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91 三人の会話

 試験で手を挙げたのはポルクシアだった。

 やはりスピカ達がシリウス男爵の爺さんが言っていた弟子だったのだ。


 周りではスピカやポルクシアの服装を見てクスクス笑っている貴族のガキ共がいた。

 所詮見かけだけで相手を判断する程度の小物だ。


「……冗談を試験中に言うのは良くないぞ」

「いいえ、僕もスピカももう問題を全部解きました」


 試験官がスピカ達の答案用紙を確認していた。


「まさか、本当に全部の問題が解き終わっている!!」


 辺りがざわつき出した。

 そんな中で陰口が聞こえてきた。


「へっビンボー人がアピールしてもショセンおれたちには一生かてねーのによ」

「言ってやるなよ、それしかできないんだからよ。金も地位も生まれつきのキゾクサマにかてないから頭をよくするしかないんだよ。それでも一生オレたちのドレイなんだけどな」

「そこ! 私語を慎め!」


 親の金と地位しか威張れないような頭の悪そうな貴族のガキが陰口を注意されていた。


「おゥ。オレも終わったんだけどなァ……外で待ってればいいのかァ?」

「ヘミニス伯爵の息子か……いいだろう、終わったなら外に出ていいぞ」


 オレが教室の外に出たことで、スピカとポルクシアは安心して外に出ることが出来たようだ。

 そしてオレ達は廊下から中庭に移動した。


「ありがとう、貴族様」

「そんな言い方しなくていいぜェ。テメェはオレの妹の命の恩人だからなァ」

「カストリア、妹って……アルフェナさんのことか」


 ポルクシアがオレに妹のことを聞いてきた。


「あァ。そうだけどよォ。なんでテメェがアルヘナのことを知ってるんだァ?」


 オレはポルクシアを煽る形で妹のことを聞いた。

 もし、ヤツもオレと同じように前の人生のことを覚えているなら……知っていてもおかしくはない。


「以前、うちのパン屋に来てくれた貴族のお客様だからだよ」


 この回答では、どちらなのかわからない。

 だが、ポルクシアとスピカの仲が良さそうなのは一目でわかった。


「ニャーン」

「お、テメェは」

「あ、キミは」


 どうやらポルクシアもこの白い猫のことを知っているようだ。

 オレは中庭に来た猫をなでてやった。


「ポルクシア、テメェシリウス爺さんの弟子なんだってな」

「そうだ、僕は特待生枠の試験のためにスピカとここに来た」

「生憎だったなァ、オレはベレニケに勉強を教えてもらったんでなァ。トップの合格は譲らねェぜ!」

「フッ。そういう戦いなら喜んで受けてやる!」


 スピカがきょとんとした顔をしていた。


「あれ? ポル……この貴族様とお知り合いなの?」

「うん、ちょっとした深い因縁さ。でも……今はそんなに大したことないよ」


 やはりポルクシアはポルクスだったの時の記憶を持っているようだ。


「そうだなァ。これでオレはテメェにますます負けるわけにはいかなくなったぜェ!」

「望むところだ!!」


 そしてようやく試験の終わって休憩時間になった貴族のガキ共がオレの周りに集まってきた。


「カストル様、是非ともお父上によろしくとおれの父様が言ってました」

「カストル様、アタクシと今度乗馬していただけませんか?」


 オレがヘミニス伯爵の息子だとわかっている貴族のガキ連中がどうにか俺に取り入っていい立場になりたいようだ。

 こういう態度を見ているとうんざりする。


「テメェら。そんなくだらない事考えているヒマが有ったら国語の単語の一つでも覚えてろォ!」


 怒鳴ったオレの迫力に、ヘタレの貴族のガキ共は怯えてしまった。

 所詮はもやしっ子、撃たれ弱さは親譲りってわけだ。


 そして時間が過ぎ、次の試験の時間が始まった。

 教室に戻ったオレやスピカ達は、次の答案用紙を見て、国語の問題に取り組んだ。


「それでは、次は国語の試験を開始する! 各自、私物をしまうように」


 そして試験時間の砂時計がひっくり返された。

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