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75 裏街の暗殺者

 首筋のナイフは少し力を入れただけで私の首を斬れる。

 ここで下手に動いたら、前に出ても後ろに下がっても下を向こうとしても全部即死だ。


 ここは動かないのが正解。


「ほう、この状況で動かないとは……いや、動けないのかな?」

「アナタが、やはりコルボさんなんですね」

「ほう、いい度胸だな。殺すのは後にしてやろう」


 コルボさんはそう言うとナイフをしまった。


「ワイの名前を知っているとは、どこで聞いた」

「……」

「いいだろう、それでいい」


 コルボは相当性格が慎重なのだろう。

 私がどこで知っているとか言ったら、返答次第ではすぐに殺されていたかもしれない。


「まあ何か飲むか、安心しろ。ワイも同じ物を飲むからな」


 コルボはコーヒーらしき何かを戸棚から出し、私とコルボに同じように淹れて差し出してくれた。


「見てわかるだろうが毒なんて入れていない、安心して飲むがいい」

「え、は……はい。いただきます」


 私は目の前のコーヒーに手を付けなかった。


「おっと、悪かったな。子供にはお菓子があった方が良かったかな」


 コルボが戸棚からお菓子を持ってきた。


「さあ、どうぞ」


 私は皿を見た。そしてお菓子も見た。

 その上でお菓子にもコーヒーにも手を付けなかった。


 コルボはそんなワタシを尻目に一人でコーヒーを飲みだした。

 私は辺りを見渡すふりをしながら、コルボの行動をじっと見ていた。


 コーヒーを飲み終わったコルボが、こちらを見てニヤリと笑った。


「冷めてしまうぞ、飲まないのか?」

「え……ええ」


 コルボは立ち上がり、コーヒーとお菓子を手に持つと……魚のいる水槽に持って行った。

 そしてコーヒーと砕いたお菓子を水槽の中に入れた。


 一瞬で魚が腹を見せて浮き上がり、水草が枯れてしまった。


「合格だ。よく見抜いたな」


 コルボが不敵そうな笑いを見せた。


「何故同じ物を飲んだワイは無事だったと思う?」

「わ、わかりませんが……なんかそういう訓練でも?」

「正解だ。相手と同じ物を飲みながら相手に警戒をさせない。それで毒殺するには自身を毒に慣らさなくてはいけない。ワイはそういう毒に耐性を持っている」


 やはりこのコルボは凄腕の暗殺者だった。

 彼は私の知る限り彼は、前の人生でもトレミー皇国に仇為す者を葬ってきた凄腕の暗殺者だ。

 しかし、私が警備隊長になる頃には、既に腐敗しきった国に嫌気がさしたらしく、ずっと前に姿を消していた。


「それで……おまえは何故ここに来た?」

「強く……なりたいんです」

「ほう、復讐したい相手でもいるのか?」

「いいえ、そうではありません」


 コルボが何だか拍子抜けしたような顔になっていた。


「こんな危険なところに女の子が一人で来た。それが復讐以外に何の目的がある? 下手すれば死にに来たようなものだ」

「守りたいんです!」


 コルボが私に興味を持ったようだ。


「守る? 何を守るんだ?? お前の持っているちっぽけな小銭か? それとも小さなプライドか?? ハハハ」


 完全に馬鹿にしたような態度でコルボが笑っている。

 普通考える守ることとは所詮、自己保身というイメージなのだろう。


「違います! 僕の大事な人達をですっ! 僕はこの街で育ちました。そんな僕を街の人は愛してくれました。僕が男に襲われそうになったのを助けてくれたのも国の警備隊ではなく、ここの人達だったんです」

「ふむ、こんなゴミ溜めみたいな国に何の希望を求める」


 コルボが暗殺者をやめたのは国に求めるものが無くなったためなのか。


「僕が変えて見せる! その為に強さが欲しいんです。この国の腐敗した貴族や、悪党から大事な人達を守りたいんです!!」

「国ではなく……人のため、か」


 コルボが戸棚に向かった。

 そして再びコーヒーを淹れてくれた。


「安心しろ、毒はもう入れていない。面白い、ワイはお前に興味が湧いた。もう少し話を聞かせてもらおうか」

「は、はい。わかりました」


 そして私は再び椅子に座ったコルボさんに話を続けた。

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