表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍4巻刊行中】万魔の主の魔物図鑑 【6章完】  作者: Mr.ティン
第6章 新大陸と聖地の動乱

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

190/242

プロローグ 堕ちし世界樹 その10

 灼熱の炎が、外界表示モニターを紅蓮に染めた。

 ギガイアスに群がっていた邪樹翁イビルエントは、その炎に触れるだけで一瞬で燃え尽き、消し炭すら残らない完全な灰となって消えていく。


「って、あれだけ<界滅の炎(レイヴァーティン)>は使わないようにと言ったのに!?」


 その炎の正体を悟った僕は、流石に血の気が引いていた。

 スルトの権能は、この狂った世界樹と、邪樹翁イビルエントの群れに特攻だけど、同時に世界を滅ぼす程に余波が大きいからだ。

 もしここで<界滅の炎(レイヴァーティン)>が放たれれば、多分被害は精霊界すべてに波及する。

 多分他のプレイヤーが配置した世界樹にも飛び火しかねないからだ。

(いや、それにしては火勢は大人しい……?)

 だけど、一応スルトも加減する気は在ったみたいだ。

 炎の流れは軍団同士でぶつかり合っていた戦場から来ていて、燃やすのも邪樹翁イビルエントばかり。

 世界樹そのものは、変容しつつも巻き起こした風や濃密な霧などで炎を辛うじて押さえていた。

 つまり、世界樹本体へ<界滅の炎(レイヴァーティン)>は突き刺さっていないのだ。

 もしスルトが本気なら、世界樹は既に燃え尽き、精霊界はそこから張り巡らされた根によって地の底からあちこちで炎を上げ、西方大陸の精霊界側は壊滅的な被害を受けていただろう。

 多分、槍じみた燃えさしを投げつけずに、炎の一部だけ飛ばしたから、そこまでの被害は出ていないみたいだ。

 でも、それは狂った世界樹側も、全滅には至らないと言う事。


「とにかく先に地脈からの力の流れを封じて正解だったな……」


 密集していたためにスルトの炎に次々と延焼していた邪樹翁イビルエントだけど、先に此方を敵として認識していたせいか、対応も早かった。

 燃え尽きようとしている群れから他の群れは距離を取って、更に狂った世界樹そのものから強風や豪雨が吹き付け始めたのだ。

 世界樹とは、その名の通り世界を支える存在であり、自然の運行を担う精霊と親和性が高い。

 だから、自然現象を当たり前のように操ってくる。

 火勢を押し返す暴風や、空から降る波のような豪雨は、自然現象そのものであるからこそ、スルトの炎にも有効だった。

 そのせいで、炎自体は燃え続けているけれど、その炎は世界樹には至っていない。

 あくまで、相手の群れの本体は世界樹で、邪樹翁イビルエントは替えの効く子機のようなもの。

 もともと吸い上げた地脈のエネルギーを元に無尽蔵に生み出せる存在だったから、切り捨てるのも躊躇いが無いみたいだ。

 もっとも、いまは地脈からの流れを封じたから、再生も新しく生み出されもされていない。

 もし封じて居なかったら、それこそ精霊界の破滅覚悟で世界樹を焼き尽くす覚悟が必要だっただろう。


 ともあれさっきの炎で、ギガイアスにまとわりついていた邪樹翁イビルエントは燃え尽きている。

 なら、そろそろまたこっちのターンだろう。


「ギガイアスの被害は?」

「軽微ね。受けていた砲撃も、毒の胞子も装甲を抜くことは無かったわ。むしろ、スルトの炎で一番損害を受けているわね……」

「それも、自動修復で癒せる範疇ですわ。強化は成功ですわね」

「せやけど、周りに灰が積もって動きがとれへんようになって。主様、どないします?」


 状況は、悪くない。厚いギガイアスの装甲は、大きな被害を受けることなく健在だ。

 寄って集って変異した邪樹翁イビルエントが灰になって、邪魔になっているのが懸念程度。

 なら、こうしよう。


「ギガイアス、<破軍円衝サークルインパクト>!」


 僕の声に応え、ギガイアスが両腕を胸の前で合わせる。

 次の瞬間放たれたのは、両腕に仕込まれたた衝撃発生装置<破軍衝(サドン・プレッシャー)>を打ち合わせる、全周囲に放たれる衝撃波。

 元々邪樹翁イビルエントの包囲からはこれで脱出しようと思っていた手段だ。

 巻き起こる衝撃波は、ギガイアスの周囲に会った灰を吹き飛ばし、更に遠巻きになった邪樹翁イビルエントの群れにさえ届き、吹き飛ばす。

 さあ、反撃開始だ。


「とはいえ、デカいなあ」


 目の前に佇む世界樹は、一度断たれたとはいえ、威容は健在だ。

 核のあった部分で斜めに断ち斬られた斬り痕を晒しているけれど、そこから新たな枝や、ツタが無数の腕のようにドンドン生えている。

 その全てが、此方に敵意を向けていた。

 ただ、邪樹翁イビルエントの群れ自体はもうこちらに近づこうとして来ない。

 スルトの炎や、<破軍円衝サークルインパクト>のような、対集団用武装を警戒しているのだろうか?

 代わりに砲弾じみた種子や、世界樹の操る精霊の攻撃がひっきりなしに飛んできている。

 もっとも、それは好都合だ。

 周囲にスペースがある方が、大剣は扱いやすい。


「ゼル、もう動ける? 続き、行ける?」

「無論で御座る!」


 天を割る斬撃を放った後、荒い息を整えるのに注力していたゼルが、僕の声に応えてくれた。

 ギガイアスで規模を拡大した上に、無数のバフの結果とは言え天を割る程の一撃を放ったゼル、そしてギガイアスの消耗は、流石に大きかったのだ。

 ギガイアスは魔法装置の燃料である精霊石を一気に食いつぶしたし、ゼルは技の反動で一定時間行動不能になっていた。

 だからさっきまでギガイアスは、身を固めて耐えていたのだ。

 しかし精霊石の補給は終わっているし、ゼルも万全になった。


「よし、みんな、行くよ!」

「「「「はい(で御座る)」」」」


 僕の声に応え、ギガイアスが再び巨大な剣を構えた。

 さあ、最終ラウンドだ。

皆様に応援いただいたおかげで、拙作「万魔の主の魔物図鑑」書籍2巻は今月14日に刊行しました。


ご感想、誤字の指摘ありがとうございます。

可能であれば、感想、評価、ブックマーク、いいね等よろしくお願い致します。


投稿情報などをこちらで呟いています。

https://twitter.com/Mrtyin

書籍2巻7月14日付で刊行しています。

挿絵(By みてみん)

アース・スターノベル様の公式ページはこちら。

https://www.es-novel.jp/bookdetail/156mamonozukan.php

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >代わりに砲弾じみた種子や、世界樹の操る精霊 この後の文章が抜けていませんか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ