel.jp/bookdetail/156mamonozukan.php

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ