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【書籍4巻刊行中】万魔の主の魔物図鑑 【6章完】  作者: Mr.ティン
第6章 新大陸と聖地の動乱

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エピローグ ~聖地の地揺れ 東方の酋士国~

エピローグは数話続きます。

あと久々に1月毎日連続投稿出来ました……

 その日、聖地が揺れた。

 真下から突き上げるような地揺れが起きたのだ。

 この1000年、つまり人の世に記されてきた歴史を紐解いても、聖地で地揺れなど起きたことが無い。

 それほどにこの地域の地盤は安定しており、だからこそ、地揺れへの備えなどされてはいなかった。

 聖地の主な建物は、付近で採れる純白の石材を用いたものが殆どだ。

 石を積み上げ、組み合わせ、時に掘り削って作られた家々は、地揺れに対して、酷く脆い。

 めったに地揺れが起こらないが為に、大きな揺れで容易に崩れるのだ。

 巨大な鎚で下から殴りつけられたかのような揺れと地割れ、各所の陥没などによる被害は、聖地自体が長らく戦禍に巻き込まれた事が無かったために、歴史上最悪と呼べる被害をもたらした。

 建物の倒壊などによって建材である石の下敷きになり、または足元にできた地割れに呑まれるなどして起きた被害は、地揺れの直後の時点で聖地の人口の1割に届いたとされる。

 更に生き埋めや、地下の空洞に落下して助けを待つ者達が、時間の経過と共に力尽きていき、この地揺れの最終的な被害は聖地の人口の実に3割を超えた。

 問題は、普段なら聖地の人々を護る筈の祝福者や聖別隊の一部が、時同じくして次々と謎の怪死を遂げた事だ。

 全身から白い粘液を溢れさせ、そのまま干からびるように死んだ者。異形化した器官が弾け飛び、その衝撃で血だるまになって死んだ者。

 中には、全身の内側から地虫めいた白い触手が突き破るように生えて即死した者さえいた。

 苦悶に暴れるような白い触手は、宿主を殺した後見境なく暴れ回り、傍に居た者達にも深刻な被害も出ている。

 聖地の信徒たちは、先のガイゼルリッツ皇国の侵攻も併せ、立て続けに起きた災厄に、神に祈る事すら忘れ嘆き悲しんでいると言う。

 聖地の基幹は信仰だ。聖地の信徒が神に祈る事さえ忘れると言うのは、本来天地が揺らいだとしてもあり得ない事のはずだった。

 しかし、そのあり得ない事態が目の前で起きている。

 最早、皇国との戦どころではない。

 これらの事例も含め、教会はこの地揺れの損害を抑えんと奔走することとなった。

 今代の教導帝アヴァロフ3世は非常事態を発令、世界各地に派遣している教導者達を、聖地に呼び戻し復興の助けとするように命じ、教導母もまた次代の教導母候補である高位の女性信徒『聖姉妹』を、人々の治癒に従事するよう動き始める。

 教会にとって救いであったのは、教会の抱える神秘の全てが失われたわけではないと言う事だ。

 教会が純白の神秘と呼んだ系統は失われたが、それ以外の神秘は残っている。

 それどころか、災厄の最中にあって、新たな神秘も生み出されたのだ。

 それを為したのは、誰あろう教導帝その人だ。

 特に信仰篤い者達を呼び出すと、教導帝は手づから彼らを祝福し、それ以来その信仰篤き者達は、これまでにない超常の力を発揮し、被災した聖地で苦しむ信徒たちを次々に救ったのだと言う。

 結果、教導帝その人の名声はこれまで以上に高まる結果となった。

 だがしかし、聖地の一角にて、それら教会の働きを嘲笑うかのように存在を誇示するモノがあった。

 先の地揺れで生じた、まるで奈落へと続くような巨大な穴。

 ただでさえ地揺れにより脆くなったその穴の周辺は、信徒や神秘者も近寄らない。

 何時しか、その穴に近づいた者は、己の意思とは裏腹にその闇へと身を投げる、と信徒の間で囁かれるようになった大穴は、教会そのものを否定するかのようであった。

 

 □


 一方先日まで聖地を攻めていたガイゼルリッツ皇国もまた、この異変の影響を多く受けていた。

 謎の疫病の蔓延と、ここまで連勝を重ねていた皇国初の撤退は、以前から皇国と交戦状態にあった東方諸国にとって好機と捉えられたのだろう。

 皇国東方バリファス地方の東方の砦が、東方諸国にあって強硬派のア・リタイ傑氏族に攻め落とされたのだ。

 かの砦は、先の東方諸国との勝ち戦で皇国が奪ったものであったが、奪った際に構造に大きな被害が出た為に、修復工事がおし進められていた。

 そしてあと僅かで完成となるある日、ア・リタイ傑氏族が強襲し、直し切れていなかった防壁の一角の崩壊部より侵入されたのだ。

 修復を行っていた職人や防衛部隊、そして皇王の命を受けて防衛に当たっていた異邦人──つまり、プレイヤー──も含め全滅すると言う深刻な被害と共に、ア・リタイ傑氏族と彼らを中心としたコルム・カラン酋士国は皇国に宣戦を布告したのだ。

 報せを受けたヒュペリオン皇王は、混乱収まりきらない聖地への報復侵攻を断念し、東方諸国への対応に追われることとなった。

 ただ、先の聖地侵攻から始まった疫病と、その感染者と思われる主達に起きた異変の影響は大きい。

 超常の力を得ながらも、聖地の地揺れと時同じくして怪死するという謎の症状は、問題の疫病が広く一般兵に広がっていたために、皇国側の被害の度合いが多かったのだ。

 特に前線に立っていたフェルン領軍の影響は大きく、その兵の殆どは感染を経験していた。

 結果、フェルン領軍は兵や騎士に多数の欠員が出る事となり、その回復にフェルン候シュラート及びその配下……新将軍セルグスを含めた者たちも、戦力の回復に苦悩することとなるのだった。

皆様に応援いただいたおかげで、拙作「万魔の主の魔物図鑑」書籍3巻を11月15日に刊行しました。


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